第12話 それぞれの考え(2)
門に着き、門番であろう人に話しかける。
どうも昨日と同じ人のようだ。
「外に出るにはどうしたらいい?」
「なんだ、そんなこともーーって、あんた達は確か昨日来たんだったな。」
「そうだが…そんなこと、よく覚えてたな。昨日街にきたやつなら数多くしただろうに。」
言いながら、つい疑いの眼差しを向けてしまう。
フェルも同様だ。
「エルフと黒い髪と目を持つ人間のペアなんて珍しいからな。」
「そうなのか?」
「そりゃそうだろう。黒い髪と目の人間が珍しいうえ、エルフに関して言えば人間といるなんてこと自体が稀だ。エルフってのは排他的だからな。」
「なるほどな。だから覚えてたのか。」
「そう言うことだ。」
門番が笑いながら言う。
(やっぱり黒い髪と目、エルフの習性はテンプレ通りか…ここまで一致してると不気味だな。)
「で、結局街の外に出るにはどうしたらいいんだ?」
「ああ、そうだったな。外に出るときは俺たち門番に話しかけてくれればいい。入る時は昨日と同じだ。」
「なるほどな、わかった。」
「魔物を倒しにいくんだろう?気をつけろよ。」
「ああ。」
そう言い残し、俺とフェルは森に向かう。
「おっ、さっそく出てきたな。」
今回は昨日のスライムではなく、人型の魔物のようだ。
人型とはいっても、肌は緑であり、牙がある。
(あれは多分…ゴブリンか?その割には1匹しかいないが…)
「その通りです。」
(っ!…ヘルプか…)
タケルが少し驚いていたが、ヘルプの説明は続く。
「ゴブリンにはいくつかの上位種がいますが、あれは最も下位の普通のゴブリンです。通常は3〜5匹で行動しますが、あれははぐれのようです。」
(なるほどな。)
「なぁ、フェル。あいつは俺が倒していいか?」
「いいけど、一緒に倒すじゃ駄目なの?」
「昨日使った俺のスキルの練習をしたいんだ。」
そう言うとフェルは気まずそうな顔をする。
「あー…わかった。じゃあわたしはここで待機してるね。」
タケルはゴブリンに歩いて近づく。
ゴブリンには気づかれていないようだ。
(このくらい近づけは大丈夫だろう。あとは、どのくらい創るかだな。昨日のやつを一本にすればいいか?)
《創造》
昨日と同様のものをユニークスキルで創り出す。
それはゴブリンを脳天から地面に向かって貫いた。
魔石ごと。
「…」
「…」
「が、頑張ってね。」
フェルにも慰められてしまった。
その後もゴブリンやスライムを倒していく。
そのうちにレベルは5に上がっていた。
「制限1 《既存スキル創造》が解除されました」
「は?」
「ん?タケル、どうしたの?」
「い、いや、なんでもない。」
「?そう。」
フェルは気にせずに歩いていってしまった。
(どう言うことだ?)
「レベルが5になったため制限1が解除されました。」
ヘルプに質問しつつフェルの向かった方向に歩いていく。
(制限?…そう言えば書いてあったな。制限5って書いてあったから後4つか。それぞれどんな制限なんだ?)
「制限1が既存スキル、制限2が既存魔法、制限3が新規スキル、制限4が新規魔法、制限5がユニークスキルとなっています。解除はそれぞれレベルが5、20、50、100、200となった時となっています。」
(やはりチートスキルか…それで、既存スキルが創り出せるようになったんだな。何個でも作れるのか?)
「一日に5つとなっています。また、一つ創ることに一割魔力を消費します。」
(なるほどな、まぁ、スキルは宿に戻ってからでいいか。)
そして、フェルに追いつく。
「タケル遅いよ!何してたの?」
「ごめんごめん。まぁ、ちょっとね。」
「ふーん、まぁ、いいけど。」
再び魔物を探し始める。
「だ、誰か!助けてー!!」
「っ!」
どこからか子供の叫び声が聞こえた。
それを聞くとフェルは即座に走り出した。
俺もフェルを追いかけるようにして走り出す。
しばらく走るとフェルが立ち止まった。
「はぁ、はぁ、ど、どうしたフェル?」
「あっ、あれ…」
そこには1人の子供と、数人の子供の死体、
そしてゴブリンを大きくしたような魔物がいた。