第103話 順番決め
朝食を食べながら、皆に欲しいものを聞くと、全員が俺の1日を欲しいという。
何故、全員が同じなのだろうか?
「駄目、ですか?」
レイラが尋ねてくる。
「いや、駄目ではない。でも、どういう事だ?」
「いえ、ですから…その…」
レイラの声がどんどん小さくなっていく。
顔が赤くなっているし、照れているようだ。
(恥ずかしがってる?え、デートってことか?)
俺の1日が欲しくて、恥ずかしがっているというとそれしか考えられない。
デートなんて今まで一度も経験がない。
(いや、でも、違うかもしれないし。)
レイラは相変わらず恥ずかしがっているし、俺から聞くべきだろう。
「その、レイラ?も、もしかして、で、デートってことか?」
「…っ!?そ、そうです!で、デートです!」
勢いよく顔を上げ、そう返してきた。
「ほ、他の皆もか?」
見てみると程度の差はあるにしろ恥ずかしがっているように見える。
ルティとソリビアは、真っ赤に顔を染めていて、リリファとランは、ほんの少し顔を赤くしている。
スメノスはいつも通りの顔色だが、口元が少し緩んでいる。
「デート…デートか…」
俺の顔も熱くなる。
何と言っても初めてのデートだ。
「そ、そういえば順番はどうするんだ?」
「決めてませんでした。」
「じゃあ、あたしから。」
そう言ったのはリリファだ。
「リリファが最初か。その、恥ずかしいが、俺は今までデートをしたことないから、後の方がーー」
楽しめるかもしれない、と続けようとしたところで空気が変わった気がした。
「リリファさん、私が最初でもいいですか。」
「私も最初がいいわ。」
「私も1番がいいよ。」
「…私も。」
「私もだ。」
何故か順番の取り合いを始めた。
「私はその中ではご主人様と1番長くいるわ。」
「それなら、私もです。」
レイラとルティが言い合っている。
「1番は私ですね。」
(ヘルプとはデートできないからな。)
何故かヘルプまで参戦しようとしていたので止めておく。
「ここは、年長者に譲るべきではないだろうか?」
「私の方が年上だよ?」
「…私の、方が、上。」
ランは地龍だし、スメノスは神だからな。
獣人族のソリビアでも勝てないだろ。
「タケルも年が近い方が楽しめるんじゃない?」
そう聞いてきたのはリリファだ。
「?順番はともかく、全員とその、デートするんだろ?全員と楽しむつもりだ。」
「そ、そう。」
リリファが何故か照れていた。
「な、なら、順番は公平に飛距離で決めよう。」
「そうね、それに賛成するわ。」
「私も賛成です。」
「賛成だよ!」
「…いい。」
「了解した。」
全員はそれで伝わったようだ。
「飛距離って、何のだ?」
全然わからない。
「えっと、得意な魔法を上に向かって使って、高さを競うものよ。」
ルティが説明してくれた。
「皆はそれでいいのか?レイラとソリビアは不利なんじゃないか?」
「確かにそうだが、この方法は昔から使われてきたものだ。」
「えっと、くじ引きでいいんじゃないか?」
「くじびき?」
ソリビアに不思議そうな顔をされる。
「わかるか?」
ソリビアが皆に問いかける。
首を縦に振ったのはスメノスだけだった。
「スメノス、説明してあげてくれるか?」
「…うん。」
スメノスが説明し終えると、全員がクジ引きで決めることに賛成した。
紙を用意するとスメノスが数字を書き込んでいく。
俺は書けないからな。
スメノスからくじを受け取り、数字が見えないように手に持つ。
「あたしは、これ!」
「私はこれにします。」
「私は、これね。」
「私は、これだよ。」
「…これ。」
「これだな。」
全員が紙を選んだところで引いてもらう。
「…私、1番。」
「私は、2番です。」
「3番だよ!」
「4番ね。」
「5番だな。」
「あたしが、最後…」
くじの結果、スメノスが1番、レイラが2番、ランが3番、ルティが4番、ソリビアが5番、リリファが6番に決まった。
「スメノス、今日にするか?」
「…うん。」
「じゃあ、いくか。」
「…玄関で、待ってて。」
そう言い残してスメノスは転移部屋へ行ってしまった。
「じゃあ、行ってくるな。」
「はい。」
「行ってらっしゃい。」
「主様も楽しんでね!」
「ああ。」
俺はスメノスの言葉の通り玄関で待つことにした。
次回からデート回の予定。
難しいので時間がかかるかもしれないです、