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高い声だからこそ、余計に響く。
自分から漏れた声なのに、信じられないくらい可愛らしいというか、情けない声が響いてしまって、急激に頬が赤く染まる。そんな様子を見て、玄武がクスクスと声を上げて笑った。
「いや、済まない……っく、可愛らしいい悲鳴を、あげさせてしまってっ。くくっ……」
必死で堪らえようとしてくれているのは分かるのだが、堪えきれていない。かなり漏れている。
笑われた事で、更に頬が赤くなる。真っ赤になってしまった顔を見られるのが恥ずかしくて、両手で覆う。が、両手を離した事により、中途半端になっていた扉が開いてしまった。
「……おや。これはまた随分と愛らしい、服装を……」
「ふあっ!?」
目の前の事しか考えれられていなかったのだ。色々な事がありすぎてそこまで頭がまわっていなかったのだ。
見られた!とわたわたしながら必死に隠れようとする鈴音を、玄武がとめた。……姫抱きにすることで。
「な……な……っ!」
「ここには私しか住んでいないからね、服はこれしかないんだよ。どうか少し我慢して欲しい」
鈴音が今言いたいことはそれではないのに、何故かずれている玄武の言葉。だが、たくましい腕に抱きかかえられた状態でいる鈴音にはそれを注意することも、訂正することもできない。
(この人っ、天然なの!? どうして今になってその説明をするの! 私が言いたいのはそうじゃなくてっ!!)
どんなに心の中で叫んだ所で、実際には声も出ずに口をパクパクさせるだけ。空気しか漏れていない。
「さて、移動しようか」
声もなく震える鈴音を気にすることなく抱きしめたままの玄武は、その状態のまま歩き出してしまった。信じられない思いで見上げると、悪戯っ子の様な表情で笑う顔が。
(この人、絶対にわかっててやってる……! いいから降ろしてーーっ!!)
鈴音の絶叫は虚しく、いやにご機嫌な玄武に抱かれたまま移動することになった。