第113話 デート報告 ソリビア
遅くなり申し訳ありません。
転移部屋の扉が開き、頰が緩んでいるソリビアちゃんが入ってきた。
(やっぱり、少し違和感があるなぁ…)
前にソリビアさんと呼んだら、他の人と同じでちゃん付けでいいとは言われたけど、年上なんだよね。
(ところで、タケルはどこに行ったのかな?)
戻ってきたのはソリビアちゃんだけだ。
「ソリビアちゃん、タケルはどうしたの?」
「ん?ああ…」
更に頰が緩んだ。
(照れてる?)
扉が開き、タケルも戻ってきた。
(タケルの頰も少し赤いなぁ。)
やっぱりうまくいったみたい。
もちろん応援してたけど、あたしも失敗できなくなったなぁ。
元から失敗したくないけど。
夕食の間、タケルはソリビアちゃんの方を見ようとしなかった。
(あれ?失敗したのかな?)
それにしてはソリビアちゃんの表情は変だよね。
どういうことだろう?
お風呂の時に聞かなきゃ!
最近はいつもみんなでお風呂に入っている。
もちろんタケルは除いてだけど。
(あれ?でも、タケルも一緒でもいいのかな?)
みんながタケルに好意を持っているのは確実なんだから、お風呂も一緒でも?
(そ、それはちょっと、早いよね。)
心の準備が出来ていない。
(それよりも明日のデートだね!)
順番は私が最後だから、失敗はできない。
早速、ソリビアちゃんに質問する。
「ソリビアちゃん、今日は何処へ行ってきたの?」
「今日は私の家に行ってきた。」
「…家?」
「ああ。」
(何か忘れ物とか?)
「何をしに行ったの?」
「お父様とお母様への報告だ。」
「「「「「えっ!?」」」」」
ソリビアちゃん以外はみんなおどろきの声を上げた。
当然あたしも。
「えっ?ご挨拶ってことですか!?」
一番聞きたかった事を最初に尋ねたのはレイラちゃん。
「ああ。タケル殿はお母様と仲良くしていた。」
「そ、そうなのね。お父様はどうだったのかしら?」
続けてルティちゃんが質問する。
「お父様は多分お母様に説得されているはずだ。」
「…両親、公認。」
スメノスちゃんが呟いた通りだ。
いきなり両親に紹介するなんて、すごい勇気と行動力。
あたしも見習うべきかもしれない。
(でも、あたしの両親に紹介はできないし…)
どこにいるのかすらわからない。
「ソリビアのネックレスは私達とは違って、見てて面白いよ!」
ランちゃんの声でソリビアちゃんのネックレスに目を移すと、確かに少し違うみたい。
ソリビアちゃんのだけは濃淡があって、線のようになっている。
「…孔雀石。意味は、忠誠。」
「ほっ…なら、正しいな。」
(忠誠かぁ…)
元々騎士だったソリビアちゃんにはぴったりだね。
それにしても、あたしは何処へ行こうかな?
どうせならあたしのことをもっと知って貰える場所がいいよね。
(あたしのこと…妖精族のこと?なら、山に行けば知ってもらえるかなぁ?)
少し考えてみる。
(タケルとだと魔物を倒している想像しかできない…)
それもなしではないけど…
(あえて外に出ないで、家で一日中話すとか?)
ありかもしれない。
それならお互いのことをもっと知れるし、落ち着いて話し合えるはず。
(でも、それってデートなのかなぁ?)
そのままネックレスも買ってもらえないかもしれない。
「…リリファ?出ない?」
スメノスちゃんに声を掛けられて気がついた。
みんなもお風呂から上がろうとしている。
「あっ、出るよ。」
みんなと共に脱衣所へ移動した。
(うぅ…明日、どうしよう?)
部屋に戻ってさらに考える。
(ネックレスを買ってもらうなら、その屋台がある場所に行かなきゃ行けないし…)
なら、買い物に付き合ってもらうのもいいかもしれない。
(お互いのことは…そのうちわかるよね。)
デート中は楽しむことだけ考えればいいよ。
(何を買ってもらおうかなぁ…)
これって駄目な人みたいじゃない?
あたしからも買ってあげる?
(買ってあげるって言っても、タケルに預けてあるからね。)
みんなもあたしと同じでタケルに預けてある。
必要なものとかタケルが作っちゃうからお金も全然使わないし、大金になると持ち運べないし。
お金を預かってくれる場所もあるみたいだけど、タケルの方が信用できるからね。
(どうしよう?何か役立てるものを探さなくちゃ。)
次回はリリファとのデートになります。