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(寒い……)
今は夏の筈なのに寒いと自覚した途端、身体の震えがとまらない。身体が少しでも暖をとろうと、小さく丸まる。小さくなることで、熱が表に逃げないように。
「…………」
震えながら身体を縮こませる鈴音の側に、暖かいものが寄り添った。
毛布ではない、生き物の温もりが鈴音の身体を包み込む。自分の部屋では、まずあり得ない。
(ん、え、あ……?)
明らかな違和感を感じ、ここでようやく意識が浮上し始める。もぞもぞと動くと、身体と温もりの間にほんの少し隙間ができた。
「目が覚めたのか?」
「へっ!?」
鈴音の知らない、聞いたことのない渋い声。腰に来るような、低い声。はっと目を開けると、肌色が視界いっぱいに広がった。
「え……え?」
すうっと視線を上に上げていく。
「おはよう、かな? 可愛らしいお嬢さん」
認識したのはバキバキに割れた筋肉。と、言葉では言い表せない程に整った、男の、顔。
「あ……あぁ……」
「お嬢さん?」
言葉も出ず、意味の伴わないうめき声を上げる鈴音を、心配そうな顔で男が覗き込んでくる。しかし、視界に入ってきたものとしては認識できているものの、とっくに思考回路が停止している鈴音は微動だにしない。
男は、一切動かない鈴音を気にすることなく彼女の頬へ手を伸ばした。
「まだ、冷たいな……もう少しくっつくか」
おもむろに頬に触れさせていた手を首筋へと移動させる。そのまま自らの方へ引き寄せた。
肌に男の体温を直接感じる。
「き……」
「ん? どうかし……」
「きゃあーーーーっ!!」
次の瞬間、鈴音の小さな手が男の頬をひっぱたく音が響いた。
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