第1話
久しぶりの小説です。
最近は書いてはボツ、書いてはボツばかりでしたが、やってしまえ!!といった感じでUPしました(*_*)
仕事の終わった夜にちまちま書くので更新は不定期ですが、頑張りたいです。
「お届けものです。……ではこちらに受け取りのサインをお願いします。………はい、ありがとうございました」
荷物を渡し終えて自身の相棒であるバイクに股がる。
「次は……とりあえず隣街にでも行ってみるかな」
サングラスを掛けてグリップを握る。重低音が辺りに響くとバイクは走り出した。
***
風になびく長めの黒髪。黒いサングラスに隠れた茶色の瞳。黒のシャツに襟を立てた赤のジャケットを羽織り、黒のズボンを履いた青年【ケント・ラグナス】は街道をバイクで走っていた。
ケントの乗るバイクは特別製で、タイヤが前に2つで後ろに1つの計3つある。その為二輪バイクよりも安定性があり、舗装されていない道でも転倒する事はほぼない。全長3mある黒いフォルムは特性の合金で傷や錆に強い。
そして燃料はLCSと呼ばれるものが使われている。LCSは光の移動速度、秒速29万9792.458kmをコアと呼ばれる部分で運動エネルギーに変換するシステムで、化学者兼発明家のケントの父親と母親が造り上げたシステムだ。
そのシステムを組み込んだバイクは例え薄暗くても少しの光さえあればいくらでも走ることが出来る夢のバイクだ。
バイクよりも凄いのがケントの両手首に付いているリング、【ストレージリング】だ。
『全ての物質はデータ化出来る』
そう言ったケントの父親は物をデータに変えて収納する物を造り上げた。収納された物はデータとして記録され、自由に出し入れする事が出来るのだ。
これは収納した物は収納した時から時間が止まる。よって生物は収納出来るが、収納してはいけないのだ。なぜなら、いまだに魂の解析は終わっておらず生きた生物を収納し出すと魂の無い、動かぬモノになってしまうからだ。
そんなオーバーテクノロジーを持つケントはストレージリングを利用した宅配の仕事をしている。
そもそもケントはこの世界の産まれでは無い。ケントが産まれたのは化学のかなり進んだ世界だった。反重力装置で車が空を飛び、月や火星にも人類が移住している世界だった。
しかし、ある日学校に向かうケント達学生が乗った列車が事故にあった。原因はテロによるものだったらしく、死傷者行方不明者総勢100人を超す大事故だった。そしてケントは行方不明者の一人だ。
テロは重力爆弾が使用され、小型のブラックホールを一時的に作る物で、ケントは運が良かったのかこの世界に繋がったホワイトホールによって吐き出されたのだ。
吐き出されたケントの周りには他に人はおらず、ケントは一人でこの世界を生きていく事になったのだ。
救いはリングの中に両親の作った試作品や非常用(早弁やおやつの為)に入れていた食料などがあった事だ。ちなみにバイクもリングの中にあった。
始めの1週間は助けを期待したが、両親の腕を持っても異世界移動は実現していなかったのでケントは助けは無いものと考え、この世界で生きる事を決めた。
この世界はあまり化学が進んでいなかった。その原因は【魔法】だった。この世界の住人は産まれつき魔力を持っているのだ。量は個人差があり魔法が使え無い者も多いそうだ。それでも3割近い人間が魔法を使えるらしい。
ケントはこの世界の人間で無いゆえに魔力を一切持っていない。
この事は救助を待っていた1週間で調べた。 ケントが吐き出された場所の近くに小さな村があったのだ。その村の人に最初は不信がられたが見慣れない服装から他国の人間と思われ親切にしてくれた。
面倒を見てくれた人はとても喋るのが好きなニセラおじいさんで、街に居る孫の事なども話してくれた。お陰で必要な情報は大体入手出来たのだ。
魔力の有無は村にある魔力計と呼ばれる水晶で測って貰った。
魔力無しと判った時はおじいさんも驚いていたが、すぐにケントを慰めていた。
「魔力が無くても生きていけるから落ち込むな。わしも魔力値が8じゃから無いのも一緒じゃ。まぁ魔力があって困りはせんが無くても困らんわい。
まぁ魔法使いはベッピンが多いらしいからのぅ、わしも魔法が使えたらお近づきになりたかったんじゃが、魔力値はどうにもならんからのぉ…。
じゃが無くても冒険者になればお近づきになれるぞ!同じパーティーを組んで依頼をこなしていくにつれて信頼度も上がり、いつしか恋愛に発展するんじゃ!!」
熱く語るニセラおじいさんの口から出た冒険者という言葉。冒険者は依頼を受けて魔物や動物を狩ったり、遺跡の探索や素材の採取をする人達の事だ。
危険だが収入も多く、有名になれば貴族並みに発言力を持つ事が出来、手続きをすれば誰でもなれる事から冒険者になる者は多いのだ。
そんな日々を過ごしたケントはついに街に向かう事にした。行くまでの間、ケントはおじいさんの畑仕事を手伝った。そしてついに1週間が過ぎ、街と村を行き来する商人が村に来た。
商人が来て2日後街に帰る馬車に乗せてもらい街へと向かうのだった。