表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ただただ、幸せに…  作者: 緋月夜夏
ムニシヤ王国編
105/117

第104話 デート スメノス

デート回と間の話を交互に投稿して行きます。

しばし、玄関前で待つ。

「…たける。」

スメノスの声に振り向き、息を呑んだ。

普段のスメノスは、黒いローブというか、布のようなものを着ている。

ずっと着ているので、気に入っているか、それしか持っていないのかと思っていた。

今日ももしかしたら服を買うのかもしれないと考えていたんだが…

(普通の服も持ってたのか。)

普通の服いうには語弊があるかもしれないが。

スメノスが着ているのは、白のワンピース。

肩が殆ど出ているものだ。

偶にラノベのキャラクターに着ている者がいるが、現実では初めて見た。

とても似合っているように見えるのは、スメノスの身体が小学生ほどだからだろうか?

それとも別の理由なのか、俺には判断できない。

だが、1つ言えるのはその格好はスメノスの魅力を引き立てている。

普段は、黒のローブの隙間から覗く長い黒髪に白い肌、関わったことで知った性格、死神という特別な存在。

そんな、謎めいた雰囲気を醸し出しているスメノスがワンピースというある意味で普通の格好をしている。

今のスメノスの服を他の人が着ればコスプレと思うか、スメノスと背丈が同じくらいの子が着ても着せられている感じが漂うだろう。

だが、スメノスに限っていえば、この服を着るのは当然かのようにーー

「…たける?」

「あっ、悪い。」

俺が惚けていたためか、スメノスが俺の服の袖を引っ張っていた。

「その服、似合ってるな。」

「…ありがと。」

「服、持ってたのか?」

「…さっき、作ってきた。」

(《縫製》みたいなスキルを持っているのか?)

「わざわざ作ってきたのか?」

「…うん、デート用。」

「そ、そうか…」

女の子にデートと言われるのは慣れない。

「スメノスはどこか行きたいところはあるか?」

照れを誤魔化すように尋ねる。

「…特に。」

「そうか、ならとりあえず歩くか。街を歩き回れば何か見つかるだろ。」

俺は歩き出すが、スメノスは立ち止まったままだ。

「スメノス?」

不思議に思っているとスメノスは右手を指して出している。

「…手。」

(手?)

「…繋ぐ。」

(手を、繋ぐ?)

確かにデートでは手を繋ぐのは珍しいことではないな。

「繋ぐか。…っ!」

強がって手を繋ごうとしたが、スメノスの小さな手に触れた瞬間、顔が赤くなったのがわかった。

「…かわいい。」

「…行くぞ。」

照れを隠すようにスメノスの手を引いて歩き出す。


普段は《転移魔法》で移動しているためあまり感じないが、店などが集まっている付近までには少し距離がある。

あまり馴染みのない景色なため新鮮ではあるが、街の方角から視線を外せば見えるものと言ったら山や森くらいしかない。

「スメノス、この世界のデートって何するんだ?」

「…贈り物、と、依頼、とか。」

「贈り物ってアクセサリーか?」

「…そう。」

「依頼の方はなんだ?」

「…採集、依頼。日光浴。」

「ピクニックみたいなことか。なら、今日はその2つをするか。どっちを先にする?」

「…贈り物。」

「わかった。じゃあ、このまま歩くか。」

「…うん。」

スメノスは博識なようで、この世界の歴史などを知っているらしく、それを聞きながら歩いていた。


町に着き、屋台を回る。

アクセサリーや置物、日用品などを見て回る。

今はアクセサリーが売られている屋台を見ている。

「何か欲しいのあったか?」

「…これ。」

スメノスが手に持っているのは透明な石がついたネックレスだ。

「もしかして、ダイヤモンド?」

「…そう。」

この世界ではダイヤモンドは球状に加工するらしい。

思わず値段を見る。

「…本当にこれでいいのか?」

「…これが、いい。」

ネックレスの値段は銀貨1枚。

「遠慮してないか?」

「…なら、お揃い。」

スメノスがもう1つ同じネックレスを持ってきた。

「分かった。」

店員に渡し、代金を払う。

「…着けて。」

スメノスの両手で後ろ髪を持ち上げる。

ネックレスを着けると、スメノスも俺に着けようとしていたので少し屈むと首にネックレスが掛けられた。


冒険者ギルドへ行き、採集依頼を受けてくる。

受付のミアとセレナには不思議そうな顔を向けられた。

「行くか。」

「…転移する。」

スメノスが《転移魔法》を使い、山に転移した。

依頼の内容は木鱗果もくりんかという木の実だ。

珍しいものでもなく、依頼も10個で達成のためすぐに終わる。

「…行く。」

スメノスが再び《転移魔法》を使う


やってきた、山頂付近には草原が広がっていた。

スメノスがその場に座ったため、俺も横に腰掛ける。

俺は《空間魔法》から赤魔柑あかまかんを取り出し、スメノスに渡す。

「魔力をかなりあげたから甘いと思うぞ。」

「…大丈夫?」

「わからん。」

食べられないほど甘くなっていないことを願うのみだ。

スメノスと同時に口に入れる。

「…甘い。美味しい。」

「美味しいな。」

想像以上に上手くいったようだ。

赤魔柑を食べながらもスメノスと手は繋いだままだ。

慣れてきていたのだが、意識するとやはりまだ恥ずかしい。

「…そういえば。」

「ん?どうした?」

唐突にスメノスが口を開いた。

「…私、デート、したかった。」

「したかった?」

デートなら今、しているはずだが。

「…私も、したかった。合わせた、わけじゃ、ない。」

「あぁ。そういうことか。」

仕方なくじゃないと伝えているんだろう。

「ありがとな。」

「…あと、勘違い、正す。」

「勘違い?」

「…私、たけるが好き。」

「えっ…」

今、確実に好きって言われたよな?

「それって…?」

「…親愛の、好きじゃ、ない。」

先手を打たれてしまった。

「…あなたが、好き。初めてで、よく、わからない、けど。」

「…よくわからないなら、勘違いなんじゃ…?」

「…私は、これを、『恋』だと、信じたい。」

もしかしなくても、告白されてるんだよな?

「…それとも、私、みたいな、年寄りは、だめ?」

スメノスは神だから正確にはわからないが、人とは行きてる長さが違うだろう。

「そ、そうじゃなくて、スメノスが、俺を好きになる理由がないだろ?」

「…ある。というより、あった。」

「…それは何だ?」

口が乾き、胸が苦しくなる。

「…私は、死神。」

「?」

「…たけるは、異常、だった。」

「どういうことだ?」

「…普通の、人は、怖がる。近くに、いると、嫌がる。私を、知ると、恨む。」

「それは…」

死神という響きは否が応でも不幸を連想させる。

俺は加護を貰っていて、感謝の念があったから受け入れられたのだろう。

「…私は、前から、人を、守ってた。村に、攻めてきた、魔物を、倒した。いらないから、魔物は、全部あげた。」

そこでスメノスは一度言葉を区切った。

「…お前が、いたから、魔物が、来た、とか、お前の、せいで、たくさん、死んだ、って、言われた。」

「…」

「…私を、知ると、皆、目が、変わる。恐怖と、嫌悪の、目で、見られる。私が、死神、だから。」

確かに普通の人なら、スメノスの言った通りになっても仕方がないようにも思えた。

だが、今のスメノスの顔を見ればそんなことは思えたりしない。

いつもの無表情は消え去り、そこにはただ涙を流す少女がいるだけだった。

「…でも、たける、は…普通に、接して、くれた。」

涙で頰を濡らしながらも、口元は笑っている。

「…たけるに、会えた、のは、運命。私を、肯定、してくれる、人。私は、たけると、ずっと、一緒に、いたい。」

俺は今、どんな表情をしているだろうか。

目の前の儚げな少女(スメノス)に何をして上げるのが正しいのだろうか?

そう考えた時、俺はスメノスを引き寄せていた。

スメノスは一瞬驚いていたが、すぐに俺の背中に手を回す。

腕の中のスメノスはこちらを見上げてくる。

「っ!?」

唇に柔らかいものが触れた。

スメノスが顔を離す。

「…2回目、だけど、ファーストキス(これ)は、私が、もらう。」

そういってスメノスは笑った。

「その、スメノス、俺は…」

再びキスをされる。

「…返事は、いらない。たけるが、どう、思おうと、私は、ずっと、一緒に、いる。」

「…そうか。」

「…うん。」

俺とスメノスは日が暮れるまでそのまま抱き合っていた。

書いている途中に、どんどん告白回になっていきました。

こんな予定じゃなかったのですが…

補足ですが、この世界でダイヤモンドの価値が低い理由は、魔力を含まないこと、色がないこと(透明)、加工がしづらいからです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ