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魔導剣士による勇者の為のお助けキャラ?  作者: 雪氷見♪
1章 冒険者編
13/25

11話 冒険者ギルド登録試験 Ⅲ

 前話に魔法陣が展開される様子を加筆しました。大した変化はありません。一行、二行程度です。

 

 

 

 あのあと、ローネアはウィンドカッターやウィンドブリッツ、エア・リービート、エア・ボム、エア・グレネードなどの風属性魔法を連発し続けた。まるで、固有魔法オリジナルをガレルに止められた当てつけの様に。と言うか実際にそうなのだろう。

 結局、魔力切れ寸前まで撃ってようやく満足したらしく。清々しい笑顔で中央を去っていった。ちなみに案山子は無傷で健在していたりする。


「あの案山子マジで丈夫だな」


 ユキは少なからず気になったので‘鑑定’を掛けてみる。



【案山子】

・藁で作られた案山子。修復の魔道具と耐魔の魔道具と吸魔の魔道具が埋め込まれている。




(案山子は普通の案山子なのかよ……)


 案山子以外に何か無かったのかと本気で思うが、ツッコミを入れたら負けの様な気がしたので、ユキはもう何も言うまいと心に決めた。


「はい、次ねー」


 ユキがそんな如何でも良い事を心に決めていると、中央でミスティアがユキを呼んだ。如何やらユキの番が回って来た様だ。

 ユキはインベントリに椅子を収納して中央に向かう。収納の際に何かの能力に見える様、指をパチンと鳴らしておく。これをしておくだけで、何かの魔法に見えるのだから不思議な話だ。


 ユキは中央に立つとミスティアから試験開始が告げられる。その言葉を聞いてユキは魔法の発動体制に入った。

 右手で銃の形を作り、左手を右手の下に添える。


「〝曲がれ、曲がれ"‘バジリオンボルト’」


 指先にユキの手の甲の刻印と同じ刻印が展開される。そこから9本の雷線が放たれる。その全ての線が違う軌道を取り、人間で言う所の心臓部で9本の雷線が集中した。結果、案山子の右肩部分を焼き千切り吹き飛ばす。ふざけた威力に周囲の子供達は開いた口が塞がらない状態だ。

 ユキが行ったのは呪文加修プラススペルと多重起動の合わせ技だ。元々‘バジリオンボルト’は銃に見立てた指先から向けた方向目掛けて一直線に雷を打ち出す魔法だ。無論、枝分かれなどしない。では、何故枝分かれした挙句、複雑な軌道を取ったか。


 一つ目の理由が呪文加修プラススペルだ。呪文加修プラススペルは詠唱を追加する事で方向性を持たせる事だ。ユキが言った様に〝曲がれ"と吹き込めば曲がるし、〝止まれ"と言えば停止する。ただ、発動前に込めなければいけない為、ぶっちゃけ動かない敵か行動の予測のできる敵にしか使いにくい。更に込める呪文が複雑になれば成程、魔力の消費が上がるという欠点もある。


 そして二つ目の理由。多重起動による魔法の並列発動だ。ユキは一本の雷線を複雑に枝分かれさせたのではなく、一つ・・の詠唱で九つ・・の‘バジリオンボルト’を起動(発動)させたのだ。並の魔法使いが見たらふざけるなと激昂するであろう、暴論の様な魔法の使い方だ。

 例に例えると――9枚の紙に同じ文字を書くとして、出来るだけ早く文字を書き終える為に、紙を9枚重ねて上から筆で9枚纏めて書くようなものだ。

 こう伝えるとユキがどれだけふざけた魔法の発動の仕方をしたかが伝わるだろう。ただ、この方法も完璧な訳では無い。下まで墨(魔力)が染み込むまでの時間を待たなければいけないし、下にいけばいく程文字が掠れてしまうのだ。その為、重ねて使えば使うほど威力は落ちていき、最後には発動さえしなくなってしまう。このような理由で多重起動も完璧ではないのだ。ただ、それでも上手く使えば強い事には変わりわないのだが……


(閑話休題)


――と、まあ、かなり高火力の一撃が案山子に直撃した。ただ、魔道具の破壊には失敗した様で案山子の修復が始まっている。少し経つと元通り腕の生えた案山子になった。


「むぅ……

――‘氷結刃アイシクル・ブレード’」


 ユキは右手を胸の前に掲げ、手の前に青色の魔法陣を展開する。その中心部から氷の剣が生み出され射出される。氷の剣は案山子に深く突き刺さり柄で止まった。

 攻撃を受けた事により、案山子に埋め込まれた吸魔の魔道具が起動した様で氷の剣が溶かされて消えていく。ユキはそれが気に入らない様で込める魔力量を上げて再び‘氷結刃アイシクル・ブレード’の魔法を展開する。ただし今回は多重起動で二重発動だ。


「‘氷結刃アイシクル・ブレード’!」


 トストスっと2本の氷の剣が案山子に突き刺さり、案山子が串刺しになる。人間だと間違いなく重症だが、相手は案山子なので問題無い。

 ユキは間髪入れずに次の氷結刃アイシクル・ブレードを展開する。今度は四重だ。


 ユキの魔法名を叫ぶ声だけが訓練場に響く。

 結論から言うと案山子は針山の様になって動きを止めた。最終的に案山子が息の根?を止めるまでに撃ち込まれた魔法の数は百を超えた。

 それはもう酷いものだった。案山子が一回耐えるごとに打ち出される魔法の数が倍に増えて行き、最終的には六十四と言う意味の分からない量の魔法陣が空中に描かれ、そこから同時に64本の氷の剣が放たれる。同時詠唱、多重詠唱、並列詠唱、多重起動、超高速魔法陣自動構成の五つの特殊能力を並行で使用するという無駄に高度な技術をユキは使い、氷結刃アイシクル・ブレードを案山子目掛けて打ち出したのだ。その時、周囲にいた全員が思った。負けず嫌いにも程があるだろうと。

 最後に、案山子の魔道具を破壊した事でユキがミスティアに怒られたのは言うまでも無いだろう。



     ◆



 30分後。やっとミスティアに開放されて訓練場に戻ると弓術、スカウト、サポーター、その他の試験が終わっていた。受験生も解散した様だ。ユキはDランクが決定しているので(さっき説教中にミスティアから伝えられた)スカウトの試験を渋々あきらめた。


「お、やっと帰って来たか」


「アハハ…… いやー、お騒がせしましたぁ……」


 残っていたグレンにユキは苦笑いぎみで言った。


「俺もよく説教されるから気持ちはわかるぞ。嬢ちゃん」


 グレンも苦笑いである。その二人の頭をミスティアはスパンッと叩く。


「貴方達がシャンとしないからでしょ!」


「「痛って」」


 見事なハモり具合であった。


「あぁ、そう言えば手首大丈夫か?」


「うん? そうだな……少しだけ捻ってるが、この位なら問題ないだろうな」


 グレンは手首を擦りながら言う。それで良いのかと思う適当な確認だったので、ユキは仕方なくグレンの手を取って確認する。と言うか躊躇無く捻った。


「痛ってぇ!!」


 ユキは半目になりながら手首に‘ウォーターヒール’をかける。その後、ポンポンと手首を叩き痛みが無いか確認する。


「ハァ…… 大丈夫そうだな。もう帰るぞ」


「あ、帰る前にカウンター寄って行けよ」


「ん、分かった。分かった」


 手をプラプラと振ってユキはカウンターに向かった。



     ◆



 ユキはあのあと、窓口の女性職員に幾つかの宿を紹介して貰った。その中でもリーズナブルで朝食付き、風呂付きの宿を紹介状を書いて貰う。その紹介して貰った宿でエレミリナに今日の出来事で聞いておかなければいけない事の確認を取っていた。


「俺から魔力が感じられないってミスティアが言ってたけどアレは如何言う事だ?」


「アレかい? 元々、ユキは魔力が漏れない体質だったからね。変える必要がないと思ってそこだけそのままにしたんだよ」


「成程な……」


 よくよく考えて、ゲームでMPが勝手に減ったら問題だろう。そしてエレミリナが言うように良い点まで変える必要はない。


「だからって全く感じられないのは問題だよな……」


 と、言う訳で魔力を操作して少量だけ体から垂れ流してみる。そのまま流れる様に魔力で魔法陣を描き……


「って、俺は何をサラッと‘反重力’使おうとしてんだよ」


 自分で自分にツッコミを入れるという謎行為に及ぶ。ただ、これで分かったがいつも無意識で使っていた特殊能力『超高速魔法陣自動構成』は体から垂れ流した魔力で魔法陣を描いていたらしい。

 ユキは他にも‘大爆裂’‘空刃千撃’‘破軍猛火’‘インビジブル’‘エンビテイト’‘エン・ミニィ・テイト’‘グロウ・スピリット’‘モアタナー・セプテン’‘ヘル・ファイナ’などなどを展開してみる。


「うーん。理解した所為で構成速度が落ちた気がする…… まぁ、要練習だな。次はスイ達の言語か」


 ユキはエレミリナに記憶を渡されて言語を覚えたが、スイ達には記憶がない。なら問題は記憶だとユキは判断してエレミリナにスイ達にも記憶を渡せるのかと聞いてみる。


「んー、無理、かなぁ。ユキに記憶を渡した所為で貧血気味だしねー」


 言葉の繋がりが理解できず首を傾げる。


「記憶と貧血の何処に関係があるんだ?」


「時空魔法‘メモリー・ブラッド’。記憶を血に乗せて渡す魔法だよ」


 何処が時空魔法なのか分からずにユキはまた逆方向に首を傾げる。黙っているとエレミリナは解説を続けた。


「記憶。つまりは空間の細かな色や振動を覚えている訳だね。それを魔力に刻んで血に乗せ相手に流し込む魔法だよ」


「だから時空魔法か…… ん? あぁ、だから起きた時、口の中で鉄の味がしたのか」


 昨日の事を思い出して呟く。てっきり口の中の何処かを切ったのだと思っていた。特殊能力の所為でユキは回復速度が異常に早い。だから起きた時にはもう傷が治ったのだと思っていたのだ。


「『血液感染症』とか大丈夫だよな?」


 この世界では回復魔法がある為、医療があまり進んでいない。その為、余り病気が知られていないのだ。


「うーん。多分、大丈夫じゃない、かな」


 全く信用出来ない言葉を聞いてユキは頭を抱える。


「‘識別’」


 状態異常に病気は無かった。多分、大丈夫なのだろう。多分。


「それでも心配なものは心配なんだよな……」


 ハァとユキは溜息を吐いたのだった。


 3話辺りでサブタイを変える予定だったのに、何故かずるずるココまで来てしまいました。今からでも変えましょうか……

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