17話 この2日間で・・・・・・
インベントリに禁銃を収納し、代わりに先程収納した試験管を取り出す。ユキは改めて中身を軽く振り、混ぜた。
次にユキは試験官を右手で持ち、左手を宙に向ける。そして魔法陣を描くために魔力を掌に集める。その過程で魔力を青の系統へと変換する。
魔力が掌から微細に広がっていき、雪の結晶の様な魔法陣を描く。重ねてユキは詠唱を開始した。
「〝我は王、魔導と神刀を統べる王なり″」
短い詠唱が終わった瞬間に描き終わった魔法陣へ試験管の中身を振りかける。
すると魔石を溶かした青色の液体が空中の魔法陣を伝って広がる。そのまま全体に広がった液体は魔法陣に染み込んでいく。
魔法陣に液体が完全に染み込んだのを確認し、ユキは同じ刻印が刻まれている自分の左手の甲を魔法陣へと向ける。
「‘青の刻印’」
魔法陣が淡く光り輝き、ユキの魔法陣も連動するように光る。輝きが同調して強くなっていき、一定の基準まで光り輝いた後、手の甲に吸い込まれて消える。
「よし、っと。改めて見るとファンタジーだよなー」
ユキは軽く手の甲を擦って結果を見届けるとそんな事を呟く。
「へぇ、今のが言っていた刻印の製法なんだ」
「まあな」
「意外と簡単なんだね」
「まあ、魔法陣を作るのに必要な魔力消費がかなり多いんだけどな」
具体的には魔力を100使う。
ユキの魔力最大値は3,450だ。今は特性『魔力最大値無限化』のお蔭で上限無しの天元突破状態だが、その特性が無ければが魔力最大値はそれ程多くない(ユキ視点で見てだが)。つまり特性が無ければ34回しか使えない訳だ。
それと魔力自動回復量だがユキの場合、6秒間で魔力最大値の1%を回復する。気力自動回復量は10秒で1%回復だ。ちなみにユキの魔力と気力の自動回復量は特性を除いたの魔力、気力の最大値に依存している。
予想は着くと思うが、普通のプレイヤーの場合は何方も10秒で1%回復だ。ユキの魔力自動回復速度が速いのは、それを上昇させる常時発動の特殊能力を幾つか持っているからだ。魔導剣士と言いつつも魔力に比重が掛かっているのはユキの戦闘スタイルが手数型というのも関係している。
「増えた数は……1か。渋いな……」
ユキは思わずといった感じで呟く。
刻印の増加量は一度の作成時に1~10まで存在しランダムで決定する。まあ、当然の事ながら1が一番出やすい。
ただ、1~4は比較的出やすく、その為ユキは最低の1が出たのに思わずボヤいてしまったのだ。それと5以上だが、ユキの感覚的に5が偶に出る。6が稀にで、7が極稀に、8が出ない、9が出る気配が無い、10は出た事がまず無い、だ。
「さて、また作るか…… あ、スイ。そっちの液体は出来たか?」
この様に延々と作業を続け……その作業が終わる頃には20時がまわっていたのだった。
◆
手持ちの魔石を全て使い切った結果、作れた刻印は赤の刻印が63。青が31、緑が94、橙が157、白が119、黒が32、黄が6、灰が13、紫が38、透が18、藍が57だ。
比較的手に入りやすい基本の6系統で青と黒が極端に少ないのは、それだけ魔道具や刻印として利用しているからだ。特殊系統の黄(雷属性)、灰(時・空)、紫(幻)、透(無)、藍(呪)の魔石はそもそも入手が困難で所持している数が少なかったのであまり量が作れなかった。
「ああ、そう言えば! ユキ、前から言おうと思ってた事があったんだけど……少しいい、かな?」
ユキが食事を食べつつ、製作出来た刻印の数を脳内に浮かべてニヤついているとエレミリナに声を掛けられた。それも宿の食堂でだ。
晩御飯はまだ、パンとスープ、サラダの3品が残っている状況でとても食べ終わったとは言えない状況。自分も料理をするユキとしては、不味くなく、何方かといえば美味しい部類にはいるその料理を残して部屋に戻るのは聊か気が引けた。
その為、ユキが食べながら聞くだけでいいのかと小声で呟くと、エレミリナも状況は理解している様で問題無いと返される。ユキはそうかと一言返して完全に聞き役に徹するといった態度を取る。
「良かったよ。今言わないとまた忘れそうだしね。
それで私が言おうと思ってた事だけど、まずユキの方針は極力目立たずに面倒事は避けて進むっていう方針で合ってたよね?」
エレミリナに聞かれてユキはこくりと首を縦に振る。これくらいの動きだけならば周囲から見て、料理の味を楽しんでいるようにしか見えないだろう。
エレミリナはユキからの返事を確認すると話を続ける。
「それならまず、その目立つ装備をやめるべきだと思うんだ。上下黒服はまだ良いとしても、流石に腰から揃いの刀6本と両手の甲に淡く輝く刻印は目立つよね。そして、極めつけはその無駄な美少女顔だね」
最後の一言を聞いてユキの頬が引き攣るがエレミリナは気にも留めないで話を続けた。
「あとは、見た事も無い固有魔法に媒体となる魔道具を使わずに魔法を発動。魔法陣を使わずに詠唱だけで魔法を発動し、多重起動に並列詠唱などの超高等技術を使いこなす。そして加減を知らない魔物の討伐量。周囲から見ると明らかに異常だよね」
ココまで沢山の例を挙げられるとユキは反論も出来ず、「うっ……」と言葉に詰まる。それどころか途中から聞いていて、これだけの事を二日で起こした自分に頭を抱えたくなった。耳が痛いとはこういう状況の事だろう。
「まあ取り敢えずは何とか出来る所から変えていくしかない、かな」
こうして、食事を取り終えた後、部屋に戻ってからする事が決まった。
◆
部屋に戻ったユキはすぐさまエレミリナにダメ出しされた点の対策を始めた。
容姿は髪や目の色を変えたりするぐらいは所持していたアイテムで可能だったが、残念な事に大本が殆ど変わっていない為目立つのは変わらなかった。取り敢えず容姿は如何しようも無いので効果が弱めの気配遮断、存在感遮断を使って誤魔化す事になった。
次に六本刀だが、「違和感が無い剣の携帯数は最大が3本くらい、かな」とエレミリナに言われ、付け足すように「ただそれはあくまで最大であって極力目立たないようにしたいなら1本か2本にするべきじゃない、かな」という言われた。流石にここまで言われればユキも必要な時以外六本刀の着用は控えるべきだなという結論に至った。
結果として第六感強化の効果を持つ“暗風刀”、気配変化を持つ“水鏡刀”の2本だけを装備する事に決まった。ただ、ユキは最後の最後まで五感強化を持つ“純土刀”を含めた3本でかなり迷っていた。結局最後は武器の取り回しの良さで決めた“暗風刀”と“水鏡刀”に決めたのだった。
それと各武器の特殊効果だが“暗風刀”の第六感強化は文字通り直感が良くなるといった効果だ。“水鏡刀”の気配変化は気配を濃くしてモンスターのヘイトを意図的に上げたり、逆に薄くして気付かれ難くしたりといった事が出来る効果だ。聞いていてそれくらい自分でやれば?と思われがちな能力だが細かい調整が簡単に出来るのは非常に便利だ。何より、吃驚したりして気配遮断が乱れて場所がばれる。といったへまが起こらないのが良い。素晴らしい。
あとは、“純土刀”に五感強化と“火月刀”に殺気変化が付いている。“純土刀”の五感強化は文字通り五感、つまりは視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚のいずれかの内一つの性能を向上させる効果だ。食事中に味覚強化を使えば味が細かく分かるし、遠距離から禁銃で射撃する場合でも視覚強化を使えばスコープ要らずで放てる。聴覚を上げれば盗み聞きも出来るといった感じで非常に多様性の利く特殊効果だ。“火月刀”の殺気変化は“水鏡刀”の気配変化の殺気版なので細かい説明は省く事とする。
ユキが滔々と対策を立てている間に時間はどんどんと深夜へ近づいて行くのであった……
1章はあと数話で終了です。ファイトー!
それと、新しいルーターを手に入れました!!これで携帯を使わなくて済む!やったね♪




