第13話 それぞれの考え(3)
(なんだあれ?ゴブリンの上位種か?)
「あれはオーガです。ゴブリンの上位種ではありません。」
ヘルプからの回答が返ってくる。
「あー、オーガか。なるほどなー。」
「なるほどじゃないよ!あの子を助けないと!」
「なんでだ?」
「へ?」
「?だから、なんで助けなきゃいけないんだ?」
「なんでって…かわいそうでしょ!?」
「こんなところに来てるんだから、自業自得だろ?」
「自業自得って…確かにそうだけど!助けようと思わないの!?」
「助けるって…もう無理だろ。」
そう言って俺は指をさす。
その先ではさっきまで戦っていた子供が既に事切れていた。
「え…?あ…」
フェルもそれを確認したのかその場で崩れ落ちる。
「大丈夫か?」
そう言って手を差し伸べる。
たが、その手はフェルによって弾かれる。
「どうして?どうして助けなかったの?急げば間に合ったかもしれないのに!」
顔を真っ赤にして目の端に涙を溜めたフェルが怒鳴る。
その声にオーガが気がついてしまった。
「おい、フェル!オーガが来た!逃げるぞ!」
そう言ってもフェルは動かない。
「どうして?どうして助けなかったの!?」
「どうしてって、助ける理由も無いし、オーガが倒せるかもわからないしな…」
「助ける理由なんて『子供』だからで充分でしょ!?」
(…フェルは何を言ってるんだ?)
こんなことをしてるうちにオーガが来てしまった。
(オーガか…いけるか?一応魔力半分使うか…)
《創造》
ゴブリンやスライムを倒していくうちに針の形から槍のような形に変えてある。その方が他にを魔物がいた時にそのままその槍を使えるからだ。
『グギャャャヤヤヤーーー!!』
(なんだ、案外簡単だったな。もう少し強いと思ってたんだが…重量はもう少し減らしても大丈夫だな…)
そんな事を考えているとフェルは怒っているのか、俺に詰め寄ってきた。
「どうして!?倒せるなら助けられたじゃない!?」
「それは結果論だろ?そもそも助ける理由が無い。」
「だから、それは子供だから…」
「それなら俺達だって子供だろ?子供が子供を助けるのか?」
「そうだとしても!あの子に比べたら私たちの方が年上でしょ!?少なくともあの子よりは強かった!」
「だから助けるのか?俺達が殺される可能性だってあったのに。」
俺達が加勢して3対1になってもあのオーガに全員殺されてた可能性もあったのだ。
「それはそうかもだけど…」
「少なくとも俺は赤の他人のために死ぬ気はない。」
「そんな言い方…かわいそうでしょ!?」
「『かわいそう』ね。それでも自業自得だ。」
フェルが落ち着く様子はない。
「なんでタケルはそんなに落ち着いてるの!?目の前で人が死んだんだよ!?ひどいよ…」
フェルは涙を流しながら言う
「赤の他人だしな…」
「赤の他人だからなんとも思わないの!?」
「なんとも思わないわけじゃないが…」
そこで俺はフェルの目をみて、問う。
「フェルの世界に戦争はなかったのか?何人も死ぬだろ?」
「あったよ。何人も死んじゃったし…」
フェルはそれが何か関係あるのかという眼差しを向けてくる。
「戦争じゃなくてもフェルが知らないだけでどこかでは誰かが死んでたんじゃないのか?」
「っ!?」
「その間、ずっとフェルは悲しみ続けてたのか?そんなんじゃないだろ。」
「…」
「そして、フェルが悲しまなかったのは赤の他人だからだろ。フェルの知り合いとかだったら悲しんだんじゃないか?」
「…」
「それがたまたま今回、目の前で起きただけだ。」
「…っ!?」
フェルは急に立ち上がると、街に向かって歩き出した。
俯いていて、表情はわからない。
俺はフェルの後についていった。
そして、今日の討伐は終了した。
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