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第8話 運び屋始動!

 許可書をアルトラーゼに貰って運び屋家業を始めて1ヶ月が経った。


 ケントは主にルフトの街を拠点に活動していた。ギルドにある貯まっていた街から町への配達依頼を片付けていった。これによってギルドからは1ヶ月でかなりの信頼を得ていた。

 ケントも稀に街の中での配達もするが、その依頼は見習い冒険者がしているので個人的に頼まれる以外、ギルドから請け負わなかった。それよりも隣街など外に出ての配達は魔物の危険から溜まる一方で、ケントからしたら嬉しい限りであった。

 そして今日も馴染みとなったフロトの冒険者ギルドに顔を出す。


「ミレイさんおはようございます」


「ケントさんおはようございます。今日も配達をお願い出来ますか?」


「はい。任せて下さい。今回はどちらまで配達すればいいですか?」


「ちょっと距離があるのですが、貿易都市ガロンに箱3つ分の荷物をお願いします」


「わかりました。初めての街ですがこの距離だと1日で行けますね。帰りにテスタルにも寄ろうと思いますがそちらへの荷物はありますか?」


 ケントはミレイから出された地図を見ながら距離を大まかに計算しそう告げる。


「相変わらず速いですね。普通はもっと掛かるものですが…。テスタルですか?ちょっと待って下さいね」


 ミレイは受付の奥に引っ込むと手紙の束を持って戻って来た。


「お待たせしました。先日テスタルに配達して貰ったので現在特に荷物はありませんでした。あるのはこの手紙ぐらいで、普段はルフトとテスタルを往復する商人の方にお願いしているのですが、もし寄るのでしたらお願いします」


「わかりました。それでは手紙1束お預かりします」


「はい、お願いします。それでは気をつけて下さいねケントさん」


「はいミレイさん。それでは行ってきます」


「行ってらっしゃいケントさん」


 ケントはミレイとの会話を終え、リングに箱と手紙を収納し冒険者ギルドを出た。

 街の外に出たケントはバイクを取り出し、股がる。エンジンをかける。独特な重低音と振動が身体包む。


「あっ忘れ物!」


 ふっと思い出したケントはリングからサングラスを取り出し掛ける。

 気を取り直しグリップを握り、出発した。





***


 道中は順調だった。たまに冒険者が居たり、商人の馬車が走っていたりと普段と変わりはなかった。


 ただ、魔物が少ないかなっと思うぐらい。


 少ないならいっか。とケントはその考えを捨てて走る事に集中する。

 見晴らしの良い道とはいえ、鋪装されていない道は何があるかわからない。一度穴が有り、転けかけてヒヤッとしたのだ。

 それにたまに音に驚いた小さな動物が草むらから飛び出したりと意外と危ない事が多い。

 ガロンまで半分程の距離を走ったケントは休憩に夜営地に止まる。

 夜営地は綺麗に草刈りをしてあり、商人や冒険者が夜営する場所として道の横によく作られている。

 まだ昼時で、時間も早い為、人は少ない。そこに居たのは2人の男女だった。鎧を身に付けている事から冒険者だとわかる。


 女性の方は鍋を火にかけており、何かを作っていた。男は横になり眠っている。


 ケントは少し離れた場所にバイクを止めるとバイクから降りる。女性と目が合ったので軽く頭を下げる。女性もぺこっと頭を下げて返した。


 ケントはゆっくりと背を伸ばしコキコキッと骨を鳴らす。すると足音がし、そちらを振り向くと先程の女性がこちらに近付いて来ていた。


「あ、あの…。冒険者の方ですか?」


 女性が少しオドオドしながら声を掛けてきた。

 小柄な体型で茶色い髪をショートで切り揃えられている。クリッとした目は彼女を幼く見えさせている。


「いえ、私は商業ギルドの人間で、運び屋をしているケントです。何かお困りですか?」


 ケントはそう返す。女性は商業ギルドの人間と聞いて少し驚いていた。それもそうだろう。普通商業ギルドの人間が護衛も着けないで一人でこんな所に来る事はほぼ無いからだ。


「え、あ、あの…、わた、私は冒険者のユナと申します。あっちで寝ているのは仲間のリーデンです。他に仲間が2人居るのですが、今解毒草を探しに行ってます。そ、それでなんですが、もし解毒草か解毒薬があれば譲って貰えないでしょうか?あっ!お礼はきちんとします」


「解毒薬…ですか?」


「………はい。持って来てはいたのですが、全て使いきってしまいまして…」


 ユナは肩を落とし落ち込む。

 ケントは考えていた。


(解毒薬か解毒草かぁ。そういえば、魔物が居るんだから毒も身近な物なのかもな。襲われる事が無かったから気にして無かったなぁ。

 それにしても毒かぁ。どんな毒なんだ?)


「えっとユナさん。リーデンさんはどんな症状なんですか?」


「ウツボプラントの毒で、高熱と幻覚が特徴です」


「う〜〜ん。幻覚はわからないけど、とりあえずこの薬を飲ませてみて下さい」


 ケントは元の世界の薬を一つ取り出しユナに渡した。この薬はケントの世界では普通に流通している薬なのだが、その効果はまさに万能薬。風邪や食中毒など幅広く使える優れもの。


「ありがとうございます。すぐ飲ませてきます」


 ユナは凄い勢いで頭を下げ、リーデンの元へ走って行く。彼女は迷わず薬を飲ませた。疑わないユナを心配になるが、少し微笑ましくなったケントだった。


 数分経つとリーデンはゆっくり身体を起こした。ユナは喜びのあまり泣いていた。ケントはそれを見てリーデンは大丈夫だと確信した。

 ケントは静かにバイクに股がりその場を後にした。







「う、う〜〜ん。あれ、姉さん」


「リーデン!よかった!!本当によかった!!」


 ユナは泣いた。ウツボプラントの毒は解毒に時間が掛かれば掛かるだけ危険な毒であった。

 数日は高熱だけなのだが、幻覚の症状が出ると危険だ。突然仲間に襲いかかり犯罪奴隷に落ちる者が後を絶えないのだ。

 例え毒のせいとはいえ、被害者が出れば犯罪だ。


「あ!ケントさん」


 ユナはケントを思い出し顔を向けるが、既にケントは居なかった。


「どうしたの姉さん?」


「えっ?うんちょっと、解毒薬をくれた方が居なくなってて…」


「そうなんだ。その人名前は?」


「名前?ケントさん………そういえば商業ギルドで運び屋?をやってるって言ってた……かも」


「ならガロンに着いたら探してみようよ。そこまでわかってるなら見つかるさ。僕もお礼が言いたいし」


「うん。そうだね」


 ユナはケントにまた会いたいと思うのだった。


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