16話 神殺しの武器?
今回も少し短いです。
それと、先週は色々あってお休みさせて頂きました。申し訳ございませんでした。
天井の氷がパラパラと氷の粒となって舞い落ちる。
そんな状況の訓練場にユキが走り込んで来た。そして、それを見たユキはすぐに状況を把握する。と言うか悟った。
「はぁ……」
溜息を一つ。そしてキッとスイを睨みつけ。
「スゥゥイィィイィ!!」
何処からともなく取り出したハリセンでスイの頭を思いっきり叩く!
スパァアアン!という小気味良い音が訓練場に響き渡った。
「ご、ご主人様!? 一体何を!?」
「ギルドに来る前、やりすぎるなって言ったよな? 目立つなって言ったよな? 俺、確かに言ったよな!?」
「た、確かに……言いました、けど……」
スイの一言に対してユキはニッコリと笑って言う。
「けど、何? ねぇ、何かな?」
謎の圧力がスイを襲う。それを見た周囲の人達の頬が引き攣る程の圧力だ。当然の事ながらスイの頬も引き攣っている。
そして、さらにユキの言葉と言う切れ味の鋭い攻撃が続けて放たれる。
「ふふふ、スイ帰ったら罰として刻印製作手伝って貰うからな? ……あと、エレミリナお前も宿に戻ったら罰を受けて貰うからな?」
ボソッと誰にも聞こえない程度の声で呟いたユキの一言を時空女神であるが為に聞き取れてしまったエレミリナの顔は歪む。
「何で私も罰を受けなきゃいけないの、かな?」
「……お目付け役だろうが」
「うっ……」
ユキがチラリと宙に浮いているエレミリナにジト目を向けるとグゥの音も出ないといった表情をしている。
「あー、すまんが如何いう状況だ?」
そんな中、ユキとスイの絡みを見ていた試験官がおずおずと声を掛けてきた。ちなみに近接戦闘の試験官である。
「あ゛? ああ、すみません。お……私はこのスイの保護者……は違うな、スイの主です。この度はスイが皆さんにご迷惑をかけてしまい申し訳ございませんでした」
一瞬だけ、試験官にも殺気が向けられた。正面からユキの殺気をくらった試験官は硬直して身構える事すら出来ないでいる。
その試験官にあてられた殺気はドロッとしていて重く鈍く、それでいて背筋に鋭い寒気を通すものだった。
ただ、試験官の身に纏わり付き体を動けなくさせていた殺気はすぐに消え、それを放っていた本人は人が変わったかのように謝罪をした。
それを見た試験官は殺気が消えたにも拘らずさらに恐怖が増す。その理由はあてられた殺気の濃さにも当然驚いたが、それを一瞬で消す事が出来るその技量にさらに驚き、自分では絶対勝てないどころか勝負にもならないと悟り恐怖したのだ。
「あ、ああ。彼女があのような途轍もない魔法を使ったのは何方かと言えばこちら側に非があった。幸い怪我人はいないし、元の目的であった魔法の威力確認も出来た。その腕なら間違いなくAランククラスだろう。な?」
「う、ぁ……おう、そうだな」
力量を悟った近接戦闘の試験官は少しでも早く目の前の二人から離れたいという思いで話を進める。急に話を振られた魔法の試験官も同じ気持ちの様だ。
「ただ、俺達はただのBランク冒険者だ。残念の事にDランクまでの推薦権しか持っていない。申し訳ないがDランクへの推薦それだけでこの度の事は許して貰いたい。頼む」
そう言ってユキに向かって頭を下げる。その様子が男の内心を分かり易く表していた。
その様子を見て、怖がらせるつもりのなかったユキは凄く複雑そうな表情で「問題無いです」と告げた。
「これがDランクの推薦状だ。受付に持っていけば更新して貰える筈だ」
そう言って三つ折りにした紙を一枚ユキに渡す。
「ありがとうございます」
ユキはぺこりと頭を下げてすぐにその場を去る。当然、スイも連れてだ。悪くない結果を得たのに何故か釈然としないユキであった。
◆
宿の部屋に戻って来たユキ達は刻印を量産しながら、これからの予定を相談していた。それと余談だが、スイは宿泊客として登録していないので、宿の横にある細い路地で周囲を確認した後、刻印化し部屋で再度人化した。
「俺は明日、ポイント的にCランク試験が受けられるしいから受ける予定だけどスイ達は如何する?」
ユキはそう言いながら手に持った青系統の魔石を握り潰す。ある程度の大きさまで砕いた後、すり鉢に入れさらに砕く。
次に純度を上げた魔力水をすり鉢に注ぎ、粉状になった魔石と魔力水を混ぜ合わせる。
「私は当然ご主人様について行きます」
「いや、Cランクの依頼幾つか受けてCランク昇格の基準達成させてこい」
「でも、それって物凄く目立ちますよね?」
ユキはすり鉢の注ぎ口から液体を試験管へと移す。軽く振り試験管の中身を混ぜる。
「もうすでに何処かの誰かさんが目立ったからな」
「ご主人様ですね」
「お前だよ!!」
自分の事を棚上げしてユキは言う。エレミリナはその三文芝居を観て腹を抱えて笑っていた。
「ウザい」
ユキはポツリとそう呟き、手に持っていた試験管をインベントリに収納する。そして代わりに宝物庫からとある武器を取り出す。
それを見たエレミリナは急激に動きを止めた。
「な、何だいそれは?」
「‘禁呪式魔導狙撃砲レーヴァテイン’。俺特製の神特攻武器だ」
神特攻武器。如何いう事か説明すると、元になった『禁呪一唱――レーヴァテイン』にはとある特殊効果がある。それは種族が神に属するものに3倍のダメージを与えるというものだ。禁呪指定されるのも当然の能力だろう。
まあ、そういった訳で禁銃にも神特攻の効果があるのだ。恐らくエレミリナはそれに反応を示したのだろう。
「幾ら霊体といってもコレで撃たれたら流石に無傷って訳にはいかないよな? いや、霊体だから消滅もあり得るか?」
ユキはニヤリと笑ってエレミリナに銃口を向ける。
「ちょ、ちょっと待とうか。流石にそれは拙いというか、やり方が汚いというか、何というか…… 暴力はいけないと思わない、かい!?」
「拉致は良くないと思わないかい?」
ユキがエレミリナの口真似をしながら微笑む。ただ、微笑みといっても天使の微笑みではなく悪魔の微笑みだ。
「うっ、それは……」
「一回、死ね」
そう言ってトリガーに手をかけ……
カチャリ!
……
…………
………………
「あれ?」
転移でユキの背後に回ったエレミリナが呆けた声を出す。
「阿保か。街中で撃つ訳無いだろ。まだ、魔力充填が終わって無いんだよ」
ユキは禁銃で肩をトントンと叩く。
禁銃は一発撃つのに魔力を2,000必要とする。本当は5,000掛かる所を周囲から魔力を取り込み2,000で済む様にしたのだ。ちなみに3,000の魔力を溜め込むまでに必要な時間が24時間――つまりは一日なのだ。
今回の場合は魔力を2,000込めれば何時でも発動可能だったが、ユキは一切魔力を込めて居無かった為、不発した。
「はー……驚かさないで欲しいね」
「ちなみに撃とうと思えば何時でも撃てるぞ」
それを聞いて瞬間にエレミリナは迎撃態勢?を取る。今度はその様子を見てユキが笑い声をあげるのだった。
全力で自分の事(氷結刃64発同時撃ちの件)を棚上げしたユキ君でしたー。
それと、突然割り込んで来た試験官さんにユキは軽い気持ちで殺気を飛ばしてしまいました。これが、飛ばしたのがユキでなく一般人であれば問題無かったのでしょう。ですが、ユキだった為、このような事になってしまいました。
今回の件はユキ達の輪の中では冗談で済む事が他の人達の間では致命傷になってしまうという例です。既にユキは人外の存在です。と言うかゲームキャラはほぼ皆人外だと思います。
≪具体例≫
一般人Aが適度な力を込めて一般人Bにでこピンを決めると……「うわぁ、痛ったぁ~」程度で済みます。
ですが、ユキが一般人Bに力を込めてでこピンを決めると……「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」指が頭部にめり込み、そことその周辺から血と脳漿が流れ出すスプラッターな映像になります。




