18話 グローブのお値段は?
ユキが目立たない様に対策をした日から一日が経過した。
ユキはその一日の間にCランク昇格の条件を満たしてCランクとなった。そのCランク昇格試験の内容は同じCランク昇格依頼受験者との模擬戦とCランクの依頼を一つ達成するといったモノだった。
Cランク昇格試験受験者との模擬戦はちょうどその日にもう一人受験者がいた為、即日で行われた。模擬戦の内容はユキの一方的な圧勝だった。
次にCランク依頼の方は生息地を調べるのが面倒という理由でユキは先日と同じ依頼を受注した。二度目ともなれば慣れたもので、手早く依頼の魔物を発見し、狩り終える事が出来た。その後、まだ時間に余裕があった為、ユキは青薔薇の魔眼の効果確認とレベル上げを並行して行った。
一方、ユキと別行動を取っていたスイはユキと同じ様にCランクの依頼を手当たり次第に受けていた。依頼内容はユキと被らない様に気を付けた為、狩りの最中ユキと出会う事は無かった。
本人としてはユキと共に行動できなかったのが不満だったりするのだがそれはまた別の話だ。
その日の夜は先日に作り切れなかった分の魔道具を作ってから就寝した。
そして翌日の朝、早くからユキは宿を出ていた。
ユキは今、前日に受けておいた商隊護衛の依頼の集合場所に向かっている。昨日パーティー登録を済ませておいたスイは、宿の横の裏路地で既に呼び出しておいた。その少し前にチェックアウトも済ませている。
「よし。準備は万全、ある程度の事なら対処可能っと」
「ある程度なんだね」
ユキのおざなりな確認に対してエレミリナが半眼でツッコミを入れた。
「ん。まあな。今、魔神に来られてもどうしようもない」
もっともらしい言い訳をするユキに対してエレミリナは胡散臭げな眼を向ける。何故エレミリナがその様な態度を取っているかと言うと、ユキがインベントリの中から取り出した数々の魔道具を見たからだ。他にもユキが大量に会得している特殊技能をエレミリナに公開したのも理由の内の一つだろう。
「ユキなら刻印転移で逃げられるよね」
「さあ? どっかの誰かさんが一瞬で付いて来たのを見たから確実とは言えないな」
「ご主人様、とても楽しそうですね」
会話に参加せずにユキの後ろを着いて来ていたスイが言う。ユキはそれを聞いて嫌そうな表情を浮かべた。
「って、なんでそこで嫌そうな表情をするのさ!」
「からかっただけだ」
ユキはスッと表情を元の無表情に戻した。それを見たエレミリナが何かを思いついた様にユキの顔をじっと見つめる。
「ユキってさ……」
「何だよ」
「無表情だと等身大の人形みたいだね」
それを聞いたユキが再び嫌そうな表情に戻る。この世界に来る前のゲームだった頃に好き放題、妹や幼馴染達に着せ替え人形にされたのを思い出したのだ。思い出せばあの頃は……とユキはそのまま回想に耽る。
少ししてそんなユキを現実に呼び戻したのはスイだった。
「ご主人様、集合場所が見えてきましたよ」
その言葉にユキがハッとして顔を上げると既に集合場所の門間近だった。集合時間の6時の鐘はまだ鳴っていないのでしっかり時間までに間に合った様だ。
ユキの護衛対象の商隊は既に出発の準備を完了していた。他の依頼を受けたであろう冒険者の姿もチラホラと見えており、護衛依頼を受けた冒険者が全員揃い次第に出発になりそうな雰囲気だ。
ユキは手近に居た商隊の一員であろう人物に声を掛ける。
「すみません。商隊護衛の依頼できました。Cランク冒険者のユキです。こちらはパーティーメンバーのスイです」
「Dランクのスイです。よろしくお願いします」
「あ、どうも。この商隊の隊長を務めていますトモイです。よろしくお願いします。ユキさんもよろしくお願いします」
トモイと名乗った30代後半の商隊長は人の良さそうな笑みを浮かべて、ユキに手を差し伸べてくる。ユキは一瞬首を傾げるもすぐに握手を求められている事に気付いた。
ユキはニッコリと微笑み返して手を握る。
「こちらこそ。よろしくお願いします」
「? あの、このグローブ、何の素材で出来てるんですか?」
トモイが言った様にユキは今、グローブを着けている。当然、手の甲の刻印を隠す目的の装備だ。手袋をしていても刻印が使用出来るのは確認済みである。
他にも右腰に“暗風刀”を左腰に“水鏡刀”を帯刀し、ミスリル製のチェーンで繋いだ魔導書を太腿に取り付け、手袋の上から魔道具の指輪を片手に付き2つずつ装着していた。
この様に、たった二日でユキの装備はかなり様変わりしていた。
「申し訳ありませんが個人的な理由で秘匿します」
「そうですか……残念ですがここは諦めておきます。……ちなみにですが、売るとしたら幾らぐらいで売りますか?」
「そうですね……売る気はありませんが、売るとしたら……まあ、白金貨100枚くらいですかね」
ユキは微妙に言葉で牽制しつつ、値段設定を幾らぐらいにするか考える。
しばしの黙考のあと、ユキが提示した値段は……なんと白金貨100枚であった。日本円で換算すると白金貨1枚といえば大体一千万円。それが100枚集まれば10億円だ。
これだけ聞くと冗談やぼったくりのような値段に感じるが、ユキが言っているのは冗談でもぼったくりでもない。本気で売るとしたらその位の価値があるのだ。
まずは素材。トモイが分からなかった事で察しの良い者なら薄々気が付いているだろうが、まず素材がほぼ全てそこらではお目に掛かれない代物でできている。
ミスリル・アダマンタイト・緋々色金の3つを7・1・2の配合率で混ぜ合わせて作った合金糸A。
ミスリル・深黒宝珠・神金鉄・緋々色金の4つを7・0.5・0.5・2で混ぜ合わせた合金糸B。
ミスリル・深蒼宝珠・神金鉄・海王竜鱗粉・隕鉄の5つを配合率5・0.5・0.5・3・1で混ぜた合金糸C。
これら合金糸A・B・Cの3本にアラクネ・クイーンの特殊糸を2本。計5本の糸を織って布状にした物がユキの着けている手袋の元となった物だ。あくまで糸として使ったので量はそれ程消費しなかったが、それでも伝説級の素材をふんだんに使ったとなっては価値は嫌でも上がる。
最も多く使われているミスリルでも1g銀貨2枚(2万円)以上で取引されているのだ。この手袋には約100g程使われているので最低でも金貨2枚の価値がある。
アダマンタイトは1g=大銀貨5枚(50万円)。緋々色金や海王竜鱗粉は1g=金貨1枚(100万円)はする。神金鉄に至っては1g=金貨5枚(500万円)は下らないだろう。残りの深黒宝珠、深蒼宝珠、隕鉄の3つについては値段さえつけられない。
ただ、ユキがエレミリナに聞いた所、一度だけ王族間で隕鉄の取引があったそうで、その時は1g=白金貨3枚(3,000万円)になったらしい。正直、王族基準なので当てにならない。
他の深黒宝珠と深蒼宝珠も同じくらいの値段設定を見積もって素材だけの合計金額を弾き出す。結果は、白金貨約30枚(3億円)。
それに技術代、加工費、装飾代、人件費などなどの諸々の代金が掛かって白金貨100枚。となった訳だ。それも店に売りつける場合の最低金額であって、もしも店売りするなら利益を考えて白金貨2、300枚は堅いだろう。
そして、そんな答えを聞かされた方は堪ったモノではない。説明を受けなくても触れれば最高級の品で分かる逸品だ。更に言うと残念な事に触った本人はとんでもない額を聞いてもそれ程の価値がある事を瞬時に悟ってしまう程の逸品だ。
と、まあ。そんな訳で……
「は、はく!?白金貨ぁぁああああああ!? それも100枚!?」
あまりの額に顔を驚愕で固め、両手を上に突き上げた体勢のトモイの絶叫が門前に響き渡ってしまうのだった。
どんな訳だよ!?と、いうね。……ハイ。
これで一章は終了です。何とも様にならない終わり方ですが気にしたら負けです。つまりあなたは負けたのです!ビシィ!
……………勿論、冗談です。調子に乗ってすみませんでした。orz
それと、少し更新の間が空きすぎているので詰めれたら良いなと思います。作者的にはもう一作の「LMKW」もそろそろ復帰して頑張っていけたらなと思っております。
……今、書いてて自信が無くなってきました。ダメじゃん!と思う人は是非感想で作者を応援してやってください。そしたら、少し元気になって動き出すかもしれませんよ|д゜)チラッ
ハイ。まあ、グダグダと後書きが長くなりましたが、これで一章の方はホンッッッットウに終わりです。次回は『魔導学園への道中』という章になります。おっ楽しみに~




