手を伸ばせば届くって
浮かぶ綿菓子がほしくて、手を伸ばした。
手にしたときの喜びを、口に入れたときの甘く広がる幸福感を想像した。
でも、僕の手は綿菓子には届かなかった。小さな飴玉しか取れなかった。
大人は言うんだ、いつか必ず届くって。
飴玉をなめながら言うんだ。君なら大丈夫だって
浮かぶ綿菓子は少しだけ大きくなって、おいしそうになっていた
僕も少しだけ大きくなった。きっと届くはずだって手を伸ばした。
でも、僕の手は綿菓子には届かなかった。小さな飴玉しか取れなかった。
大人は言うんだ、まだ間に合うって。
溶けた飴玉を探しながら言うんだ。君ならできるって
浮かぶ綿菓子は小さくなっていた。
僕は大きくなった。諦められずに、手を伸ばした。
でも、僕の手は綿菓子には届かなかった。小さな飴玉しか取れなかった。
大人は言うんだ、もう諦めろって。
口をからからにして言うんだ。飴をなめろって。
浮かぶ綿菓子はもう見えなくなった。
僕は大人になった。転がる飴玉が、おいしいと思うようになった。
たまに、綿菓子を食べている人を見る。満足そうな顔をしていた。
羨ましいなと思いながら、僕は飴玉を拾う。