表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導剣士による勇者の為のお助けキャラ?  作者: 雪氷見♪
1章 冒険者編
11/25

9話 冒険者ギルド登録試験 Ⅰ

 

 

 

「たあぁ!」


 少年が剣を振り下ろす、グレンはその剣を自分の剣で受けた。ギンッと音が響き渡り少年の剣が跳ね返される。


「ぐぅ……」


「手を痛めたか。終わりだ終わり。次の奴と交代だ」


 5人目の受験者は左手を抑えながら中央から離れる。入れ替わりで6人目の受験者が中央に向かった。


「お願いします!」


「よし、来い!」


 二人は中央で打ち合いを始めた。そんな試験官と受験者をユキはつまらなそうに見ていた。


「面白くない」


 口に出る程つまらなかったらしい。ぎいぎいと座っている椅子を揺すりながらボヤいている。


「おい、その椅子何処から出した」


 横のガレルがある意味では今更なツッコミを入れる。ユキは答えるかどうか少し迷う。記録の中で宝物庫の様な魔道具はレアだったのを覚えている。まあ、勇者達は全員持っていたが……

 それは例外として、宝物庫の様な魔道具は希少で、Sランク上位の冒険者が持っていたら驚かれるレベルの代物なのを思い出した。SSランクでも持っている人は半数に満たない。

 それを考えれば自ずと答えは出る訳で……


「秘密だ」


「そうかよ」


 以外にも詮索する気は無いらしい。ユキが顔には出さないが驚いていると6人目の受験者が吹き飛ばされた。


「次! そうだな……お前だ」


 そう言ってガレルを指す。ガレルは舌打ちを一つして立ち上がった。ユキはガレルが何に苛立っているのかは分からないが、機嫌が悪いのは見て取れた。


「ふぅ…… 頼む」


 中央まで移動したガレルは息を吐き、心の波を鎮める。ガレルは刃引きされた剣を中段に構えグレンに向けた。

 グレンはガレルの準備が整ったのを見て開始を宣言する。


「よし、何時でも良いぞ。来い!」


 ユキは今までと違ってグレンから圧を感じた。如何やらグレンはガレルと本気で戦うつもりらしい。


「ココで恒例のステータスチェックでもしますかね、っと。‘識別’‘識別’」


 結果から言うと、二人のステータスはほぼ互角だった。二人とも純粋な剣士タイプだ。


 まずはグレンから。名前は「グレン・ダイル」、レベルは「59」、年齢は「32」、種族は「人間」、職業は「B級冒険者」、クラスは「剣士」、技能は「無し」で、特性も「無し」、特殊能力は「身体能力上昇Ⅰ」「身体能力強化Ⅰ」、加護は「無し」、称号は「下級貴族(準男爵)」だ。魔力は「36/36」、闘気が「231/231」、状態異常は「無し」だ。


 次にガレルだが、名前は「ガレル・レンツェア」レベルは「51」、年齢は「10」、種族は「人間」、職業は「魔法学校:ラノマギステ公国(初等部3年)」「冒険者見習い」、クラスは「剣士」「魔法使い」、技能は「狩人」「初級魔法」、特性は「無し」、特殊能力は「身体能力上昇Ⅰ」「身体能力強化Ⅰ」「武技強化Ⅰ」、加護は「無し」、称号は「中級貴族(子爵家)」、魔力は「92/82」、闘気が「124/124」、状態異常は「無し」で、付属効果に「攻撃力上昇(弱)」が付いている。恐らく魔力が減っているので身体能力を上昇する魔法を使ったのだろう。


「これはガレル有利かな? ただ……」


「ただ、如何したんだい?」


 ユキが妙に自信満々にこれから如何なるかの予想を言っているので、横で聞いていたエレミリナは気になって問う。


「グレンが勝つだろうな」


「それまた如何して? あの子も頑張ってると思うし、実際かなり強いよね?」


 エレミリナは本当に分からないと首を捻っている。ユキはそれを横目で見て溜息を吐く。


「あのな、駆け引きに慣れているグレンに対して、型が綺麗なだけのガレルは勝てないんだよ」


 ユキは中央で入れ替わり立ち替わりながら剣を打ち合っている二人を見て言う。ユキが視線でエレミリナに分かったかと問いかけるとエレミリナは深く頷いた。

 少しして、案の定と言うべきかグレンが放った足払いを諸にガレルは喰らって転んでしまった。


「なっ!? 汚ねえぞ!」


「いやいや、普通だろ」


 思わぬガレルの一言に、ユキは思わずツッコミに入れてしまう。ただ、流石にかなりの距離がある中央まで声は届かなかった様だ。

 グレンが倒れたガレルの目の前に剣先を向けた。


「終わりだな。もう少し周囲に警戒した方が良いな。ただ、その年でここまで出来るなら、お前は強くなれるだろうよ」


 グレンの言葉を受けてガレルは悔しそうな顔をしながら立ち上がった。そのまま何も言わずに奥歯を噛み締めて中央から離れた。


「よし、嬢ちゃんで最後だな。悪いが嬢ちゃんには手加減出来ないぞ」


 グレンが離れたユキに剣先を向けてニッと笑う。その顔は戦闘狂の類いの様に血に飢えているのではなく、純粋に戦いを楽しんでいる顔だ。

 瞬間、グレンから感じる圧が跳ね上がった。


「嬢ちゃんじゃ――おぉ。何かスゲェ」


 何時も通り否定の言葉を言おうとしてやめる。今のユキだと足元をすくわれかねない強さを感じたのだ。それでも、ユキは気後れ一つ無く中央に向かった。手には使い慣れた刀――ではなく、刃引きされた貸出し剣だ。ユキは貸出し剣を片手に一本ずつ持ち軽く振って重さを量っている。


「おい、腰の剣は外さないのか? 六本も着けてたら戦闘の邪魔だろ?」


「あー、大丈夫。大丈夫。問題無い。それより何時でも良いぞ。来いよ」


 そう言ってユキはニヤリと笑った。分かりやすい挑発である。


「そうかい。じゃあ、行くぞ!」


 グレンは10mはある距離を三歩で詰め、ユキに肉薄する。そのまま剣を上段から振り下ろした。ギンッと刃がかち合う音が響きグレンの剣の軌道がずれた。


「成程な」


 ユキはぼそっと呟いて、大きく後ろに跳んだ。ユキは今の一撃で幾つかの事を確認した。

 一つは、グレンの技量。これはかなりのものだった。

 二つ目は、ユキの思い通りに体が動くか如何か。これに関しては何とも言えない。確かに出来る事は減っているし、身体能力も随分と落ちているが、無茶な動きをした訳では無いので動作に支障は無かった。

 そして三つ目が、グレンの腕力。これを見極める為にユキは避けられた一撃をあえて受け、止めきれるのかを一度刃を合わせ確認した。結果は受けられない事はないが無理に受けたいとは思わないと言う具合の微妙な威力だった。

 他にも幾つかの事を確かめたが、大事なのはこの三つだけだろう。最悪、他は‘識別’で判断できる。


 後ろに跳んだユキは、着地の瞬間に腰を屈め前に跳んだ。グレンは引いた相手が方向転換して自分に向かって来るという珍しい行動に少し反応が遅れる。その間にユキは、右手を左の腰だめに構え横に一閃を打ち出せる体制を整えていた。


「ふッ――!」


 剣をいなされて振り下ろした状態で固まっていたグレンは、急いで自分の下に剣を引き戻して横の一閃を受け止める。


「……ぐぅ」


 グレンは耐えきれないと悟り、攻撃の勢いに乗って後ろへ飛んだ。

 ユキはそれを見てチッと舌打ちを一つ打つ。以前なら防ぐ暇もなくグレンが真二つになっていただろう。刃引きした剣でもその位の威力は出たはずだ。


「痛ってぇ~。嬢ちゃんマジで化物じゃねぇかよ……」


「流石に化物は酷いぞ」


 ユキがムッとなって反論すると、グレンは大笑いしながら謝罪した。それから再びユキに剣を向け突っ込んだ。今度は鋭い刺突が放たれる。

 ユキはその攻撃を認識し、最低限の動きで避けた。そして半身になった状態から身を屈め、するりと懐に入る。その動作の最中に、ユキは両手から剣を離した。


「ハッ――!」


 刺突を放った状態で剣を握っているグレンの手を下から掴む。そのまま前屈みになっているグレンを柔道の一本背負いの要領で地面に叩き付けた。


「カハッ……!」


 勢いよく叩き付けられたグレンの肺から空気が吐き出される。だが、ユキはそこで手を止めない。マウントポジションを取り、剣を持ったグレンの手を上から動かしてグレンの持つ剣を首筋に突き付けた。


「まぁ、こんなもんか」


「ゴッホゴホ…… ゴホゴホ……」


 咳き込むグレンの上に馬乗りした状態でユキは呟く。そして少し考えるそぶりをした後、ゆっくりと上から退き、立ち上がった。退いたのは何時までも上に乗っていては息が出来ないだろうと思ったからだ。


「さて、俺の勝ちで良いな?」


「ゴホゲホ…… はぁ、はぁ。あ、ああ、問題無い」


「よし」


 こうしてユキは魔法やスキル――武技を一切使う事無くグレンに勝利したのだった。



     ◆



 ユキがグレンと共に訓練場の端に戻ると二人の試験官が引き攣った笑みを浮かべていた。


「いやー、参った。完敗したぜ」


 グレンが爽やかな笑顔で言うと更に二人の笑みは引き攣る。如何やらユキはガッツリやらかしたらしい。


「グレンさん、本気で戦ったんですよね?」


「うん? ああ、まあな」


「なんで武技使わなかったんですか?」


「そりゃあ、使ったら更に勝ち目が薄くなるからだろ」


 それを聞いて性根の悪い試験官が意味が分からないと言いたそうな顔をする。


「下手に大技なんか使ったら隙を突かれて一瞬でやられるっての」


「そんなに強いんですか、彼女?」


「ああ、あれは一種の化物だな」


 隣で話を聞いていたユキは嫌そうに顔を顰めた。あまり彼女やら化物やらとは言われたく無い様だ。ただし、もうツッコミを入れる気は無いらしい。


「そうですか…… おっと、試験を続けなければいけませんね。皆さん試験の続きをするので集まって下さい」


 そう言って、また一歩後ろに下がり女性試験官に話を引き継ぐ。


「えぇーと…… 私はミスティア・シュレイ。今回の試験では魔法の試験官を務めさせて貰うわ。早速だけど試験を受ける子は前の方に集まってくれるかしら?」


 その言葉に従ってグループが分かれる。ユキは当然として、ガレルとローネアも参加する様だ。その他で前に出たのは一人だけだった。結果、前に出た人数は4人。意外に少ない数にユキは少なからず驚いた。


「それじゃあ、試験に参加する子は中央に移動しましょうか」


 こうして、ユキの次の試験が始まった。

 ガレル君が苛立っていたのは、ユキの前に自分ガレルが呼ばれたので、グレンが自分より(見た目だけは弱々しい)ユキの方が強いと考えていると思ったからです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ