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呆然と口に出す。
(確かに見せられた力は、普通じゃない)
それに加え、普通に暮らしていればまず見ることがない美貌。芸能人でもきっとこんなに綺麗な人はいない。文字通り人間離れした美しさだ。
失礼を承知で、まじまじと顔を見つめる。
日本人でもまずいないであろう、混じり気のない漆黒の髪。男性では珍しい、癖のないやや長めの髪を無造作に結んでいる姿でさえ美しい。
バランスよく配置された完璧なパーツは、すれ違う人全員がその美しさに振り返るだろう。そんな人なのだ、彼は。
(人、と表現するのはおかしいのかもしれないけれど)
信じられない情報を続けざまに与えられた所為なのか、鈴音は驚くほど落ち着いて考えることができていた。
「わかりました。貴方は神様、なんですね」
あっけらかんと言い切った鈴音に、玄武が思わずといった様子で固まる。固まるというよりは、素直に信じてしまった鈴音に驚いているようだった。
「君は……どうしてそんなに疑いもなく信じるのか?」
「見せられた力は本物ですから。悪い人にも見えませんし」
「……裸同然で君を抱きしめていたのに?」
はい、と躊躇うことなく頷く。
落ち着いて考えられる様になった今、ある事を思い出していたのだ。
「私、眠っている時とても寒かったんです。冷え切っている人間を温めるには、自分の体温を直接受け渡した方が早いと聞いたことがあります」
そうでしょう?、と小首を傾げた鈴音に、玄武は苦笑しながら頭をかいた。
「ああ、間違ってないよ。その通りだ」
「それなら、もう一度謝らせて下さい。助けていただいたのに、叩いてしまって」
知らなかった、では済まされる問題ではない。
頭を下げようとする鈴音の肩が、両手で押し返される。
「謝らないでくれ。救命行為とは言え、誤解されるような事をしてしまったのは私だ。むしろ謝るべきは私だろう」
今度は鈴音が謝られるのを止める番であった。
「や、やめて下さい!」
「だが……」
「それなら私も謝ります!」
「いや、君が謝る必要はない」
しばらく同じことを繰り返した2人は、不意に我に返って顔を見合わせた。
「……このままでは話が進みませんね」
「……そうだね。私としたことが、ついムキになってしまった」
お互いに頬を赤らめ、笑う。クスクスと笑い、玄武は眠っていた寝台の横にある服を指差した。
「さぁ、その服に着替えて。お茶でも飲みながら詳しい話をしようか」
「あ……そうですね」
言われてようやく忘れていた事を思い出す。
(そう言えば下着姿なんだった……!)
今度は鈴音が、本当の恥ずかしさから赤くなる番だった。
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