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魔導剣士による勇者の為のお助けキャラ?  作者: 雪氷見♪
1章 冒険者編
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3話 雪山は終わらない!

 一夜明けて1月8日の午前10時。ユキは再び長距離を飛んでいた。そして、いまだに村も街も街道さえ見えてはいない。


 余談だが昨夜は雪を落とした木の間に簡易で作ったハンモック(防具を作る時の布を使った。実は竜皮だったりする)で眠った。それにモノのついでと寝てる間に雪が積もったり、モンスターが寄ってきたりしないように結界も張っておいた。

 さらに魔除けの結界だけでは多少心配だったので、防具‘深黒グラシャルナ’のフードを被って特殊効果の気配遮断を発動する。それに特殊能力の気配隠匿も使用して気配を消した。流石にそこまでしておけば眠ってる間モンスターは一体も寄って来る事はなかった。

 実際は眠る必要のないエレミリナが一晩中見張りをしていたのだが、それは頑張って結界やらハンモックを用意したユキの為にも言わぬが華だろう。

 食事に関してはインベントリ内に入っていた茶菓子を適当に摘んだ。


「なあ、あとどのくらいで着くんだ? あ、ラノマギステじゃ無くて、何処かの村か街の話だからな」


「うーん…… この速度で飛び続けた場合……1日くらい、かな?」


「えぇ……」


 思わず声が漏れてしまう。さすがにその距離は気が滅入るというモノだ。だが、現実はさらに厳しかった。


「でも、もう少し行ったら魔物が出る地域に出るから、実際には眠る時間も合わせて2日か3日は掛かるんじゃない、かな?」


「マジか……」


 このとき、ユキは決断した。今出せる最大速で行こう、と。

 具体的には、疾駆(最大100mの縮地が可能のスキル)と空中遊歩(空中に歩く事が出来る。最大10回)と魔力障壁(MPを消費して壁を作り出す)の3つを使って高速移動する。


 まず最初に魔力障壁で空中に足場を作る。次に疾駆を発動。100m先まで縮地する。その後、空中遊歩を使って空中を踏み締め再び疾駆を発動。疾駆の移動先で再び空中遊歩を発動。さらに疾駆へと続ける。コレを繰り返し、10回空中遊歩を使用したあと、回数をリセットするために魔力障壁で足場を作り出しそこで疾駆を発動する。

 そして疾駆を使用して消費したSPは回復薬を使って回復するか、変性機構の特殊能力を使ってMPをSPに変換して回復する。ちなみに変性機構の変換効率は7割程だ。

 ただ、使えば使うほど効率も上がるので、これからも徐々に変換効率は上がって行くだろう。


 と、言うのがユキの現在行える高速移動方なのだが……


「お前、さらっと何事も無いかのようについて来るよなっ、っと! ふっ! よっと!」


 ユキの横で高速移動中に平然とした顔をしながら、空中で背もたれ付きの椅子にでも座っているかのような格好で浮いているエレミリナに大声を張り上げて愚痴を言う。


「チッ……」


 思わず舌打ちが漏れるユキ。


「えっ、その反応はさすがに酷くない、かな!?」


「ならっ! 少しは頑張ってるところでもっ! 見せてみろよ、っと!!」


「えぇ…… 君と一緒に転移した時に神力大量に使ったから絶対嫌だよ」


 非常に嫌そうな顔で拒否するエレミリナ。だがユキはそんなエレミリナの表情よりもまた新しく出て来た単語に興味を抱いた。


「神力?」


 文字通りの意味で合っているのかと目で問いかける。


「魔力の上位エネルギーみたいなモノ、かな」


 その返答は頷きと共に帰ってきた。如何やら文字通りの意味で神様の力の事らしい。


「ふーん。そうかい、っと!」


「危ない!!」


 エレミリナの声とほぼ同時にユキの特殊能力の危機感知と気配察知が反応する。疾駆を前では無く後ろ向きに発動。即座にその場を飛び退いた。そして数瞬後、巨大な何かが通り過ぎた。


「‘識別’」


 ユキは即座に視界の端に捕らえた何かに識別を発動し、敵が何かを確認する。


「げっ、フロストドラゴンLV469って化け物じゃねぇかよ!」


 即座にユキは逃亡を選択。だが、敵はLV差400オーバーのフロストドラゴンだ。まず逃げる事は叶わない。

 現在のユキの最高速コンボで逃亡を図るが撒ける気配は無い。それどころか徐々に近づいて来ている。


「ああ、コレは無理だわ。“刻印転移”」


 ユキは即断し、使いたくなかった切り札を発動した。


 刻印転移はユキの両手にある刻印から転移マーカー用の刻印を配置する事でそこに転移できるようになる特殊能力だ。勿論刻印には残数が在り、増やすには高純度の属性魔石が必要になる。ただ、刻印の残数は『神刀の王』の他の特殊能力にも関係して来る為、補充したらすぐに転移ポイントを増設という訳にもいかないのだ。

 そして、この世界でユキが刻印を設置してあるのはエレミリナと共に転移して来た神殿だけだった。

 こうして、ユキは神殿に無念の帰還を果たしたのだった。



     ◆



 現在、神殿にいるのは、いじけるユキとさり気無く転移に便乗して来たエレミリナの2人だけでは無かった。他に誰がいるのかと言うと、


「ご主人様~ご飯出来ましたよ~って、まだいじけてるんですか……」


 水色のワンピースにメイドエプロンの少女スイだ。彼女はユキの職業『神刀の王』の効果でいつもは刻印化で左手の刻印と化しているのだが、ご飯作りをめんどくさがったユキが呼び出したのだ。


「いやさぁ…… また、あそこまで行くの面倒くさいなって……」


「ハァ、仕方無いですね。確かに今のご主人様でLV400越えのモンスターを倒すのはほぼ不可能でしょう。それにエレミリナ様?のなさった枷破壊の影響で高位の魔法や魔術、魔導も使えないと来ては……仕方無いですね。私と赤羽の二人で次の村か街まで行って参りましょう」


「っし! じゃあ、頼んで良いか?」


 満面の笑みでスイに問いかけるユキ。おそらくこの流れを読んでいたのだろう。スイとしては少し頭を抱えたくなるが、まあ何時もの事ですし…… と諦めている。ただ、物事はタダでは無い。


「では、今度一日お願い・・・を聞いてもらえますか?」


「げっ……」


 非常に渋い顔になるユキ。自分の末路(着せ替え人形化)を悟ったのだろう。このお願い・・・は前にも何度かされた事がありその時の事を思い出して微妙な顔になったのだ。

 それでも、今のユキではフロストドラゴンを撒けないのは事実。ココは仕方無く折れる事にする。


「分かった分かった。もう好きにしろ……」


「ふふ……ありがとうございます。あぁ、楽しみです!」


「ハァ……コレも全部お前の所為だ……」


 そう言って不思議そうな顔で話を聞いていた第三者であるエレミリナを睨みつける。本人も思う所が有るのか目を逸らされた。


「それではご主人様、赤羽を呼び出して頂けますか?」


「ん。了解」


 ユキはスイに頷きを返してから、右の腕をサッと振った。

 何時の間にかユキの手には赤い柄と刀身を持つ刀が握られていた。そしてユキは唱える。


「赤羽:人化」


 ユキの手から真っ赤な刀は消え、代わりに一人の少女が現れる。


「んー!! たっはあっ!! 陛下ぁどうしたの狩り?それともご飯?」


「だから陛下はやめろっての!」


 実は、ある意味恒例化しているやり取りを済ませるユキと赤羽。実際、赤羽も呼び方を変えようと思えば変えられるのだが、無理をしてまで変えなければいけない訳では無い事を理解しているので変えていないのだ。


「たくっ…… じゃあ頼んだぞスイ、赤羽」


「は~い」


「お任せ下さいご主人様!」


「んー。じゃあ、3人とも行ってらー」


 ユキはそう言ってスイと赤羽とエレミリナの3人を見送る。


「さて。待ってる間に……家具でも作るか。とりあえず炬燵こたつだな」


「炬燵かぁ。いいね」


「そうだろー…… って、おい。何で居る?」


 一人になった筈のユキに声をかけたのはエレミリナだ。そして何故エレミリナがココにいるかと言うと……


「一人だと暇かな?って思って」


「それは、それは、無駄な気遣いをどうも」


「ひどい!?」


 早くもエレミリナの扱い方をマスターし始めたユキであった。


「それでスイ達の道案内は如何したんだよ?」


「うぅ……無視かい? ……スイちゃん達の方は私の分身について行って貰ってるよ」


「ふーん。そうか……分身?」


 何と無く気になったユキは炬燵作りの作業の手を止めて聞き返す。ちなみに今は骨組の木を鋸でがりがりやっている。


 ユキの質問にエレミリナは実際に行って見せる事にした。わざわざユキの前まで行き、手をぐっと握り込む。そして少ししたあと、手を開くとポンッという効果音と共に小さいエレミリナが現れた。


「おぉ!」


 無視を決め込むつもりでいたユキも思わず反応してしまう。


「初めましてマスター!ミニミリナです!」


 エレミリナの掌の上でぺこりと礼儀正しいお辞儀をするミニミリナ。何とも可愛らしい仕草だ。


「よろしく。ユキだ」


「へー。君ユキって名前だったんだね」


 ミニミリナの目線に合わせて自己紹介をしていたために上から声がかかる。それによりユキは今更自己紹介をまだしていなかったことに気が付いたのだった。

 そしてその間にミニミリナがユキの頭の上に移動していたのだがユキは気が付かない。何故ならミニミリナには重さが無いのだ!

 と、まあ、そんな事は置いておいてユキは炬燵用の木を切る作業を再開した。



     ◆




「ふぅ。こんなモノか?」


 ユキの目の前には四分にされた丸太があった。魔法で切ったモノでは無い為、少しだけずれがあるがそれは仕方が無い。誤差の範囲だ。

 次に行うのは鉋での表面仕上げだ。平鉋と反り鉋を使って仕上げて行く。


「うーん。もうちょい剃った方が良いか? 考えてても仕方ないしこういうのは専門家に聞くか」


 即断即決でフウを呼ぶ事を決定する。フッと手を一振りし、緑色の刀を取り出したあと人化を発動する。数瞬後、そこには碧緑(へきりょく)の髪と瞳を持つ少女が現れる。


「フウ、如何だ? もう少し削った方が良いか?」


「そうっすねぇ。悪くは無いっす。ただ、コレとコレはもう少し削った方が良いかもしれないっすね」


「ん。了解っと」


 ユキは指摘された部分の添削を始める。


「っし。こんなもんか」


「そっすね。バッチリっす」


 フウは緑系統に精通しているので風や木の事については他の追随を許さない程の能力を持っている。そのためユキ達の中で木工はフウの仕事なのだ。ちなみにスイはユキの身の回りの世話全般で、赤羽は火を使う料理や鍛冶、黄伊は裁縫を請け負っているらしい。では、ユキの仕事は何かと言うと、全員の指示出しと手の足りない所を補う役目を持っている。そのためユキは意外とハイスペックで大体の事が出来たりする。


「で、次は……板か。さて、分厚い板どのくらい残ってたかな?」


 独り言を呟きながら縦2m横3m厚さ5㎝の板を取り出す。


「これで良いか。じゃあ、フウ。角丸めるぞー」


「了解っす!って言いたいんすけど……兄貴、その頭のチッコイの何すか?」


「頭?」


 そう呟きながら頭の上を擦って見る。そしてそこには……


「お前かミニミリナ……」


 にぱぁっとした笑みを浮かべるミニミリナがいた。


 OH・・・なんという事でしょう。話が進まない……orz

 そしてミニミリナが完全に案内役では無く愛玩動物ペット枠な件。

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