第5話
ケントはテスタルの街に近付くとアクセルを緩め、スピードを落としながら進んだ。
街の門は夜間は閉まっているが朝日が昇ると共に開かれる。門番が常に2〜4人待機しており、特に街の出入りに口出しはしない。これはどこの街でも同様で、魔物や怪しい者で無ければ止められない。
しかし、
「うおっ!そこの者。と、止まれ!!」
見事にケントは止められた。
***
「こ、こんにちは」
ケントは門の横に案内され、バイクから降りて横に立つと、とりあえず挨拶をした。
「お、おう。すまんが質問に答えてくれるか」
門番の鎧を着た男がそう言った。
「はい。構いませんが、先に報告があるのですがよろしいですか?」
「なんだ?」
「街に来る途中で魔物に襲われている馬車を見掛けました。距離は6Kmぐらい先でした。冒険者の方が見た限りでは4名、魔物は犬型が1体でした。魔物の特長として腕が6本ありました」
「それはワイリードッグだな。4人居たなら大丈夫だろうが了解した。報告感謝する」
「いえいえ、それでは急ぎますので失礼します」
ケントは報告を済ませたので街に入る為にバイクに手を伸ばす。
「いや、まだこちらの質問が終わっていない。もうしばらく付き合って貰おう」
ケントは誤魔化せなかった事に肩を落としながら伸ばしていた腕を戻した。
「では率直に聞くが、お前が乗っていたあれはなんだ?馬なのかそれとも、魔物か?」
男はバイクを指さした。ケントは一度バイクを見て口を開いた。
「あれはバイクです。馬や魔物では無く、機械です。馬みたいな乗り物と考えて頂ければ分かりやすいかと」
「なるほど…バイクか。魔物でないならいい。次だ、何の目的でテスタルへ来た?」
「運び屋、えっと物を運ぶ事専門の仕事を始めようと思いまして、フロトの商業ギルドに申請したところ、こちらの商業ギルドまで手紙を届ければ認めると言われテスタルまで来ました。なので目的は商業ギルドに届け物を届けるためです」
「ふむ、なるほど。最後に名前を聞いていいか?」
「えぇ、私はケント・ラグナスと言います。仕事が始まりましたら度々来ると思いますのでよろしくお願いします」
「お、おぉ。いやに礼儀正しいな。もう質問は終わりだ。お前は問題無さそうだ。ようこそ、テスタルへ」
ケントの挨拶に男はたじろぐが、すぐに元の顔に戻りケントの街入りを歓迎してくれた。
「ありがとうございます」
ケントは街に入る許可を貰ったのでバイクに股がりノロノロとしたスピードだが無事テスタルに入ったのだった。