第4話
フロトの街を出て街道を進むケント。道は土を固めて平らに整地されているだけで、稀に大きめの石を踏み、その微かな衝撃を握るグリップから感じていた。
馬車の荷台に乗せて貰った時はかなりの振動でお尻が痛かったのはいい思い出だろう。
ケントのバイクは元の世界でもかなりのハイスペックな代物だ。その最たる物はエンジンのLCSだが、衝撃吸収のスプリングや座席クッションも見過ごせないレベルの物なのだ。
故にケントはこんな道でも腰や尻が痛くならずにバイクで走れている。
クッション製などはさておき、見慣れないバイクで馬よりも速く走っているとやはり珍しさからか、冒険者や商人に凄い顔で見られる。
数人の冒険者は戦闘体勢を取り、武器を構えた者達もいたぐらいだ。
魔物に関しては逃げるモノや追いかけて来るモノもいる。しかし、追い付けるはずも無く途中で諦め帰って行く。
テスタルの街が見えてきた所で一台の馬車と数人の人が道の半分を塞いでいた。
その人達の近くには一匹の犬(?)がいた。犬というには大きく、そして脚が6本あったのだ。
魔物
ケントも数種類の魔物は見たがこの犬型の魔物はまだ見たことが無かった。
護衛を依頼されたと思われる冒険者達は4人。対峙する魔物との距離は5m程で、ケントはどう通り抜けるか考える。道の両側は草むらで通れなくはないが穴や人が隠れている可能性がある。
倒すまで待つのも考えたがいつまで掛かるかわからないので却下。ならば街に行って助けを呼んだ方がいいはずだ。
ならば…真ん中を突っ切るのが速い。そう決意したケントはアクセルを思いっきり捻る。
エンジンの回転数は勢いよく上がっていき、それに伴いぐんぐん加速していく。
冒険者と魔物の間を通り抜けるその時、冒険者の意識がケントに向いたのに気がついた魔物が飛び出した。
魔物もケントに気がついてはいたが目の前の獲物…冒険者に食らいつこうとしたのだ。しかし結果は…
「あっ!!」
ドン!!
飛び出した魔物はケントのバイクとぶつかった。その勢いはかなりのもので魔物は見事なまでに吹き飛んだ。
数m飛んだ魔物はさらにゴロゴロと地面を転がり、止まった時は虫の息だった。
「ごめ〜〜〜〜ん」
ケントは冒険者にそう叫びながら通過した。冒険者達はぽかーんとした表情をしたが、リーダーと思わしき男はすぐに立て直し魔物に剣を突き立ててトドメをさした。
「なんだ、今のは…」
冒険者の男は既に小さくなったケントに目を向けてつぶやいた。
「カイルさ〜ん!」
後ろから仲間の冒険者が近寄って来たのに気付きカイルと呼ばれた男は魔物に刺した剣を抜く。
「もう大丈夫だ。俺達もテスタルに向かうぞ。まず周りの確認しろ」
「はい!」
カイルはもう一度ケントの方を向く。その道の先はテスタルしかない。
カイルの口元がにやける。
「ソロの冒険者か……。面白い」
「カイルさ〜ん!準備出来ました〜〜〜」
「おう!出発だ」