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魔導剣士による勇者の為のお助けキャラ?  作者: 雪氷見♪
1章 冒険者編
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4話 スイ&赤羽VSフロストドラゴン

 

 

 ユキ達が作っていた炬燵だが、残す所もあと僅かだ。具体的には炬燵用の羽毛布団の作成だ。ちなみに織り機はすでに製作済みである。鑑定結果は品質がAで、レア度が6になっていた。もちろん鑑定したのはユキ自身だ。


「という事で布を用意する訳だが……」


 ユキは再び手を一振りし、出現した黄色い刀を人化させる。


「黄伊:人化」


 もう、お分かりかとは思うが黄伊の係りは『裁縫』である。少しして黄伊が何処からともなく出現した。


「さて…… 黄伊、布織りは任せる。俺とフウは他の家具でも作っておくから」


「お兄様!了解ですわ!」


 黄伊は張り切って腕まくりをし、織り機に向かっていった。もちろん糸はすでに出して置いてある。


「よし、じゃあ俺達もやるか」


「そうっすね」


 こうして、ユキ達も椅子やテーブルなどの家具作りに向かうのだった。



     ◆



 所変わって移動中のスイ達。二人は現在、ユキがフロストドラゴンと遭遇した場所を飛んでいた。


「確かご主人様がドラゴンを見たのはこの辺りでしたね。赤羽、気を付けて下さい」


「はーい」


 そんな二人を狙う者が1体。もちろんフロストドラゴンである。フロストドラゴンは二人のさらに頭上から高速で飛翔し二人に接近した。だが、二人はタダの一般人ではない(10枚の焔の翼を生やして高速で飛行する人物達を一般人とは呼ばない)、そのため高速で接近したフロストドラゴンに気が付いた。


「赤羽! 上です!」


「大丈夫ぅ!」


 突っ込んだフロストドラゴンを赤羽は紙一重で避けながら、何時の間にか手にした赤い刀でフロストドラゴンの翼を斬り付ける。

 反撃されるどころか、避けられることすら想定していなかったフロストドラゴンは驚愕の声を上げる。なぜドラゴンと呼ばれる最強生物がこの程度の事を想定していなかったのかというと、今まで自分の速度を超える生物に会った事がなかった為だ。

 だが、その隙を待ってくれるほどスイ達は甘くない。


「ご主人様ほどの威力はありませんが……食らいなさい!‘絶対零度アブソリュートゼロ’!」


 何時の間にか地面に降り立っていたスイの必殺技が無詠唱で放たれる。

 無詠唱は文字通り詠唱を破棄して魔法を発動させることが出来る。ちなみにスイは魔法名を唱えていたが本当は唱えなくても発動する事が可能だ。なら何故、魔法名を詠唱したかというと、これから使う魔法はイメージが大事な魔法の為、少しでも魔法の効果を高めるために魔法名を唱えて魔法をさらにイメージしやすくしたのだ。


 そして、絶対零度とは名ばかりの使用者の意思を反映する氷がスイの足元から迸る。急速に広がった氷は地面を凍て付かせるだけでは無く、周囲の木や積もった雪も凍らせる。雪は即座に純度の高い氷に変化し、針葉樹は巨大な氷の槍と化す。


「〝貫きなさい"」


 スイが命じると同時に‘絶対零度’の効果内の針葉樹が全てフロストドラゴン目掛けて飛んでいく。さらに追撃をかけるように地面の氷が変形し、槍や城壁を崩す時に使用される攻城兵器の破城槌、バリスタなどなど果てにはパイルバンカーのような代物にさえ変形していく。


「〝第二射……放て!"」


 その言葉と同時に盛大に氷の兵器達が放たれる。第一射を喰らって動きを止めていたフロストドラゴンに、ほぼ全ての攻撃が命中する。


『グウゥ!?』


「コレで最後です。〝凍てつきなさい!!"」


 その言葉と同時に敵を貫いていた氷の兵器が変形し、巨大な氷柱と化す。

 カチンコチンに凍ったフロストドラゴンが空中から落下する。ズズン……と、ドデカい音が響き渡り氷柱が堆積した雪に沈んだ。


「終わりましたか……」


 スイは氷柱を見て感慨深そうに呟く。だが、スイの中で疑問が生まれた。


「いえ、ですが……この程度の相手にご主人様が幾らか弱体化したと言っても逃亡するでしょうか?」


 試しに識別を使おうとした時にそれは起こった。


―――ピキッ……


 氷柱にヒビが入った。


―――ピキピキピキッ……


 ヒビが拡がる。


―――ガシャンッ!!


 氷柱が砕け散った。フロストドラゴンが中から這い出て来る。そのフロストドラゴンには夥しい量の裂傷が。だが、どの裂傷も致命傷には至っておらずフロストドラゴンの身を削っただけだった。

 這い出たフロストドラゴンは力強く翼を一仰ぎし、血走った眼をスイに向けて咆哮する。びりびりとした威圧感がスイを襲った。それを受けてスイは納得の表情を浮かべていた。


「まあ、そうですね…… 私やご主人様では極端に相性が悪いようです。今のご主人様なら一撃で良くて瀕死のダメージをお受けになる事でしょう。場合によっては咆哮だけでも危険な状況に陥ってしまうかもしれません。と言う訳で、赤羽、お願いします」


 そう呟いたスイが上を見上げた。そしてその視線の先にはフロストドラゴン……では無く更に頭上を飛んでいる赤羽を見つめている。


「りょうかーい♪」


 そして視線の先の赤羽は明るい声を上げ、途轍もなく冷たい声で詠唱を開始した。それは抑揚の無い酷く冷徹な声。心の籠っていない死人のような声。


「〝紅蓮の焔よ。全てを焼き。全てを燃やし。全てを焦がせ。そして我が敵を灰燼に帰せ。″―――禁呪十唱―――‘紅蓮禍津天’」


 空中から黒炎が湧き出し、フロストドラゴンにつどっていく。


『グルゥア!? ガァァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』


 フロストドラゴンは驚き、その後の痛みで絶叫を上げる。

 黒炎はフロストドラゴンを焼きながら球状を模って行き、そのままフロストドラゴンの全身を覆い尽くした。


『グオオオオオオオオオオオオオォォォォ!!!』


 ただ、未だにフロストドラゴンの絶叫は響き続けている。


「……しぶといですね」


 スイはポツリと呟いてから、足に縛り着けている獲物・・を手に獲る。その獲物は『銃』だった。ただ、弾は鉛玉や銃弾では無い。ユキ特製の特殊弾だ。

 スイが魔導回転式拳銃マギ・リボルバーに装填する特殊弾は7発。最大装填数だ。


「装填完了」


 スイは黒球にリボルバーを向ける。そして、引き金を引いた。


―――バババババババンッ!!


 速射で7連発。銃口から7本の紫電が走る。その紫電は7方向に開き、敵に向かって曲がった。


 丁度、紫電がフロストドラゴンに着弾した時。黒炎球も僅かに縮み始めた。そのまま、緩やかに外側が霧散し消失して行く。そして中からはボロボロに成ったフロストドラゴンが、浮いていられなくなったのか緩やかに降下して行く。そして黒炎球は完全に消滅する手前で一気に膨張した。

 膨張した黒炎は直後に火柱へと変化する。


「燃え尽きちゃえ~」


 スイの横からそんな間の抜けた声が聞こえてくる。スイは黒炎が縮んで行くのを見て一定の距離を取った。如何やら赤羽もスイに続いて距離を取ったらしい。


「コレで終わりでしょうか?」


「うーん。如何かな~?」


 如何にもフラグめいた事を言うスイ。そして、そのフラグはしっかりと回収された。

 炎柱の中で倒れていたフロストドラゴンがのそりと起き上がる。


「ハァ……本当にしぶといですね」


 そう言ったスイの手元に魔導狙撃銃マギ・スナイパーライフルが出現する。スイが宝物庫から取り出したのだ。ちなみに神刀の少女達の中で宝物庫を持っているのはスイだけだ。理由は単純で素材の関係上スイの分しか用意できていないのだ。後、宝物庫の中身だが、共通化でスイとユキの宝物庫は繋がっている。


 そして肝心の魔導狙撃銃だが、今回スイが選んだのはユキが作った幾つかの魔導狙撃銃の中で最も威力が高いモノだ。ユキ達が禁銃と呼んでいるそれは、正式名称‘禁呪式魔導狙撃砲マギ・カノンレーヴァテイン’銃身にはビッシリと魔導『禁呪一唱――レーヴァテイン』の呪式が文様の様に刻まれている。

 とあるアホな武器職人ユキが『禁呪一唱――レーヴァテイン』を呪式に変換して、更に銃に描く為にもう一度変換を行うという力技を丸1日掛けてやってのけてしまった為に完成してしまった代物だ。ユキと共にこの銃を作ったもう一人の製作者アホの言では「こんなに細かい作業をしてたら脳細胞が死滅してしまうのです~」だそうだ。

 ちなみに威力がチートな分、1度撃ったら丸1日冷却しないと使えないという欠点があったりする。


 スイは座り込んで禁銃を構えた。スコープを覗いてフロストドラゴンの心臓部に狙いを定める。


「コレで終わりです」


 戦いの終幕を告げると共に、スイは引き金を引いた。刹那、白線がフロストドラゴンの心臓部を貫通した。キィィィィィイイイイイと言う音が次第に小さくなって行き……完全に停止した。

 後に残ったのは心臓部が完全に焼け焦げて消失したフロストドラゴンの死骸だけ。


「終わったね~」


「はい、そうですね」


 スイは赤羽に返事をしながら禁銃をアイテムボックスに仕舞う。熱で持っていられなくなったのだ。

 そのまま距離を開けながら、しばらくの間フロストドラゴンが消失してリザルトウィンドウが開くのを待つ。


 30秒程、膠着状態が続いた。その間にフロストドラゴンの周囲を回って見たがHPバーは見当たらない。


「バグでしょうか?」


「わかんない」


 よくよく考えてみるとユキから聞いたのはユキが何らかの影響で弱体化したと言う事だけ。いつも見えているアイコンや視界端に表示される筈のパーティーメンバーのHPなどが一切表示されていない事の説明もされていない。


「確かにそうですね。赤羽、一度ご主人様に連絡を取ります。見張って貰えますか?」


「ん~。まっかせといて!」


「それではお願いしますね。では……“刻印通話”」


 スイの刻印通話が発動する。刻印通話は文字通り刻印で繋がるものと通話する能力だ。同じ様に刻印疎通と言う能力もあるが、それにはMPを消費する必要がある。ちなみに刻印疎通は一言で言うと念話だ。


『ん? 如何したスイ?』


 スイの手の甲にある刻印の輝きが増した。そこからユキの声が聞こえて来る。


「申し訳ありませんご主人様。お聞きしたい事がございまして」


『良いぞ何だ?』


「倒したフロストドラゴンが消滅しないのですが……」


『倒した!? 今、倒したって言った、かな!?』


 電話口ならぬ刻印からユキでは無い女性の――エレミリナの声が聞こえて来た。


『エレミリナ煩い! 通話中は喋るな!』


『ああ、うん。ごめんね。じゃなくて! 本当に倒したのかい?』


「恐らくは」


『ん、じゃあフロストドラゴンの死体インベントリに回収しておいてくれ』


「了解致しました」


『頼んだぞ』


「はい!」


 そうして通話は切れた。

 スイは幾つか気になる事が出来たが、それは合流してからでも良いと判断し、フロストドラゴンの死体を宝物庫アイテムボックスに収納する。そして赤羽とミニミリナの2人?と共に街に向かったのだった。




 初戦闘はユキでは無くスイちゃんと赤羽ちゃんでしたw

 次回、ユキが街に到着します!お楽しみに!!

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