分岐点(改訂)
なぜこんな目に遭わなくてはならなかったのか。混乱した頭で座り込むうちに差し伸べられる手。
(この人は優しいの?下心があるの?それとも私が惨めすぎて哀れになった?)
その手に縋ってしまうほど弱くはない。けど、拒絶してしまうほど強くもなくて。誘うてのひらをただただ呆然と見つめる。
(ああ!この人は私をどうしたいのだろう。
私はこの人をどうしたいのだろう。)
その町は港に近く、酒場とうらぶれた宿、白粉を匂わせる女とこじきのような人々の吹き溜まりだった。
ある少女がいた。
少女は独りきり、廃退的な町で生きてきた。
男に媚を売るでもなくゴミを漁るでもなく。
その日限りの口をまかない、独りきり、毎日を淡々と過ぎ去るままにしていた。
そんな彼女を心なき男どもが蹂躙する。
そんな、よくある、この町では日常茶飯事とも言える、そんなこと。
通りでは騒がしく日常が過ぎ去り、少女の叫びは無関心に呑み込まれていった。
ある少女がいた。
少女は独りきり、ぼんやりといつもと代わり映えのしない町を眺める。
淡々と過ぎ去る時間と人々を流れるさまをひたすらに。
世界の理不尽さなんて今更嘆くことに意味はないことを知っていたけれども今は少し、混乱していた。
ふいに影が射す。
逆光で顔が見えないけれど、一昨日の人だと少女は確信する。
なにも言わずに差し出されたてのひらはとても温かそうで、一昨日よりボロボロになった少女を惑わせる。
もしかしたら違う世界へ、もっと幸せな世界へ…?
酸素を求める金魚のようにパクパク開閉する口は音を発することはなく、いつの間にか耳がいたいほどの静寂のなか、少女は手を伸ばしていた。もしかしたら違う世界へ、もっと幸せな世界へ…?
酸素を求める金魚のようにパクパク開閉する口は音を発することはなく、いつの間にか耳がいたいほどの静寂のなか、伸ばしたてのひらは黒に包まれた。