間話 第2王女の願い
1話の後の話となります
(やった!成功だ!これでお父様も褒めてくれるはず。)
「ようこそおいでくださいました。私はーーー。」
(もしかしたら、この子達の誰かなら友達になってくれるかもしれない!)
「誠に勝手ながら、ーーー」
その日の夜
「ーーーそうか、2人逃げたのか。」
「はい。どう致しますか?」
「どうするだと?」
吐き捨てるように言った。
「どうもしないさ。たった2人で逃げたところで土地勘もない。そのうち死体でみつかるだろう。放っておけ。」
「はっ!そのように。」
騎士は立ち去っていった。
「…。いったか。いちいち面倒なやつだ。」
騎士が出ていった扉を蔑んだ目でみながら呟いた。
「あの出来損ないはどんな気持ちだろうな。自分のしたことが取り返しのつかないことだと知ってーー」
男は口角を吊り上げた。
「嘘…」
「事実だ。逃げた2人以外のあいつらはもう奴隷となっている。」
「そんな…」
女ーー第2王女ウィチア・ファイルムは涙を浮かべ崩れ落ちた。
「お前のせいであの若者たちは奴隷になった。これからはメルニア王国の『兵器』として使われるだろうな。」
「っ!そんな…私のせいで…?」
さらに目元に涙が溜まり、どんどん流れていく。
「ああ。あの『兵器達』が死んだとしても、この国の被害は実質ゼロだ。まぁ、力が減るのは損失にはなるだろうがな。」
「うぅ…いや…わたし…こんなことのために、あの子達を呼んだわけじゃない!」
「全員知ってるさ。お前には伝えられなかったからな。」
ここは柵に囲まれたーー簡単に言えば『牢屋』だ。
中に入った者の魔力を吸い続けるように作られている。
第2王女は国王の名によって牢屋に入れられていた。
「じゃあな。今日が外に出れる最後の日だったんだ。今日のことを忘れず、死ぬまでここで生きるんだな!」
そう言って騎士は去っていった。
あの騎士ーーいや、メルニア国王の全ての騎士は第2王女に敬意などはらわない。
なぜなら彼女は、召喚の代償で『死んだ』のだから。
第2王女はもう外に出れないと悟った。
もし出れたなら奴隷になった彼らを解放できたかもしれない。
その希望は届かない。
そんな簡単なことは第2王女もわかっていた。
第2王女は若者たちに強く申し訳なさを感じていた。
深く後悔を抱いていた。
たが、その時、第2王女が考えていたのはさっきの騎士の言葉だった。
『逃げた2人』
その言葉が思考の全てを埋め尽くしていた。
(呼んだのは私で、私が呼ばなければ、こんなことにならなかったのはわかっている。そして私は何もしてあげることはできない。それでもーー)
暗い牢屋のなかで第2王女は願う。
「せめて2人だけでも幸せにーー」