いつもの朝
朝です。おじいちゃまがおこっています。いつもどおり変わらない朝です。 パパがまたいつもとおなじことでおこられています。
ママにおねがいせずに、かってにパパがじぶんでかってきてしまったネクタイのしゅみのわるさについて(おじいちゃまに言わせると安っぽくてげひんながら)、おきてからしょくたくに来るまでのじかんのおそさ(おじいちゃまに言わせるとじぶんより早くおきるのが目下のものとして当たり前のこと)、そしてほのかにはよく分からないけど、おしごとのことについて。
けさもパパは「おはようございます」と、「すみません」しかはなしていません。ママはいつもどおり、しらんぷりで朝ごはんを食べています。ようやくおじいちゃまがおこるのを止めると、これもまだほのかにはよく分からないけど、おしごとのうちあわせ、というのが始まります。これもパパはただうなずくだけで、そしておじいちゃまのおかおが、どんどんまっかになって、またおこりだします。朝からパパはたいへんだなあ。毎朝ほのかがおもうことです。
朝は、せっかくの朝なんだから、もうすこしたのしいといいのに。そうしたらパンもサラダもヨーグルトも、なんばいもきっとおいしいのに。これもほのかがいつも思うことです。
うんてんしゅさんがおむかえに来たので、おじいちゃまがおしごとにでかけて行きました。おじいちゃまとパパは同じかいしゃではたらいているけど、パパはいつも後からおうちを出ます。みんなでおみおくりしたら、パパはすこしだけあんしんしたようなおかおになって、そしてしんぶんを広げます。
でもほのかはしっています。パパはただしんぶんを広げているだけで、ちっともよんでなんかいません。たくさんならんでいる小さな字を見ているみたいにみえるけど、目がどこか遠くを見ているみたいに、ぼぉっとしています。パパのうんてんしゅさんがおむかえに来るまでいつもそうしています。あんまり長いことそうしているので、いちどだけ、ほのかはいたずらしたくなって、うしろから、「わあっ」と言ってパパにだきついてみたことがあります。そうしたらパパは、ほんとうに、ほんとうにびっくりしたみたいでものすごくこまって、なきそうになって、そんなおかおを見ていたら、なんだかほのか、わるいことしちゃったなとおもったから、もうにどと、いたずらはしていません。ただパパがわらってくれるかなぁと思っただけだったんだけど、ちがったみたいだったのであんなことはもうやめておくことにします。だから今はできるだけ、そうっとしています。
パパのうんてんしゅさんがおむかえに来ました。いつもどおりパパがゆっくり立ち上がって、ほのかのあたまをやさしくなでると、行ってきます、と言ってかいしゃへでかけて行きました。パパのときはおじいちゃまのときとちがって、ほのかとおてつだいさんだけでおみおくりします。ママはおへやで、きっといつものゴルフのれんしゅうをしているんだと思います。パパとママはずうっと前からなかがわるいからしかたありません。早いことなかなおりしてほしくて、クリスマスやたなばたの日に、サンタさん、それからおりひめさまとひこぼしさまにおねがいしたけれど、どうやらこれは聞いてくれていないみたいです。早くなかなおりしてくれないと、とてもつらいです。ときどきむねのおくの方が、ぎゅっ、ぎゅっといたくなります。けれどほのかはがまんします。大すきなパパとママにしんぱいかけたくないもの。それに、おじいちゃまにも。
いつになるかはわからないけど、こんどのパパのおやすみの日には、おひるごはんにホットケーキをやいてあげようと思います。なんかいもれんしゅうして、じょうずにやけるようになったから、いつもがんばってるパパに食べさせてあげたいです。きっとパパもよろこんでくれると思います。
さぁ、ほのかも早くがっこうに行くじゅんびをしなくちゃ。