第101話 欲しいもの
夕食を食べ終えたが、女子達は、まだ話している。
先に風呂に入ることにする。
体を洗い、湯船に浸かる。
「はぁ…」
ステータスの値のせいで、肉体的に疲れる事はないが、精神的には疲れていたんだろう。
湯船に浸かると同時に溜め息が出てしまった。
(今日は迂闊だったな。)
王城に向かう時に、ヘルプと話していた《体質変化》を使うのを忘れていた。
もし、王様が王子の味方だったら危なかったかもしれない。
ステータス的に耐えられるかもしれないが、不確定要素が多すぎる。
威力だけに特化したユニークスキルがあるかもしれないし、ステータスを落とすものもあるかもしれない。
何より、俺は即死系の能力がある事を知っている。
(面倒なのに関わったかも…)
王族というだけで厄介事の匂いしかしない。
(とりあえずは、皆のレベル上げと、後は…《転写》もあったな。)
いつでも対抗できるようにしておかないと…
「あなた。」
(ん?どうかしたか?)
「昨日作ったものを伝えておりませんので。」
(そういえばそうだな。何を作ったんだ。)
「まずは、《体質変化》です。後でお伝えしますが少し内容が変わりました。後は《制限無効》のレベルが3になっていますので、種族スキルの《竜化》、《妖精魔法》、《飛行》、《聖者》です。」
(前の3つはともかく、最後の《聖者》は…天使族のやつか?)
「はい。光属性の魔法・耐性と回復魔法の効果増大、魔族・悪魔族への攻撃力の上昇です。」
(想像通りだな。)
他のものも言葉通りだろう。
「それと、加護が増えてます。」
(え?)
何でいきなり?
いや、スメノスの時もいきなりではあったけど。
(何、というか誰の加護だ?)
「魔神の加護ですね。」
(魔神!?)
死神に続いて魔神って…
(なぁ、俺ってもしかして呪われてるのか?)
「いえ、呪われていません。」
(はぁ…それで、魔神の加護の内容は?)
「魔力増加に魔力吸収、全空間における魔法使用可能、だそうです。」
(…タイミングが良すぎないか?《体質変化》作る意味あったか?)
《体質変化》を作ったのは封魔石などへの対策だ。
本来の目的は果たせてしまった。
まぁ、もちろん別の使い道はあるだろうが。
「はい。魔神からのメッセージです。『欲しがってたのこれだろ?渡すものに困ってたからちょうど良かったぜ。あ、いつかそっちに行くからよろしく頼む!』だそうです。」
(何その機能!?初めて聞いたんだけど!?)
しかもヘルプの声も変わっていた。
声真似か?
「声の波長を合わせただけです。」
(…普通は『だけ』じゃ済まないんだが…まぁ、今回の加護もデメリットがなくて良かったな。)
「加護もどんどん増えていきそうですね。」
(まぁ、デメリットがないなら嬉しいよな。)
「加護ですから、デメリットがあるものは珍しいのでは?」
(かもな…)
ヘルプと話していると欠伸が出てしまった。
「そろそろ上がるのはいかがでしょう?」
(そうするか。)
風呂で溺れかねない。
服を着て、ふと思う。
(そういえば全然服持ってないよな。)
《生活魔法》があれば服は1つでも清潔のまま保つことができる。
元の世界では毎日服を洗うのが普通だった。
これは、洗濯機のようなものを作った理由の1つでもある。
(レイラやルティにも服を全然買ってあげていない。というか、レイラ達が何かをねだることが全然ない。だから、今まで普通に過ごしてきたが、服や小物を欲しがっていたのかもしれない。)
そう考えると、悪いことをしてきた気分になる。
(そういえばリリファも依頼を手伝ってくれてるし、あっ、スメノスも同じ服のままだったな。あと、セルビアが仲間はずれなのはかわいそうか?じゃあ、ソリビアには仲間になったお祝いとか…)
2階へ降りるとまだテーブルで話しているようだ。
「あっ、ご主人様。」
レイラがこちらに気づき声をかけてくる。
「あぁ。次、入っていいぞ。」
「わかりました。」
「せっかくだし、全員で入ろう!」
リリファがそう提案した。
「そうね。私は構わないわ。」
「…別に、いい。」
「いいよ。」
「構わない。」
「じゃあ、俺は部屋に戻るから。」
そう言って、転移部屋へ戻る。
「あと、何かを欲しいものとか考えておいてくれるか?服とかなんでもいいからな。」
そう伝え、部屋に戻った。
(さて、今日は何を作る?)
「今日はあなたも考えるのですか?」
(ああ。たまにはな。)
「そうですか。」
ヘルプの声が柔らかくなった気がする。
(そういえば、《生活魔法》で服って作れるのか?)
一応、生活ではあるような気もするが。
「《生活魔法》では、ほつれたところを直したり、穴を塞ぐ程度です。一から作ることは出来ません。」
(そうか…じゃあ…)
「《創造》で作れますが?」
確かにそうなるが…
(なんというか、味気ない?)
「そうでしょうか?」
(もしもレイラ達にあげたりすることがあるなら、一から作りたい。)
「女子ですか。なら、《縫製》でどうでしょうか?糸からになりますが。」
(ああ。それでいい。あとは…せっかく服とか作るなら長く使って欲しいし、ある程度強度は欲しいよな。)
「《強度変化》でしょうか。」
(よし。そのくらいだな。)
「では、残りの3つは私が考えます。…《千里眼》、《透視》、《夜目》でよろしいですか?」
(いいけど…なんで目ばっかりなんだ?)
「体の上の方から強化していこうかと。頭から強化した方が良かったでしょうか?《石頭》や《頭髪強化》などがありますが。」
(いや、目からでいい。というか、なぜその2つを例に挙げた?)
「特に意味はありませんが。ちなみに既存スキルです。」
(珍しいスキルを持っているやつもいるんだな。)
「あなたほどではありませんけどね。」
(それもそうか。…今日の分も作り終わったし、そろそろ寝るか。)
「わかりました。おやすみなさい。」
(ああ。おやすみ。)
そうヘルプに告げ、瞼を閉じた。
新たな加護です。
あとは、ちょっとしたフラグのようなものを。