↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

SF作家のアキバ事件簿271 ミユリのブログ シャンパンは未だ冷えている

作者: ヘンリィ
掲載日:2026/09/20

ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!

異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!


秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。

ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。


ヲトナのジュブナイル第271話「ミユリのブログ シャンパンは未だ冷えている」。さて、スーパーヒロインと腐女子の百合婚。ハネムーン編。


新婚旅行に繰り出した新郎新婦。ところが、別の世界線にいるはずの元カレが追いかけて来て、激しい愛で新婦を翻弄。世界線の存亡を賭けた戦いに…


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 ミユリのブログ


"素敵な結婚式だったわ。


「私は、ジェシを夫とします」

「私は、エアリを妻とします」


2人は誓い、指輪を交換した。


拍手。

祝福。

乾杯。


誰もが、これで物語は終わりだと思った。


ところが。


一転して、暗い闇の中。

花嫁は、元カレに許しを乞う。


「結婚を認めてくれる?」

「認めない」


元カレの声。


「君は、永久に俺のものだ」


闇の中で、2人の影が重なる。


「永久に……」


熱烈な抱擁。

そしてキス。


いつしか、妖精メイドのエアリは

背中の翅を大きく広げるの。


その翅は、青白い光を放つ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


御屋敷(メイドカフェ)


「"母なる世界線"で

 私がヲタッキーズのみんなにしたみたいに……」


エアリの声が震える。


「私は、ジェシを裏切るかもしれないわ」

「そんなに深刻になる必要はないわ」


同僚メイドのマリレは、優しく言う。


「罪悪感があるから、悪い夢を見ているだけだよ」

「でも……」


エアリは、目を伏せる。


「私は、自分が"母なる世界線"で

 何をしたのか、覚えていないの」


沈黙。


「覚えているのは、1つだけ」

「何を?」

「キバァと通じて、大切な人たちを裏切った。

 その結果、みんなが殺されたってコトょ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


そして、結婚式の日。

なんと花嫁は、キバァと踊ったの。


「これは幻覚よ」


エアリがつぶやく。

キバァは、笑う。


「いや」


1歩、離れる。


「私は、この世界線に存在する」


そして、振り返る。


「待っている」


キバァは、歩き去る。

人混みに消える。


その直後だ。


「花嫁と踊っても良いかな?」


仲間のカレルが声をかける。

エアリは、振り返る。


「カレル」

「ん?」

「今、ここにいた男を見た?」

「うん」


カレルは、何でもないように答えた。


「誰?」


エアリは、答えない。

ただ、消えた男のいた場所を見つめている。


「……いるはずのない男よ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その車には"JUST MARRIED"と大描きされている。

僕はトランクを開け、ゴルフバッグを押し込んでいる。


新婚旅行でゴルフ。


その発想が理解不能だ。結婚したばかりの2人が、なぜ芝生の上で小さな球を追いかけるのか。


しかも、行き先は熱海である。


そこへ、未だタキシード姿のカレルがやって来る。


「やあ。何も問題はないか?」

「もちろん」


僕は、ゴルフバッグをさらに奥へ推し込む。


「ホントに?」

「ああ。なんで?」

「いや、別に」


カレルは、御屋敷の方を見る。


「エアリは、まだ中か?」

「ああ。バックヤードで着替えてる」


そのときマリレが出て来る。

後ろからミユリさんが、洗い物の食器を手渡す。


「なんで私が?」

「早くしてね」


ミユリさんは、未だ付き添い用のパーティドレスだ。

どうやら、かなり気に入っているらしい。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


アキバ。御屋敷(メイドカフェ)のバックヤード。


着替えを終えたエアリが出てくる。

カレルが待ち構えている。


「未だテリィたんたちに言ってないのか?」


エアリは、平然としている。


「あなたが代わりに言ってよ」

「何を?」

「私たちが出発した後で」


エアリは、カレルを指差す。


時空漂流者(レーンウォーカー)ハンターが現れたんでしょ?」

「だから、待てって」

「私、これからハネムーンなのよ?」


エアリは、ウェディングバッグを肩に掛ける。


「それどころじゃないわ」

「確かに現実から逃げるのは楽だけど

 逃げちゃダメだ❌3」


エアリは、少し考える。

そして、あっさり答える。


「逃げるわ」

「え?」


エアリは、そのまま歩き出す。


「エアリ!」


振り返らない。


「私は今、新婚旅行中なの!」


カレルは天を仰ぐ。


「熱海に?」

「熱海に!」


即答だ。


そこへマリレが、山のような食器を抱えて入ってくる。


「カレル。これ、洗っといて」

「え?」

「みんなに黙って行くなんて……」

「あら。何のこと?」

「いや、だから」


マリレは、食器を置く。


「さあ、奥さん」


エアリに声を掛ける。


「急がないと飛行艇に乗り遅れるわよ」


そこに(百合の)新郎のジョシが割って入る。


「そうね」


エアリは僕のところへ駆け寄り、ぎゅっとハグ。

元セフレ。今は花嫁のハグ。悪くない。


「熱海を楽しんで」

「お幸せに」

「寂しいわ」

「たった1週間よ」


みんなの見送りの言葉にエアリが笑う。


「すぐ帰ってくるわ」

「おっと。それは、どうかな」


カレルが小声でつぶやく。

マデラは、深いため息をつく。


「とうとう行っちゃったわね」


僕は、マデラの肩に腕を回す。


「ああ」


僕たちは、去っていく新郎新婦を見送る。

遠ざかる"JUST MARRIED"の文字。


カレルがぽつりと言う。


「……時空漂流者ハンターから逃げて、熱海か」


僕は、うなずく。


「新婚旅行だからね」

「なるほど」


カレルは納得したような、していないような顔。


「じゃあ、熱海なら仕方ないな」


僕たちは、黙って車を見送る。


世界線がどうとか。

異次元がどうとか。

"母なる世界線"がどうとか。


そんなことは、とりあえず全部忘れて。

新婚旅行といえば、熱海なのだ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


アキバ。御屋敷のバックヤード。


カレルは、マリレの腕をつかみ、

ずるずると引っ張り込む。


「ちょっと!」

「いいから来て!」

「何なの?」


カレルは、扉を閉め、周囲を確認する。


右。

左。

誰もいない。


「マリレからは、何も聞いてないのか?」

「何を?」

「だから……」


カレルが声を落とす。


「キバァだよ」

「キバァ?」

「そう」

「……ああ」


マリレは、特に驚かない。


「それで?」

「それでって……!」


そこへ、たまたま僕が通りかかる。


「あ。テリィたん」


マリレが僕を呼ぶ。


「カレルが話があるみたいなの。さ、話してみて」

「僕?」


そのままバックヤードに引きずり込まれる。

僕たちを前に、捜査会議のような顔のカレル。


「いいか。落ち着いて聞いてくれ」

「うん」

「キバァが……」


大きく深呼吸。


「……披露宴に来てた」

「マジか?」

「YES!」


なぜかカレルは、意味不明のドヤ顔だ。


「エアリと踊ってた」

「いつ?」

「だから!」


カレルが両手を広げる。


「ダンスタイムだよ!」

「ダンスタイム……」

「そう!山田省吾がバラードを歌って

 確か"丘の中腹の愛"だ。みんなが踊って……

 その中にキバァが普通に混じってた!」

「普通に?」

「普通に!」

「踊ってたの?」

「1曲!」


カレルは、指を1本立てる。


「エアリと1曲、丸々!」

「そっちか?」


のんびりうなずくマリレ。

カレルの顔が引きつる。


「そっちこっちの問題じゃないだろ!」

「何が?」

「"母なる世界線"から元カレが来ただンだょ?」

「そうね」

「しかもエアリと踊ってたンだぞ!」

「披露宴だからね」

「披露宴だからって」


カレルは、言葉を失う。

僕が聞く。


「で、どんな奴だった?」

「普通の人間に見えた」

「服装は?」

「普通」

「顔は?」

「普通」

「踊りは?」

「……普通」


カレルは、頭を抱える。


「全部普通だったんだよ!」

「じゃあ、何が問題なの?」

「存在してることだよ!」


なるほど。

確かに問題だ。


「何しに"母なる世界線"の元カレが来たんだ?

 ってか、どーやって来たんだろう。

 万世橋の"リアルの裂け目"は木っ端微塵だし」


カレルは、即答。


「知らないよ!」

「……」

「僕が知るわけないだろ!」

「じゃあ、どうして僕たちを集めたの?」

「それを今から考えるんだよ!」


カレルが腕を組む。


マリレが僕を見る。

僕もマリレを見る。


カレルは、僕たちを見る。


「何だよ、その顔」

「いや」


僕は、言う。


「もう新婚旅行に出発したけど」

「……」

「熱海に」

「……熱海?」


カレルの顔から、みるみる力が抜けていく。


「時空漂流者ハンターが現れたのに?」

「うん」

「花嫁が何も言わず?」

「うん」

「新郎と一緒に?」

「うん」

「熱海へ?」

「うん」


カレルは、しばらく黙っている。


「……」


そして、天を仰ぐ。


「僕だけ、話についていけてないのかな」


マリレが笑う。


「たぶん」

「そんなバカな!」


カレルは、頭を抱える。


「僕は、ちゃんと警告しようとしてルンだぞ!」

「ありがとう」


僕は、肩を叩く。


「助かるよ」

「マジで言ってる?」

「ああ」

「じゃあ、どうする?」


僕は、少し考える。


「とりあえず」


カレルを見る。


「熱海を楽しんでもらおう」

「そうじゃない!」


バックヤードに、カレルの悲鳴が響く。


第2章 キバァを殺せ


秋葉原。御屋敷のバックヤード。

披露宴の動画を、みんなで見ている。


「……あぁ、ここだ」


カレルが動画を止める。


画面は、ダンスタイムだ。

エアリの隣に、見知らぬ男が立っている。


ミユリさん、スピア、マリレ、僕。

順番に画面を覗き込む。


なぜかカレルだけは、未だタキシード姿だ。

それが彼の緊張感を妙に増幅させている。


マリレが画面を指差す。


「こいつがキバァ?」

「うん」


スピアがつぶやく。


「イケメンだわ」


視線の十字砲火を浴びるスピア。


「……」


口をつぐむ。

カレルが咳払いをする。


「問題は、顔じゃない」

「顔も問題だと思うけど」


マリレが言う。


「一体、何者なんだ?」


僕は、画面を見つめる。


「私たちを皆殺しにした男です」


ミユリさんが静かに言う。

カレルは、僕を見る。


「テリィたんもか?」

「たぶん」

「たぶん?」

「よく覚えてないんだ。実は」


僕は、頭を掻く。


「"母なる世界線"の秋葉原で

 キバァはヲタクの王様の座を狙っていたらしい」

「ヲタクの王様?」


カレルは、眉をひそめる。


「何だソレ?」

「そういう世界線なんだよ」


ミユリさんが続ける。


「で、キバァと恋に落ちたエアリは、キバァの愛を得るために私たちを裏切ったの」


画面の中のエアリは、幸せ一杯に微笑んでいる。


「ワナにハメられた私たちは、最後はエアリと一緒に虐殺されたわ。皆殺しよ」

「重いな」


スピアが言う。


「うん。話だけ聞くと重いわ」


ミユリさんの話は続く。


「でも、そのあとがもっとややこしいの」

「え。まだあるの?」


カレルは、早くも集中力が切れている。


「私たちの遺伝物質は

 この世界線の腐女子のDNAと結合されて」

「ちょっと待って」


カレルは、手を上げる。


「ミユリ姉様たちは、死んだんだよね?」

「そう」

「なのに、また生まれた?」

「そう」


カレルは、少し黙り、それから口を開く。


「……俺は?」

「何が?」

「"母なる世界線"とやらで俺はどうなってる?」

「知らない」

「知らないの?」

「たぶん、チョイ役」

「チョイ役かょ……」


カレルの顔から、少しだけ誇りが消える。


「俺も王様を狙ってた可能性は?」

「ないと思う」

「根拠は?」

「なんとなく」

「なんとなくかよ!」


バックヤードに、ようやく笑いが起きる。

けれど、ミユリさんだけ笑わない。


動画の中のキバァを見つめている。


「キバァは、何しに来たのかしら?」


誰も答えない。

僕が言う。


「ハネムーンじゃないことだけは確かだね」

「熱海だけどね」


マリレが付け加える。

そこで、また沈黙する。


ミユリさんが僕を見る。


「どうしますか?テリィ様」


僕は、腕を組む。


考える。

かなり考える。


そして。


「待とう」

「え?待つ?」

「うん」


僕の得意技だ。

先送り。


問題を解決するのではなく

問題の方が忘れてくれるのを待つ。


しかし今回は、マリレが首を振る。


「それでエアリが危険な目に遭ったら?」

「……」


僕は、答えられない。

画面の中のキバァは、グラスを高く掲げている。


「今の幸せに乾杯。

 そして来るべき、未来の幸せに乾杯」


その声だけが、妙に鮮明に聞こえる。

エアリは今、熱海にいる。


気まずい沈黙を破るのはマリレだ。


「熱海へ逝きましょう」


カレルが立ち上がる。


「よし!」


スピアも立ち上がる。


「マリレ、行くの?」

「行く」


僕を見る。僕は問う。


「何しに?」


マリレは、少し考える。


「キバァを」


そこで、言葉を止める。

そして、言う。


「殺す」


空気が変わる。


マリレは黙って手をかざす。


テーブルの上に置かれていた航空券の紙が

ふっと浮き上がる。


紙の表面が波打つ。


分子構造が組み替えられ

印字が変わっていく。


「熱海行き、2名」


カレルが覗き込む。


「4名?」


マリレが答える。


「"覚醒"したヒロインonly。

 増やしたければ自分で分子を組み替えて」

「……そういう問題か?」


僕は"覚醒"してないし、ヒロインでもないが

出来上がった航空券を手に取る。


エアリを、ほっとくわけにはいかない。


キバァが何者か。なぜこの世界線に現れたのか。

"母なる世界線"でエアリと何があったのか。


その答えを探すために

究極の目的はひとつ。キバァを殺す。


少なくとも、そのときの僕たちは、

そう思っている。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


熱海ヒルズ。


海を見下ろす温泉ホテルタワー群のエントランス。

"JUST MARRIED"の文字が踊る車が滑り込む。


ドアが開く。ジェシが降りる。

その瞬間、ホテルスタッフが3人駆け寄ってくる。


「お荷物、お預かりいたします」

「ありがとう」


ジェシは、スーツケースを渡す。

その横で、エアリはゆっくりと周囲を見回す。


海。

ヤシの木。

観光客。

温泉まんじゅう。

そして、ゴルフクラブを運ぶボーイ。


エアリの顔が強張った。


「……キバァ?」


男が振り返る。

違う。


観光バスが、その前を横切る。

バスが通り過ぎる。


さっきの男は消え若いハネムーナーが立っている。


「……」


エアリは、目を擦る。


「大丈夫?」


ジェシが後ろから抱きつく。


「きゃっ!」


エアリが悲鳴を上げる。


「どうしたの?」

「……お尻、触ったでしょ」

「私が?」

「あなた以外に誰が触るのよ」


ジェシは、微笑む。


「ごめん。少し疲れてる?」

「……そうかも」

「じゃあ、チェックインしましょ」


ジェシは、エアリの手を取る。


「早く夫婦らしいことをしよう?」

「……」


エアリが見上げる。

ジェシは、キスをする。


「……ジェシ」

「何?」

「なんでもない」


エアリは、微笑む。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


熱海ヒルズ。プレジデンシャル・スイート。


ジェシは、エアリを抱き上げて入る。

その後ろからボーイがスーツケースを推す。


因みに、2人はメイド服だ。


「こちらでございます」

「ありがとう」


窓の向こうには、熱海の海。

夕陽。エアリが目を輝かせる。


「素敵……」

「貴女の方が素敵よ」

「もう」


ボーイが咳払いする。


「お荷物はこちらでよろしいでしょうか?」

「そうね。thank you」


ジェシは、財布を出す。


「これで良いよ」


チップを渡す。

ボーイが1礼して出ていく。


ドアが閉まる。

振り返るジェシ。


「さて」


エアリを、また抱き上げる。


「また?」

「新婚旅行だから」

「さっきも聞いたわ」


キス。エアリをベッドに座らせる。

ジェシは、隣に腰を下ろす。


エアリの顔を覗き込む。


「何?」

「別に」

「どうして?」

「いや……」


ジェシは、少し考える。


「疲れてる?」

「大丈夫よ。ホントに」

「そう?」

「ええ」


エアリは、少し笑う。


「私は今、最高に幸せよ」


ジェシは、安心したようにうなずく。


「じゃあ、少し休も?」

「え?」

「だって、結婚したんだから。

 これからは、ずっと一緒にいられるわ」


その言葉に、エアリは静かにうなずく。


「そうね」


窓の外。

熱海の夜景が少しずつ灯り始めている。


「焦ることなんかないわ」


エアリが言う。


「何でも相談して、2人でやりましょう」


ジェシが微笑む。


「そうね」

「2人に隠し事はナシ」

「もちろん」

「私は、必ず貴女を幸せにするわ」


ジェシは、エアリの手を握る。


「私は、将来有望な弁護士なのよ」

「……それが何?」

「契約は守る」


エアリが吹き出す。


「結婚を契約書みたいに言わないでよ」

「あら。私は本気よ」


ジェシは真顔だ。


有望なメイド弁護士。

美しいメイド花嫁。

豪華なプレジデンシャル・スイート。

温泉。

夕陽の海。

そして、完璧な新婚旅行。


この結婚には、どうやら何も問題が存在しない。

エアリの脳内にいる異次元の元カレを除けば。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


アキバの人間交差点"マチガイダ・サンドウィッチズ"。メイドたちが休憩によく利用する。


スピアはカウンター席で"ネバードッグ"を頬張りながら、のんびりスマホを眺めている。


結婚式は終了。

エアリとジェシは熱海へ出発。


ジェシはメイド弁護士。

エアリもメイド。


そして、2人は百合。

アキバ的に実にめでたい。


「スピア」


YUI店長が声を掛ける。


「え」


入口を見るとマデラが立っている。

マデラは、秋葉原メイド協会の会長だ。


「マデラじゃん」


YUI店長が笑う。


「親代わりだったんだって?お疲れ様」


マデラは、小さく手を上げる。


「どうも」


そして、カウンターの端に腰を下ろす。


「メニュー持ってこようか?」

「いや、いいの」


マデラは、店内を見回す。


いつもの秋葉原。

いつものメイド。

いつものサンドイッチ。


それを確かめるように。


「ちょっと、話を聞いてもらえる?」


YUI店長の表情が変わる。


「いいよ。今かい?」

「できれば……別の場所で」

「わかった。奥で話そう」


マデラが立ち上がる。


「悪いわね」


2人は、店の奥へ消える。


スピアは、ネバードッグを手にしたまま

その背中を見送る。


「……何の話かしら?」


聞こえるはずもない。

店の奥から、低い声が微かに響く。


「披露宴に、男が現れたの」


スピアの手が止まる。


「男?」


聞き間違いかもしれない。

マデラの声が続く。


「エアリの……元カレらしいの」


スピアは、椅子から少し身を乗り出す。


「キバァ……」


その名前が、店の空気に落ちる。

YUI店長の声が、急に聞こえなくなる。


代わりに、マデラが何かを確認するように言う。


「やっぱり、戻ってきたのね」


スピアは、目を見開く。


……戻ってきた?やっぱり?


マデラは、知っている。

その瞬間、スピアは思う。


熱海へ行ったエアリたちは、未だ知らない。

アキバに未だ誰も知らない何かが残っている。


そしてマデラは、その何かを知っている。


カウンターで、ネバードッグの具が静かに崩れる。

スピアは、それを見つめる。


「……食べにくいな」


秋葉原では、結婚式が終わったあとも、

物語だけが終わっていない。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


熱海ヒルズ。プレジデンシャル・スイート。

ディスプレイには、ゴルフ中継が流れている。


「これは、良いショットです。

 グリーンに乗せました。ピンまであとわずか」


ジェシが振り向く。

ベッドでは、エアリがメイド服のまま眠っている。


「お見事!現在、4ホールを残して8位のフィツ。

 ここから追い上げ開始です」


ジェシは、ディスプレイの横に置かれた

ホテルの案内冊子を手に取る。


ゴルフ。

温泉。

エステ。

そして……


サウナ。


ジェシの目が輝く。


「いいね」


新婚旅行。

温泉。

サウナ。


「1時間だけ行ってこよう」


ベッドのエアリを見る。


「愛しい奥様。少々お待ちください」


もちろん、返事はない。

ジェシは、満足そうにうなずく。


「よし」


なぜか、仕事に行くときの顔でスイートを出る。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


熱海ヒルズ。プレジデンシャル・サウナ。


ジェシは1人、静かに座っている。


汗が流れる。

目を閉じる。


「……最高」


新婚旅行なのに

やっていることは会社員の休日と大差ない。


そこへ、人の気配。ジェシは、目を開ける。

誰もいない。


「……?」


しばらく待つ。

誰も来ない。


「気のせいかしら」


目を閉じる。

すると……


「やあ」

「うわっ!」


目の前に男がいる。

反射的に色々と手で隠す。


水着の上からだが。


「誰!」

「キバァだ」

「……」


ジェシは、男を見つめる。

そして、周囲を見回す。


「ホテルの人?」

「え?違う」

「宿泊客?」

「もちろん、違う」

「じゃあ、どうやって入ったの?」

「時空を超えて」

「……」


ジェシは、少し考える。


「それ、ホテルの規約上

 どういう扱いになるんだろう」

「私は、エアリを迎えに来た」

「それは困るわ」

「彼女は、私のモノだ」


ジェシの顔が変わる。


「それは訂正して」

「何?」

「エアリは、モノじゃない」

「……」

「それに、エアリは私の妻」

「結婚など関係ない」

「関係あるわ」


ジェシは、あくまで論理的で冷静沈着だ。


「婚姻届も出してる」

「私は"母なる世界線"より……」

「世界線は、戸籍の根拠にならない」

「……」

「そもそも、あなたはエアリの現在の意思を

 確認しましたか?」


キバァが黙る。


「してない?」

「し、しかし私は、彼女を愛している」

「質問に答えて」

「……」


ジェシは、汗を拭く。


「弁護士として言わせてもらうけど

 かなり分が悪いよ」

「私は、彼女を取り戻す」

「取り戻すっていう表現もよくない」


ジェシは、指を1本立てる。


「所有権が発生しているように聞こえる」

「……」

「恋愛関係に所有権はないから」

「私は、エアリと……」

「過去の恋人?元カレって奴?」

「そ、そうカモ」

「それなら、なおさらだ」


ジェシは、うなずく。


「元カレには元カレの権利がある」

「権利?」

「ないけど」

「……」

「いや、一般論として」


キバァは、呆然とジェシを見る。

ジェシは、何かを思い出す。


「あ」

「何だ?」

「ここ、サウナだから」

「それが?」

「長話すると脱水になる」


キバァが黙る。

ジェシは、立ち上がる。


「水、飲んだ?」

「……」

「飲んでない?」


ジェシは、備え付けの水を1本取り

キバァに差し出す。


「どうぞ」


キバァは、水を見る。


「私は、お前と水を飲みに来たのではない」

「そう?」


ジェシは、肩をすくめる。


「でも、熱海は熱いから」

「私は……」

「あと、エアリに会いたいなら、本人に聞いて」


キバァがジェシを睨む。


「私は彼女を迎えに来た」

「じゃあ本人に聞きましょう」

「……」

「本人が嫌だと言ったら?」


キバァは、答えない。

ジェシは、微笑む。


「そのときは、帰って」


その瞬間。

キバァの姿が消える。


「……」


ジェシは、しばらく立ち尽くす。


「……変わった人だったわ」


そして、時計を見る。


「しまった」


1時間の予定が、少し過ぎている。


「エアリ、怒ってるかな」


ジェシは、慌ててサウナを飛び出す。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「……!」


エアリが目を覚ます。

ベッドの上だ。


「ジェシ?」


返事がない。


部屋を見回す。

誰もいない。


ベッドサイドテーブルに1枚のメモ。


"愛しい奥様へ。

 今2時半。

 サウナへ行く。

 1時間で戻るわ"


エアリは、時計を見る。


「……」


5時38分。


もう1度、メモを見る。

そして、時計を見る。


「……3時間?」


その瞬間、エアリの顔から笑顔が消える。

披露宴で見た男。


キバァ。

ジェシ。

そして、3時間。


「まさか……」


そのとき、廊下からジェシの声が聞こえる。


「ただいま!」


エアリが振り向く。

ジェシが満面の笑顔で入ってくる。


「いやあ、サウナ最高だった!」


エアリは、絶句する。


「……ジェシ」

「何?」

「3時間よ」

「え?」


ジェシは、時計を見る。


「あ」


少し考えてから

恐ろしく真面目な顔をして答える。


「サウナって、時間を忘れるね」

「……」

「でも、大丈夫」


ジェシは、エアリを抱きしめる。


「ちゃんと戻ってきたから」


エアリは、何も言わない。

ジェシだけが、最高に幸せそうだ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


秋葉原。御屋敷のバックヤード。


メイド服に着替えているミユリさんとスピア。

ミユリさんがロッカーを閉めながら聞く。


「で、YUI店長はなんて?」

「それが……小声でね」

「小声で?」


ミユリさんの手が止まる。


「何を?」


スピアは、声を落とす。


「マデラのこと」

「……」


ミユリさんの眉が上がる。


「絶対、何か企んでるわ」

「怪しいわね」

「でも、私たちには関係ないことカモ」


ミユリさんは、言う。


「……だからこそ、確かめないと」

「ミユリ姉様、何するつもり?」

「ちょっと探りを入れる」

「やめて。待ってょ姉様」


ミユリさんは答えず、ホールへ出て逝く。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


秋葉原。御屋敷のホール。


謹慎中のミユリさんに代わって

メイド長代理を務めるマデラの姿がある。


因みに、壊れたコーヒーマシンを修理中。


「また壊れましたか?」


ミユリさんが近づく。


「あら」


マデラが顔を上げる。


「もう新しいのを買おうかしら」

「YUI店長に何か言われたのですか?」

「え?」


マデラは、部品を置く。


「会計士の件で相談しただけだけど」

「会計士の件?」

「ええ。料金を上げるつもりらしいんだけど

 YUIさんも同じ会計士を使ってるから」

「……」


あまりにも普通だ。

普通すぎる。


「そうですか」


ミユリさんは、うなずく。


「披露宴の料理のクレームかと思いました」

「披露宴の料理?」

「ほら。マデラがYUIさんに怒られてたから」

「まさか」


マデラは、笑う。


「私、料理について怒られるほど

 腕は悪くないわよ」

「そうですね」

「むしろ褒められたわ」

「そうですか」


ミユリさんは、笑顔を作る。

完全にかわされてる。


マデラは何事もなかったように

コーヒーマシンをいじりだす。


「安心したわ」

「何が?」

「いえ、別に」


ミユリさんはペーパーナプキンを1枚取る。

そして手早く折り始める。


折る。

折る。

折る。


なぜか異様に丁寧だ。

マデラが横目で見る。


「ずいぶん綺麗に折るのね」

「手が暇だから」

「そう」


ミユリさんは、顔を上げない。


「……マデラ」

「何?」

「キバァって知ってますか?」


マデラの手が、ほんの一瞬だけ止まる。


「プラチナカードの御主人様?」

「知らない?」

「知らないわね」


即答だ。


ミユリさんは、顔を上げる。

マデラもは、笑っている。


2人の視線がぶつかる。


「そう」

「そうよ」

「……」

「……」


ミユリさんは、折り終えたナプキンを

テーブルに置く。


「じゃあ、いいわ」

「何が?」

「何でもない」


マデラは、微笑む。


「それは、よかった」


その笑顔が、逆に怪しい。

そこで、マデラはホールを見回す。


「あ、そうだ」


テーブルを指差す。


「8番テーブルにお水を持っていってくれる?」

「はい」


ミユリさんは、給水器へ向かう。


背中を向ける。

歩き出す。


その瞬間、マデラの笑顔が消える。


ミユリさんの背中をじっと見つめる。

そして、小さくつぶやく。


「……キバァ、ね」


ミユリさんは振り返らない。


けれど……


歩く速度が、ほんの少しだけ落ちる。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


熱海ヒルズ。


温泉ホテルのプレジデンシャル湯上がりカフェ。

浴衣姿のエアリが、店内を見回している。


「あ……」


窓際のテーブルにジェシを見つける。


「ジェシ!」


エアリが駆け寄る。


「どこに行ってたの?」

「あ、エアリ。ごめん」


ジェシが立ち上がる。

2人は、ごく自然に抱き合う。


「探したのよ」

「今、戻るところだった」

「どこにいたの?」

「ちょっとゴルフをしてたの」

「え。ゴルフ?」


エアリが呆れる。

そのとき、テーブルの向かいから声。


「ご主人のゴルフの腕はプロ級だね」


エアリの動きが止まる。

ゆっくり顔を向ける。


キバァが座っている。


「……」


絶句するエアリ。

ジェシは、何も気づいていない。


「ああ、紹介するよ」


ジェシが嬉しそうに言う。


「ゴルフ場で知り合ったんだ。ラホナさん」

「ラホナ?そんなアホな」

「YES。ゴルフがすごくお上手なのよ」


キバァは、唇の端3mmで笑う。


「貴女のご主人は、本当に良い人だ」


エアリは、キバァを睨む。


「……そうね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ジェシは、すっかり打ち解けている。


「それでね」


ジェシが熱心に話している。


「エアリとの始まりは、私の一目惚れだったのょ」

「へえぇ」


キバァは、エアリを見る。

エアリは、ジェシを見る。


「最初に会った時から、なんとなく分かってた」

「何が?」

「この人と一緒になるって」


ジェシが笑う。

キバァは、うなずく。


「運命だね」

「そう。運命なの」


エアリがジェシの袖を引っ張っる。


「ジェシ」

「ん?」

「そろそろ部屋に戻ろ?」

「まだ話の途中よ」

「……」


キバァが助け船を出すように口を挟む。


「ラホナ。君にも特別な人がいるの?」

「ああ。もちろん」


ジェシは応じる。


「じゃあ、今度4人で食事でもどう?」

「いや……」


キバァは、少し遠くを見る。


「そうしたいんだが、彼女はもういない」


ジェシの顔が曇る。


「もういない?」

「死んだワケじゃない」


キバァは、静かに言う。


「消えたんだ」

「……」


ジェシは、身を乗り出す。

恐ろしく真面目な顔だ。


「それはショックね」

「俺は、今も探している」

「辛いわね」


ホンキで心配するジェシ。

キバァは一瞬、言葉に詰まる。


「……ああ」


そして、エアリを見る。


「だから、こうして旅をしている」


エアリが眉をひそめる。

ジェシは、何も疑わない。


「一体、何があったの?」


エアリが割って入る。


「あんまり聞いては失礼だわ」

「いや、構わないさ」


キバァが言う。


「初めて会った夜のことから話そう」

「そこから?」


呆れるエアリ。

目を輝かせるジェシ。


「ぜひ聞きたいわ」

「ジェシ!」


エアリが止める。

もう遅い。


キバァは、既に遠い目モードだ。


「俺たちは、最初の出会いから惹かれ合った」

「ソレで?」

「だが、種族が敵同士だった」

「なるほど」


ジェシは、真剣に聞いている。


「それでも、俺たちは平和への道を探そうとした」

「なんてロマンチックなの!」


エアリは、頭を抱える。


「そして出会った瞬間、火花が散った」

「おおおっ」

「彼女は、俺の仇だった」

「えええっ」


ジェシは、息を呑み手を握ってる。


「だが俺は、彼女を抱き寄せ――」


エアリが睨む。


「キバァさん、あのね」

「そして、キスをしたんだ」


ジェシの目がさらに輝く。


「hallelujah!」

「ジェシ!」

「いや、だってエアリ。映画みたいじゃないか」


キバァは、話を続ける。


「その瞬間から、身も心も1つになった」

「……」

「相手のためなら、何だってできた」


ジェシは、猛烈に感動している。


「それこそ、真実の愛なのね」


キバァがエアリを見る。


「そうさ。しかし……」


キバァの声が低くなる。


「ある夜、俺は彼女を失った」


一瞬で深刻な顔になるジェシ。

完全に自分に置き換えてる。


とうとう立ち上がる。エアリ。


「OK。もう良いわ。ヤメて」

「エアリ?」

「なんだか、信じられないような話ね」


キバァは、エアリを見つめる。


「だが、事実だ」


2人の視線は、真っ向からぶつかる。


エアリは、睨む。

キバァは、微笑む。

ジェシは……感動する。


「ラホナさん」


キバァが振り向く。


「うん?」

「もし彼女が見つかったら……」


ジェシの全力の笑顔。


「ちゃんと幸せにしてあげて」


言葉を失うキバァ。

固まるエアリ。


「……」


ジェシだけが満足している。


「愛する人を探すって、いいコトよ」


キバァは、ゆっくりエアリを見る。

その視線には、明らかに別の意味がある。


もちろん、ジェシは気づかない。


「エアリ、僕たちも部屋に戻ろう」

「……ええ」


立ち上がる2人。

ジェシは、キバァに手を差し出す。


「またゴルフしましょう!」


キバァは、その手を握る。

瞬間、戸惑いがある。


「……あ。ああ」


エアリは、その2人を見ながら思う。

どうして、ジェシは人を疑わないの?


熱海のうららかな昼下がり。


元カレは、新郎と友情を結び、

新郎は、元カレをゴルフ仲間にする。


そして花嫁だけが

唯一、事態を正確に理解している。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


秋葉原。ラギィのペントハウス。


この時代、ペントハウスは雑居ビルの屋上にダクトや空調ファンに挟まれ建てられたプレハブを指す。

そんなハウスの中で、カレルは、ソファに座って、エアリの披露宴の動画をもう何回も見直している。


キバァが映っている。

エアリが踊っている。


何度見ても、やっぱりいる。


そのとき……

ピンポーン。


「私が出るわ」


ハウスの主人、ラギィが立ち上がる。

ドアを開ける。


そこに立っていたのは、メイド服姿のマデラ。


「あら。どうしたの?」

「どうも、警部」

「もう警部じゃないわよ」

「そうだったわね。ラギィ」

「はい」


ラギィは、にこやかに応じる。

マデラは、少し考えるような顔をする。


「実はね、どうしても気になることがあるの」

「何?」

「それが……まだ、はっきりわからないのよ」


呆れるラギィ。


「なんなの、それ」

「だから、調べたいことがあるの」

「何を?」

「さっきマチガイダでも少し話したんだけど

 協力してほしいのよ」

「いいわよ」

「ところで……」


マデラが玄関の中を見る。


「入ってもいい?」

「あ」


ラギィが気づく。


「立ち話だったわ。私としたコトが」

「……」

「ごめんなさい。とにかく入って」


マデラは、ペントハウスへ入る。

カレルは、ソファから動かない。


何も聞いていないふりをして

プラズマTVのリモコンをいじる。


「それで?」


ラギィが言う。


「話しって?」


マデラは、カレルをチラ見する。


「実は、テリィたんのことなの」


カレルの指が止まる。


「テリィたんが何か?」

「何かあるのは間違いないの」

「へえ」

「ただ、それが何なのかわからない」

「なるほどね」


ラギィは、うなずく。


「それで?」

「だから、あなたにも話を聞きたいの」

「私?」


「テリィたんがよく会っていた金髪巨乳の子

 いたでしょ?」


カレルの腰がソファから少し浮く。


「確か、ここに住んでたわ」

「ティルね」


ラギィは、あっさり答える。


「いっときテリィたんは

 ミユリ姉様から推し変してた」

「巨乳だから」

「まあね……って違うでしょ」


マデラが呆れる。


「確かに、そういう時期もあったカモ」


ラギィは笑う。


「カモって何よ」

「本人に聞いてないから」

「今、彼女は?」

「秋葉原を出たわ」


マデラの目が光る。

カレルが立ち上がる。


「どこへ?」


ラギィは、普通に答える。


「名古屋」

「名古屋?」

「大須にある親類の家に戻ったの。

 確か、おじさん夫婦のところだったかな」


マデラが1歩近づく。


「連絡は取れる?」

「ええ」

「電話番号は?」

「たぶん、わかる」

「今すぐ?」

「え?」

「ティルに連絡できる?」


ラギィは、首を傾げる。


「できるけど……なんで?」

「話を聞きたいの」

「テリィたんのことで?」

「YES」

「それなら……」


ラギィは、思い出したように手を叩く。


「どこかにメモがあるハズよ」


マデラの顔が少し緩む。


「お願い」

「ええ。カレルが戻ったら探してみる」

「いや、今探して」

「今?」

「ええ」

「……」


ラギィは、少し考える。


「じゃあ、先に私からティルに連絡してみるわ」

「悪いけどお願い」


マデラは、ラギィの肩を軽く叩く。


「じゃあ、また」

「はい」


マデラは、出て逝く。

ドアが閉まる。


しばらく沈黙。

カレルがラギィを見る。


「……なあ」

「何?」

「お前、わかってる?」

「何が?」

「ティルだよ」

「うん。金髪巨乳の子」

「そうじゃなくて!」


カレルは、頭を抱える。


「ティルは……」


言いかけて、口をつぐむ。

ラギィは首を傾げる。


「何?」

「……いや」


カレルは、深く息を吐く。

そして、小さくつぶやく。


「まずいぞ。これは」


ラギィは、ソファに戻る。


「何が?」

「……」


カレルは、答えない。


披露宴の動画が、再生されている。

画面の中でエアリが笑っている。


その背後で、キバァがこちらを見ている。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


熱海ヒルズ。


温泉ホテルのプレジデンシャル・ダンスホール。

新郎新婦が踊っている。


ジェシは、楽しそうだ。

エアリも笑っている。


その2人を、カウンターから1人で見つめる男。


キバァだ。グラスを片手に、じっと2人を見る。

やがて、エアリと目が合う。


キバァは、微笑む。

エアリは、真顔だ。


「……目障りだわ」

「ん?」


ジェシが振り向く。


「あの彼?」

「YES」

「新婚カップルの邪魔をするのが趣味の変人?」

「そういう人、いそうだし」


ジェシは、気にしない。


キバァは、バーテンダーから新しいグラスを受け取り、そのグラスに、そっと手をかざす。


淡い光。一瞬だけグラスが輝く。


「これで良い」


キバァは、満足そうにうなずく。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ジェシ」


エアリが小声で言う。


「ちょっと裏口から出ましょう」

「どうして?」

「良いから」


2人が歩き出す。

その瞬間。


「やあ、ジェシ」


キバァだ。


「これ、どうぞ」


差し出されたグラス。


「どうも」


ジェシは、何の疑いもなく受け取る。


「エアリ。君も何か飲むかい?」

「いえ。いいわ」

「そう?」


キバァは、爽やかに笑う。


「それじゃあ、僕はあっちへ行くよ。

 邪魔したみたいだから」

「また今度、ゆっくり会いましょう」


ジェシが言う。

エアリが即座に割り込む。


「ジェシ。そんな暇はないわ」

「そう?」

「私たちは忙しいの」

「確かにそうね」


キバァは、微笑む。


「分かるよ」


そして、グラスを掲げる。


「結婚おめでとう。末永くお幸せに」

「ありがとう」


ジェシもグラスを掲げる。


「乾杯」


キバァは、一気に飲み干す。

そして、席を外す。


エアリがジェシを見る。


「……」


ジェシは、嬉しそうだ。


「いい人だったね」

「どこが?」

「ちゃんと祝福してくれた」


エアリは、溜め息をつく。


「……そうね」


ジェシがグラスを口に運ぶ。


「これ、美味しいな」

「飲まないで」

「え?」

「なんとなく」

「もう飲んじゃった」

「……」

「大丈夫みたい」


ジェシは、笑う。


「私、消化器系は健康だから」


その直後。


「……うっ」


ジェシの顔が固まる。


「ジェシ?」

「……」


お腹を押さえる。


「どうしたの?」

「前菜の牡蠣に……当たったカモ」

「牡蠣?」

「おお……」


ジェシが膝を折る。


「すぐ戻るよ」

「どこへ?」

「トイレ」

「……」


ジェシは、腹を抱えながら走っていく。


「新婚旅行で、牡蠣に負けるとは……」


最後まで妙に前向きだ。

エアリは、その背中を見送る。


そして、深い溜め息。


「……もう」


その瞬間。


「やあ」


目の前にキバァが現れる。


「きゃっ!」


キバァはエアリを抱き寄せ、そのまま踊り始める。


「彼に何をしたの?」

「すぐ治る」

「何をしたのよ!」

「少し外してもらっただけだ」

「外すって……」

「君と2人きりになるためにね」


エアリが睨む。

キバァは微笑む。


「君をずっと探し続けてきた」

「……」

「愛しのビララ」


その名前を聞いた瞬間。

エアリの脳裏に暗闇が走る。


誰かに抱かれている。


背中の翅が大きく開いている。

唇が重なる。


知らない夜。

知っている身体。


記憶なのか、夢なのか。


エアリの翅が、本人の意思とは関係なく

ゆっくりと開いて逝く。


「私は……ビララじゃない」


キバァが囁く。


「いや」


さらに、抱き寄せる。


「俺には分かる」

「……」

「君は、昔のままだ」


キバァが顔を近づける。


「ビララだよ」

「お願い……」


エアリの声が弱くなる。


「ねぇもう、ほっといて」

「あんな男を捨てろ」

「ジェシは……」

「後で見晴らし台まで来てくれ」

「……」

「あの時の、あの夜のように」


キバァがエアリにキスをする。


一瞬。エアリの目が閉じかける。

翅が大きく開く。


「……ダメ」


けれど。

その声には、ほんの少しだけ迷いがある。


キバァが微笑む。


「そうだ。君は」

「ダメったら!」


エアリが突然、キバァを突き飛ばした。


キバァがよろめく。

エアリは、翅を慌てて畳む。


「……今のは!」


キバァが嬉しそうに言う。


「思い出した?」

「違う!」

「でも……」

「違うったら!」


エアリは、顔を真っ赤にして叫ぶ。


「私、結婚したばかりなのよ!」


そしてドレスの裾をつまんで

ホールから逃げて逝く。


キバァは、その背中を見送る。


「……やっぱり、ビララだ」


その頃、廊下の向こうから声。


「エアリ!」


ジェシだ。


「ただいま!」


顔色は、少し悪い。

しかし、笑顔は健在だ。


「大丈夫だった?」

「……ええ」

「じゃあ踊ろう」

「……」


エアリは、ジェシを見る。

そして、そのまま抱きつく。


「もう、離れないで」

「もちろんよ」


ジェシは、何も知らない。


キバァだけが、2人の向こうで

静かにグラスを傾けていることを。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


秋葉原。閉店直後の御屋敷。


カチューシャを外したミユリさんとスピア。

それにカレルがカウンターに残っている。


「それで、マデラはなんて言ったの?」


スピアが聞く。


「やっぱり、マデラは何か調べてるな」


カレルが答える。

スピアは、あっさり肩をすくめる。


「気にすることないんじゃない?」

「どうして?」

「マデラの気持ちもわかるわよ」


スピアは、カウンターを拭きながら言う。


「テリィたんが突然コンビニ強盗したと思ったら、

 今度はエアリが電撃結婚ですもの」

「……」

「そりゃ落ち着かないわよ」


スピアは、妙に納得している。

が、カレルは、納得していない。


「いや。マデラが調べているのは

 もっと別のことだと思う」

「何を?」

「ヲタッキーズが時空漂流者のグループだと

 勘づいたのかもしれない」

「いいえ」


ミユリさんが伝票を描きながら首を振る。


「それはあり得ないわ」

「なぜ?」

「マデラがそんな簡単なところで

 止まる人じゃないもの」

「……それ、否定になってないな」


カレルがつぶやく。


ミユリさんは、黙って伝票をめくる。

そのときだ。


「これ、何?」


カレルがカウンターの端に貼られた

黄色いポストイットを剥がす。


大きい。A3版のポストイットだ。

そこには男の写真と名前が描かれている。


「尋ね人?」


ミユリさんが覗き込む。


「ちょっと待って」


写真を見る。


「……この男」


スピアも顔を寄せる。


「誰?」


ミユリさんの顔色が変わる。


「これって……あの動画の男じゃない?」

「キバァ?」

「そう」


ミユリさんは、写真を見つめる。


「でも、名前が違う」

「え?」


ミユリさんがポストイットの名前を指差す。


「デニィ?」


3人が黙る。


「キバァの名前がわかったわ」

「デニィさんって人だったってこと?」

「違う」


ミユリさんは、首を振る。


「キバァの正体がわかったのよ」


カレルが写真を取り上げる。


「どういうことだ?」


ミユリさんは、静かに言う。


「この人、普通の人間よ」

「……」

「奥さんもいる。子供もいる」


スピアが眉をひそめる。


「じゃあ、キバァは?」


ミユリさんは、披露宴の動画に映っていたキバァの顔とポストイットの写真を見比べる。


そして、1つの結論にたどり着く。


「たぶん」


ミユリさんが息を吸う。


「キバァは"母なる世界線"から来たんじゃない」

「じゃあ、どこから?」

「この人の中からよ」


カレルの顔が強張る。


「まさか……」

「デニィさんの身体を乗っ取ってる」


スピアが小さく口を開ける。


「……かわいそう」

「そこ?」


カレルが突っ込む。

スピアは写真を見つめる。


「だって奥さんも子供もいるんでしょ?」

「いるわ」


ミユリさんが答える。


「つまり、キバァに乗っ取られてる間

 デニィさんは……」

「本人の意思とは関係なく、妻の前から消えてる」


カレルがつぶやく。

3人の間に沈黙が落ちる。


「さっきまで、キバァは異次元から来た怪物。

 そう思っていた」

「だから、殺せば良いと思ってた?」


けれど。


「マズい!テリィたんたちは……」


スピアが気づく。


「キバァを殺しに熱海へ行ったわよね?」


カレルがうなずく。


「そうだ」


ミユリさんが立ち上がる。


「止めなきゃ」

「でも、どうやって?」

「決まってるでしょ」


ミユリさんは、ポストイットを握りしめる。


「テリィ様に知らせるのよ」

「キバァを殺したら……」


カレルが続ける。


「デニィも死ぬ」


ミユリさんは、うなずく。


「そして、奥さんと子供には……」


一瞬、言葉が止まる。


「帰ってこない父親だけが残る」


スピアが青ざめる。


「それ、絶対にダメじゃない」


ミユリさんは、カチューシャを握り直す。


「急がなきゃ」

「でも、姉様。どこへ?」

「熱海」


カレルが立ち上がる。


「やっぱり熱海か」


スピアも立ち上がる。


「新婚旅行と言えば、熱海だもの」


誰も笑わない。


御屋敷の大きなノッポの古時計だけが、閉店後の静かな店内で時を刻んでいる。


物語は、予定を変える。


これは、キバァを殺すための旅ではない。

キバァの中のデニィを救うための旅なのだ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


熱海ヒルズ。プレジデンシャル・スイート。


ベッドサイドテーブルにカナッペとシャンパン。

その横で、エアリはキャンドルに灯りを灯す。


今日は新婚旅行。

そして……初夜(百合だが)。


エアリは、少しだけ胸元の開いた

シースルーのナイトガウンを着ている。


鏡を見る。


「……よし」


何が「よし」なのか、よくわからない。


ベッドに腰を下ろす。

その瞬間。


脳裏に、暗闇の中の光景がフラッシュバックする。


抱擁。

キス。


そして……


「……あっ」


エアリは慌てて胸元を押さえた。


「違う違う違う」


小さく息を吐く。


「私はジェシの妻なんだから」


洗面所に声をかける。


「ねぇ、まだかかりそうなの?」

「もうちょっとよー」

「ジェシ。ねぇ早く来て」

「ふがふが」

「……何?」


洗面所のドア越しに聞く。


「ふがふがふが」

「何を言ってるの?」

「フロス中!」

「ああ……」


エアリは、溜め息をつく。


「初夜なのに、フロス……」

「歯は大事!」


妙に説得力がある。


エアリは、窓を少しだけ開ける。

夜風が入ってくる。


遠くに熱海の街明かり。

手前には、ホテルの庭園。


そして、その中央……

ガゼボ(西洋式の東屋)に手を掛け、誰かが立っている。


「……!」


エアリの息が止まる。

男は、ゆっくりと顔を上げる。


キバァだ。


「……来たのね」


エアリは、窓から離れる。そして……

ガゼボへ向かう前に、洗面所のドアに手を触れる。


パチッ。


分子構造が変わる。

ドアは完全に固着する。


「エアリ!」


中からジェシの声。


「ちょっと!」

「……」

「ドアが開かないんだけど!」


エアリは、聞こえないフリだ。


「エアリ!これ、開かない!」


ドアノブを回す音。

ガチャガチャ。


「そっちから押してみてくれない?」

「やってみたけど、無理だわ!」


ガチャガチャガチャ。


「ドアノブが動かないの!」

「……」

「マジでここ、プレジデンシャル・スイート?」


エアリは、靴を履く。


「これはないわー!」

「待ってて!」


エアリは、窓へ向かう。


「ホテルのメンテナンスの人を探してくる。

 直してもらいましょう!」

「エアリ!」

「……」

「電話で呼べば?」


もっともだが、エアリは聞こえないフリ。

窓から飛び出す。


「エアリ――!」


返事はない。


洗面所に取り残されたジェシ。

しばらくドアを見つめる。


「……」


そして、溜め息。


「新婚旅行って、こういうものなの?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


熱海ヒルズ。プレジデンシャル見晴らし台。


ガゼボ(西洋式東屋)には、やたら忙しない電飾が点滅している。

クリスマスでもないのに。


そこへエアリが歩いてくる。


「キバァ」


振り返る男。


「私に何をしたの?」

「何のことだ?」

「パワーで私をコントロールした。

 ここに呼び出したでしょう」


キバァは、首を振る。


「俺じゃない」

「じゃあ誰のせいよ」

「ビララさ。彼女が望んだから、君はここに来た」

「ビララは、死んだわ」


エアリは、キバァをにらむ。


「もう存在しないの」

「いや」


キバァは、笑う。


「明らかに存在している」


そして、エアリを指差す。


「君の中に」

「……」

「ビララは、一族を裏切った。

 そして、一族は皆殺しにされた」


エアリの声が震える。


「でも、私は生まれ変わったの」


1歩、後ろへ下がる。


「あなたのいない、この世界線で

 立派にやり直して、立派に生きているの」

「そうじゃない」


キバァは、1歩近づく。


「現に俺はここにいる」

「だから何?」

「今すぐ一緒に"母なる世界線"に帰ろう」


エアリの表情が揺れる。


「……帰れるの?」

「新しい時空移動装置が、やっと完成した」


キバァは、ムダにドヤ顔。


「超古代の時空トンネルより何倍も速い」

「何倍?」

「かなり」

「かなりって……」

「さあ、ビララ」


キバァが手を差し出す。


「戻ろう」


エアリは、その手を見る。

そして、首を振る。


「いやよ」

「……」

「私を愛してるなら」


エアリは、キバァを見つめる。


「目の前から消えてちょうだい」


その瞬間。

キバァは、エアリを抱き寄せ、キスをする。


「……!」


エアリの身体が跳ねる。


「ん……っ」


自分でも驚いたように声が漏れる。


「ち、違う……」


キバァは、さらに抱き寄せる。

エアリの翅が、ばっと開く。


「あ。だめ……」


そう言いながら、身体が妙に反応してしまう。


「私、ジェシの……」


声が途切れる。


「……妻、なのに……」


キバァが首筋に軽くキスする。


「ひゃ……!」


エアリは、思わず身をよじる。


「だから……ダメだって……!」


翅がさらに大きく開く。

明滅を始める。


本人の意思とは関係なく。


「……なんで光るのよ、私!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


見晴らし台へ続く階段。

僕とマリレは、忍び足で上がる。


「ホントに奴はここにいるの?」

「いるさ」


僕は、小声で答える。


「エアリを奪う気なんだぞ」

「じゃあ、さっさと早いところ殺して……」


マリレが階段の先を見る。


「……」


僕も見る。


ガゼボ。


電飾。


そして、その中央。


キバァに抱き寄せられ

すっかり翻弄されているエアリ。


「……」


マリレが黙る。

僕も黙る。


夜空には、エアリの翅が満開になっている。

その光量は、ガゼボの電飾を完全に圧倒する。


明滅。

明滅。

明滅。


マリレがつぶやく。


「……すごい」

「何が?」

「エアリ、ウルトラ・ライトアップモードだわ」

「そんなモードあるのか?」

「今できたのよ」


僕は、頭を抱える。


「エアリ……」


マリレは、冷静に観察している。


「どうやら、遅かったみたいね」

「そんな……」

「間もなくクライマックスよ」


その言葉に合わせるように、

エアリの翅が、夜空いっぱいに強く光る。


熱海の夜景が、一瞬、昼間のように明るくなる。


結局、初夜は、予定どおりにはならない。

少なくとも、洗面所のドアだけは。


第3章 デニィさんをめぐる諸問題


熱海の夜。


エアリの翅が星空に明滅する。

キバァが1歩、近づく。


「ビララ。一緒に戻ろう」

「……今更、無理よ」


エアリは、喘ぐように息をしながら

それでも必死に首を振る。


「私は、エアリよ」

「"母なる世界線"に戻ろう」


キバァは、ひたすら懇願する。


「君は、エアリではなく、ビララになれる」

「……」

「頼む。一緒に帰ろう」

「……」

「お願いだ」

「……」

「一緒に」

「もうヤメてってば!」


エアリが叫びそうになった、そのとき。

物陰から2人を見ていた僕のスマホが鳴る。


♪♪♪――


「!」


僕とマリレが同時に固まる。


「ちょっと!」


マリレが小声で怒鳴る。


「こんなときに誰?」

「知らないよ」

「切って!」

「でも……」

「見つかるわよ!」


僕は、慌ててスマホを見る。

着信。


「……ミユリさんだ」

「よりによって姉様?」


マリレがウンザリした顔をする。

それ以上にウンザリして僕は、電話に出る。


「もしもし?」

『テリィ様?ご無事ですか?』


限りなくノンキに思える声が聞こえる。


「今は話せない。あとで……」

『もう彼を殺しましたか?』

「いや、まだだ」

『そうですか。良かった』

「悪いけど切るよ」

『テリィ様』

「何?」

『マリレは?』


僕は、マリレを見る。

マリレは、眉間のシワMAXだ。


「いるよ」


すると、電話の向こうから声がする。


『ねぇ、キバァを殺さないで』

「……スピア?」

『そうよ』

「なんでいるんだ?」

『ミユリ姉様と一緒』


マリレは、天を仰ぐ。


「電話、何人いるのよ……」


僕は、スマホを耳から少し離す。

すると、また別の声。


『テリィたん!』

「今度は誰だよ!」

『カレルだ』

「カレル。お前もか」

『エアリを見つけたか?』


僕は、熱海の星空を仰ぐ。


アキバの電話。

そして、僕のスマホ。


修学旅行で、みんなで元カノに電話した夜。

ふと思い出す


あのときも、誰が誰と話しているのか

結局、最後までわからなかったっけ。


今も同じだ。

しかも、今回の元カレは、異次元から来ている。


「エアリは……」


僕が言いかけると、ミユリさんが割り込む。


『テリィ様。それよりデニィさんのことです』

「デニィって誰だ?デニィさんの羊?」

『行方不明になって、尋ね人になってる人です』

「……」

『アキバ中にチラシが貼ってあります』


マリレが僕の袖を引っ張る。


「テリィたん、早く切って」


僕も大きく頷く。


「ミユリさん、悪いけど……」

『テリィ様』

「今度は何?」

『私、思ったんですけど』


ミユリさんの声は、相変わらずノンキに聞こえる。


『多分、キバァはデニィさんの体を乗っ取ってルンじゃないかと思います』

「……」

『それから、アキバでは今、マデラがテリィ様のコトを色々聞き回ってます』

「え。マデラが?」


僕は、思わず聞き返す。


「歩き回ってるって……散歩か?」


マリレは、恐ろしい顔で僕を見る。


『散歩?違います』


ここで、突然勝ち誇ったようなミユリさんの声。


『テリィ様とティルとのコトを調べてます』

「……」

『テリィ様が妊娠させた金髪巨乳です』


しまった、地雷原だと思ったが、もう遅い。

マリレを見る。マリレは何も言わない。


たが、目が怖い。


「その件はまた後だ!」


僕は、スマホに叫ぶ。


「じゃね!」


通話終了。静寂。

僕は、ゆっくりスマホをポケットにしまう。


マリレが僕を見る。


「……」

「……」

「何?」

「何が?」

「ティルって誰?」

「今、それ聞く?」

「今、聞く」

「後で」

「絶対?」

「絶対」


マリレは、溜め息をつか。

僕も溜め息をつく。


そして、ガゼボに目をやる。

キバァとエアリ。くんずほぐれず。光る翅。


当分、2人はそこにいる。


「キバァは、人間の体を乗っ取ってるらしい」


僕が言う。

マリレが答える。


「だから?」

「だから、殺せないよ」

「……」


マリレは、ガゼボを見る。

そして、僕を見る。


「いや」

「え?」

「殺すわ」

「……」

「デニィさんを救う方法は、あとで考える」

「殺した後で?それ、ダメだろ」

「じゃあどうするの?」

「それを今から考えるんだよ」

「キバァは、エアリを連れて行こうとしてる」

「そうだ」

「なら止める」

「そうだ」

「殺さずに?」

「……」


僕は、黙る。

マリレも黙る。


互いにガンを飛ばす。


夜の熱海。

遠くで温泉街のネオンが瞬いている。


ガゼボでは、キバァの電波のような愛が暴走中だ。

アキバでは、マデラが僕の秘密を掘り起こし中。


僕のスマホには着信履歴。


ミユリさん。

スピア。

カレル。


僕は、画面を見る。


「……」


マリレが言う。


「もう1回、電話鳴るんじゃない?」

「やめてくれ」


その瞬間。


♪♪♪――


2人は、同時にスマホを見る。


「……」

「……」


今度は……マデラだ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


熱海ヒルズ。プレジデンシャル・スイート。


洗面所の扉が開く。

中には、半裸のジェシがバスタブに腰掛けている。


「エアリ」

「な、何?」

「いったい何をしたの?」

「何もしてないわ」

「でも、これ。どうやって開けたの?」


ジェシは、真顔だ。

エアリは一瞬考える。


「フロントで聞いたの。

 時々、開かなくなるんですって」

「時々?プレジデンシャル・スイートよ?」

「そう。だから、そういうときは……」


ジェシがエアリの足元を見る。


「……外へ出たの?」


エアリの足元は、しっかり泥で汚れている。


「……あぁ」


エアリは、にっこり笑う。


「えぇ、出たわ」


開き直る。


「バラ園にメンテナンスの人がいたから

 呼びに行ったの」

「外?」

「そう。それでドアのことを聞いたら

 こうすれば良いって」


エアリは、天井を見ながら説明する。


「先ずドアに寄りかかって

 それで、同時にエイッて引くの」

「同時に?」

「同時よ」


エアリがもう1度実演する。


「寄りかかって……引く」

「なるほど」


ジェシは、真面目に理解する。

そして突然、エアリを抱き寄せる。


「こういうことね?」

「きゃっ!」


そのまま持ち上げる。


「ジェシ!」


エアリは、笑いながらジェシにしがみつく。


「違う違う、そうじゃないわ。いやーん」

「だって、同時にやるんでしょう?」

「ドアとよ!」

「なるほど。ドアとか」


何が「なるほど」なのか。

ジェシは、そのままベッドへ倒れ込む。


「ジェシ!」


2人で笑い転げる。

ジェシが嬉しそうに宣言する。


「さあ、新婚初夜の始まりよ」

「……」


エアリは、一瞬だけ目を閉じる。

今夜、私は何も考えない。


キバァのことも。

ビララのことも。

"母なる世界線"のことも。


全部、明日の自分に任せる。

エアリは、ジェシを抱きしめる。


翅をそっと出す。


しかし……光らない。


「……」


だが、ナゼか少し安心するエアリ。

そのとき。


コンコン。


ノックする音。

2人が同時に固まる。


「出なきゃ」

「いや。ほっときましょ」

「ルームサービスです」


実は、僕だ。エアリが飛び起きる。


「やっぱり、出なきゃ」


エアリの顔が引きつる。


「誰なの?」

「きっと、ルームサービスよ」


エアリは、翅を確認する。

光っていない。


「……」


キバァのときは、あれほど派手に光ったのに。

エアリは、翅を畳む。


「ねぇ。やっぱり出なきゃ」


ジェシは、ベッドに大の字になる。


「全く、何なの?」


エアリはナイトガウンの前を整えて

ドアの覗き穴から外を見る。


誰もいない。


「……?」


そっとドアを開ける。

その瞬間。


左右から、僕とマリレが現れる。


光の速さで、靴先をドアの隙間に突っ込む。

これで、ドアは閉まらない。


「……」


エアリが絶句する。


「やあ」


僕が手を上げた。


「元カレを殺しに来たわ」


マリレが言う。


「ちょっと!」


エアリがマリレを睨む。


「声が大きい!」

「誰?」


ベッドルームからジェシの声。


「エアリ?」

「……!」


エアリは、慌ててドアを閉める。

僕とマリレの顔が、ドアの向こうに消える。


「ルームサービスだったわ」

「何か頼んだの?」

「いいえ。間違いだったわ」

「そう?」

「そう!」


エアリは、振り返る。


そして……

ナイトガウンを、ふわりと脱ぐ。


「……!」


ジェシの目が輝く。

単純だ。


「さあ、こっちにおいで」

「いいえ」

「え?」

「何か飲みたいわ」

「じゃあ、シャンパンが……」


ジェシがサイドテーブルのボトルに手を伸ばす。


「ねぇ、優しい旦那様にお願いがあるの」

「何?」

「バーに行って、カクテルを持ってきて」

「なんで?」

「傘のついた、フルーティーなドリンク」

「……」

「ねぇねぇねぇ」

「何?」

「私、喉が渇いたの」

「それこそ、ルームサービスに頼めば?」

「さっき追い返したし」


ジェシの顔が曇る。


「……エアリ」

「なに?」

「いったい、どうしたの?」


エアリは、少し困った顔を作る。


「なんだか緊張しちゃって」

「緊張してるの?」

「落ち着かないの」

「そっか」


瞬時に信じるジェシ。


「じゃあ、やっぱりドンペリを……」

「ねぇシャンパンより傘のついたのが良いわ」

「傘のついたの?」

「それが飲みたいの」

「……わかったわ」

「お願い」


ジェシをメロメロにする上目遣い。

エアリの得意技。


「……仕方ないわ」


溜め息をついてドアを開ける。


「じゃあ行ってくる」

「ありがとう!」


エアリは、笑顔で送り出す。


「じゃあ待ってるわね」


ジェシが廊下へ出る。


「じゃあね」


ドアが閉まる。

エアリは小さく跳ねる。


「よし!」


ぴょん。


もう1度。


ぴょん。


そして、ドアを開ける。


「入って!」


僕とマリレがズカズカと入ってくる。

エアリが扉を閉める。


「あなたたち、なんでここにいるの?」

「エアリの問題を解決しに来たのよ」


マリレが即答する。

僕も続ける。


「エアリ。キバァに会っただろう?」

「……」


エアリは、頭を抱える。


「まさか、ついてくるとは思わなかったのよ」

「当然だろ」

「どうしてみんな、私たちのハネムーンに

 ついてくるの?」

「放っておいたらヤバいからよ」


マリレが言う。


「マリレ」

「何?」

「彼を殺す気?」

「いや」


マリレは即答する。


「もちろん殺す」

「どっちよ!」


エアリは、半泣きになる。


「キバァは生身の人間に乗り移ってルンだ」


僕が説明する。


「誰に?」

「デニィさんというリア充」


マリレが言う。


「誰だろうが殺すわ」

「マリレ!」


エアリは、完全に泣きそうになる。


「もう帰って」

「何?」

「キバァのことは私がカタをつける」

「エアリ」


僕は、真顔になる。


「エアリ。キバァの言いなりになって

 一緒に"母なる世界線"へ帰るつもりだろ?」

「……」

「見たんだよ」


マリレも容赦がない。


「貴女、翅をギンギラギンに光らせちゃって」

「……」

「熱いキスまでしてたでしょ?」

「……!」


エアリの顔が崩れる。


ドン。


背中をドアにぶつける。

そのまま床にペタンと座り込む。


「どうして……」


涙が落ちる。


「どうしていつもこうなるの?」


僕とマリレは、黙る。


「ジェシと結婚して」


エアリは、泣きながら言う。


「心から愛してるだけなのに……」

「それはわかってる」

「でも……」


エアリが顔を上げる。


「キバァも愛してるの」


僕とマリレは顔を見合わせる。


「……」

「……」


僕がつぶやく。


「待てよ」


マリレも目を見開く。


「その話は、初めて聞いた」


エアリは、膝を抱える。


「だって……」

「だって?」

「ビララが、私を操ってルンだもの」


僕は、エアリと同じ目線までしゃがむ。


「エアリ」

「……」

「ビララは死んだんだ」

「いいえ」


エアリは、首を振る。


「憎くて憎くてたまらない」


涙を拭う。


「でも、まだ私の中でビララは生きてるの」


僕は、立ち上がる。


「わかった」

「え?」

「とにかく今夜は、ここにいるんだ」

「私が?」

「そう。ジェシと一緒に、この部屋から出ない」

「……」

「その間に、僕たちがキバァを探す」


僕は、颯爽と立ち上がる。

ところが……


「ダメよ、テリィたん」


エアリが立つ。


「私、ここにいるなんてできないわ」

「エアリ?」

「私も行く」


マリレがうなずく。


「なるほど」

「何が?」

「自分でケリをつけたいのね?」

「ええ」


エアリはうなずく。


「これで終わりにしたいの」

「わかった」


僕もうなずく。


「でも、今宵は待て」

「……」

「僕たちは、外で見張る」

「うん」

「朝になったら、ジェシに気づかれないように

 部屋を出ルンだ」

「わかった」

「僕たちは、こっそり後をついていく」

「うん」

「キバァを探して、どこかへ連れて逝く」

「その後は?」


マリレが答える。


「デニィさんからキバァを引き剥がす」

「その後は?」

「何度も言わせないで」


マリレが拳を握る。


「殺すのよ」

「……」


さすが時空ナヂス。

やることが物騒だ。国防軍だけど。


僕は、エアリを見る。


「奴は君を手に入れて、僕たちを殺す気なんだ」

「そうよ」


マリレがうなずく。


「やるか、やられるかよ」

「わかったか?」


エアリは、渋々うなずく。


「ええ。わかったわ」

「よし」


コンコン。3人が固まる。


「エアリ」


ジェシの声。


「開けてよ」


エアリが突然、ぴょんぴょん跳ね始める。


「来た!」

「何が?」

「ジェシよ!」


ぴょん。


「早く!」


ぴょん。


「バスルーム!」


僕とマリレを両手で推す。


「ちょっと、エアリ……」

「早く!」


僕たちは、洗面所へ推し込まれる。


エアリは、髪を整える。

ドレスを直す。


深呼吸。


そして、扉を開ける。

そこには、ジェシ。


手には、傘のついたフルーティーな青いカクテル。

しかも、小さな花火まで刺さっている。


「まあ!」


エアリが笑う。


「早いのね、ダーリン!」

「エアリのためだもの」

「ホントにありがとう!」

「喜んでくれてよかったわ」


エアリは、カクテルを受け取る。


「じゃあ、そのまま奥で待ってて」

「え?」

「私、すぐ行くから」

「何?何なの?」


エアリは、ジェシの背中を推す。


「じゃあねー」

「エアリ?」


ベッドルームの扉が閉まる。


「……」


エアリは、振り返る。


そしてまた、ぴょんぴょん跳ねながら

洗面所へ向かう。


「出て!」


僕とマリレが出てくる。


「行って!」


背中を推される。


「ちょっと待て!」

「しーっ!」


僕とマリレは廊下へ。

エアリが最後に2人を推し出して……


パタン。


プレジデンシャル・スイートの扉が閉まる。


静寂。


エアリは扉にもたれる。

深い溜め息。


その向こうでは、何も知らないジェシが

花火つきのカクテルを眺めている。


「……」


そして、エアリはつぶやく。


「新婚旅行って……」


もう1度、深い溜め息。


「こんなに大変なモノだったの?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


スイートのベッドルーム。


ジェシは、ベッドに腰掛けている。

手には、フルーティーな青いドリンク(傘つき)。


刺した花火から火花。


「……」


しばらく眺める。


「……」


もう1度眺める。


「……」


そして、小さく首を傾げる。


「何なの、これ」


そこへエアリが入って来る。


1度は脱いだセクシーガウン。

何事もなかったように羽織っている。


「……」


咳払い。


「んんっ」


ジェシが振り向く。


「……」

「……」

「エアリ」

「なに?」

「いったい、何が起きてるの?」

「それなんだけど」


エアリは、ベッドの前に立つ。


「ねぇ、話したいことがあるの」

「うん」

「何も言わずに黙って聞いてね」

「わかった」


エアリは、深呼吸する。


「実は私、普通の腐女子じゃないの」


ジェシの眉が上がる。


「別の時空から来た、時空漂流者(レーンウォーカー)なの」

「……」


ジェシは……クスクス笑い始める。


「何?」

「いや」

「何がおかしいの?」

「それってさ」


ジェシは、笑いをこらえながら言う。


「実は火星人でした、とか」

「……」

「金星人でした、とか」

「……」

「小宇宙ブラックホール第3惑星人の類?」

「違うわ!」


エアリが即座に否定する。


「もっとややこしいの!」

「そうなの?」

「実は"母なる世界線"から来た

 まあ異次元人みたいなものね」


ジェシは、ますます大笑い。


「OK」

「笑わないで」

「わかった、わかった」


ジェシは、涙を拭く。


「で?」

「例えば……」


エアリは、キャンドルに手をかざす。

指先をくるりと回す。


炎が渦を巻く。

分子構造がほどける。


キャンドルが一瞬で形を変える。

そこに現れたのは……


花瓶。


「……」


ジェシの笑顔が消える。


「……」


花瓶を見る。

エアリを見る。


もう一度、花瓶を見る。


「待って」


ジェシが立ち上がる。


「今、どうやったの?」

「だから言ったでしょう?」

「いやいやいや」


ジェシは、花瓶を指差す。


「今まで、キャンドルだったわよね?」

「そうよ」

「それが花瓶になったわよね?」

「YES」

「……」


ジェシの顔から血の気が引く。


「マジ?」

「マジよ」

「……」

「だから、言ったの」


エアリが振り返る。


「マリレ!テリィたん!」


呼ぶ順番が逆だが、僕たちは物陰から出る。

2人は、エアリの左右に立ち、腕を組む。


ドン引きするジェシ。


「……」

「何なの?」


ジェシが言う。


「いったい何なの?」


マリレが淡々と答える。


「2人は、時空テロリストよ」

「……」

「紹介するわ」

「いや、紹介されても……」


マリレは、構わず続ける。


「秋葉原で"リアルの裂け目"が開いた。

 今から、およそ半世紀前のコトよ」


ジェシが瞬きをする。


「首相官邸はもみ消した」

「……」

「でも、あれはホントの話」

「……」

「そして私たちは"リアルの裂け目"を通じて

 人類のDNAと結合して作られた生命体なの」


ドンドン引くジェシ。


「四半世紀前。地底王国"アチガイダ"で繭から出て、地表に出た」

「……」

「これは秘密で、誰も知らない話」

「……」

「ただし、知ってる人間もいる」


マリレがジェシを指差す。


「スピアとかね」

「え?」

「そして、あなた」

「私?」


ジェシは、自分を指差す。


「私、知ってたの?」

「今、知ったでしょ?」

「……」


僕は、思わず口を挟んだ。


「マリレ。説明の順番を考えてくれ」

「事実を言ってるだけよ」

「情報量が多すぎるんだよ」


ジェシは、しばらく黙っている。

そして、慎重に聞く。


「とても面白い話だけど……」


僕たちを見る。


「それ、なろう投稿用SFのプロットか何か?」

「違う。狙いは直木賞」


マリレが即答する。


「全部リアルよ。ドキュメンタリー」

「……」


ジェシは、青いドリンクを1口飲む。

現実逃避だ。ムセる。


僕が説明する。


「僕とミユリさんだけど

 乙女通りのコンビニを襲っただろ?」

「コンビニを襲った?」

「その目当ては地下にある"時空トンネル"だった。この事実を官邸は秘匿している」

「……」

「だから、あれは強盗じゃない」

「十分強盗だと思うけど」

「まあ、そこはいい」


よくない。


「そしてテリィたんは……」


マリレが余計なコトまで話し始める。


「時空漂流者の金髪巨乳を妊娠させて」

「マリレ!」

「生まれた娘は、今、別の時空にいる」

「……」


僕は、ポリポリ頭を掻く。


「それ、今言う必要ある?」


ジェシは、僕を見る。


「娘?」

「……」

「別の時空にいるの?」

「……」

「会いたい?」

「そこ食いつくトコロ?」


マリレが助け舟?を出す。


「どうやら"母なる世界線"で

 継母からいじめを受けてるらしいの」

「マリレ、黙れ」

「だから、テリィたんは

 "時空トンネル"を探すのに必死なのよ」

「余計なお世話だ!」


ジェシの目が大きくなる。


「待って」

「何?」

「あのテリィたんがツルペタなミユリ姉様から推し変した金髪巨乳のティルって人……」


やたら前置きが長いな。


「意地悪な継母だったの?」

「いや、そこは……」


ジェシは、感極まる。


「まるで"時空シンデレラ"じゃないの!」

「だから違う!」


僕が叫ぶ。

すかさず、エアリが割って入る。


「ええ」

「エアリまで!」

「そうなの」

「違うから!」

「でも、私だって」


エアリは、ジェシを見つめる。


「普通の腐女子みたいに、幸せな家庭を築きたい」


ジェシの表情が変わる。


「……ああ」


1歩、後退する。


「そうょね」


もう1歩。


「もちろんよ」


エアリが微笑む。

ジェシは、さらに後退する。


「……」


そして突然、窓に飛びつく。


「開けて!」


ガチャガチャ!


「ジェシ?」

「開かない!」

「そりゃそうよ」

「お願い!」


ガチャガチャガチャ!


青いドリンクを片手に、窓を必死に推す。


「誰かお願い!」


僕とマリレは、顔を見合わせる。


「……」

「……」

「ジェシ」

「何!」

「そこ、逃げられないよ」

「なんで!」

「72階だから」

「じゃあドア!」


ジェシがドアへ走る。


ガチャ!


開かない。


「なんでよ!」

「エアリが……」


僕が言いかける。

エアリが慌てて僕の口を塞ぐ。


「言わなくて良いから!」

「お願い!」


ジェシがドアを叩く。


「誰か助けて!」

「ジェシ、落ち着いて!」

「落ち着けるわけないでしょ!」


青いドリンクの傘だけが楽しそうに揺れている。


「私の妻が異次元人で!」

「……」

「友達は時空テロリストで!」

「……」

「知らない金髪巨乳の継母がいて!」

「そこは違う!」


僕が突っ込む。


「何が違うのよ!」

「いろいろだ!」

「もうわけがわからない!」


ジェシは、その場にしゃがみ込む。

そして青いドリンクを見つめる。


「……」

「……」

「せめて、これだけは普通のお酒よね?」


僕とマリレとエアリは、顔を見合わせる。

誰も答えない。ジェシの顔が引きつる。


「……まさか」


エアリが小さくつぶやく。


「それは普通よ」

「ホント?」

「たぶん」

「たぶんって何よ!」


プレジデンシャル・スイート。

ジェシの叫び声が響く。


熱海の夜は、まだ終わりそうにない。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


……以上は、エアリの妄想だ。

現実のエアリはスイートのドアに背を預けている。


「……はぁ」


力が抜ける。

そのままペタンと床に尻をつく。


時空テロリスト。

母なる世界線。

異次元の元カレ。

人間の身体を乗っ取ったキバァ。

そして"時空シンデレラ"。


全部、頭の中で勝手に膨らんだ自分の妄想だ。


「……私、明らかに疲れてるわ」


するとベッドルームから、のんびりした声。


「大丈夫?どうしたの?」


ジェシだ。

エアリは、床から答える。


「前菜で頼んだ牡蠣だけど……

 やっぱり食べるんじゃなかったわ」

「貴女もなの?」

「えー、そうみたい」

「だったら、このカクテルは飲めないってことね」

「そうなるわね」

「残念だわ」


言いながらジェシは、チューチュー。

ものすごい勢いでストローを吸っている。


「……ジェシ」

「なに?」

「残念そうに見えないんだけど」

「だって美味しいンだもの」

「……」


ジェシは、グラスを眺める。


「でも、もし牡蠣が原因なら

 このカクテルは大丈夫かもしれないわ」

「どうして?」

「アルコールで消毒できるかもしれないから」

「弁護士の医学知識、どこで仕入れたのよ」

「今、思いついたの」


ジェシは、真顔だ。

そして突然、ベッドから立ち上がる。


「エアリ」

「なに?」

「大丈夫よ」

「……何が?」

「私、貴女を守るから」


エアリの顔が少し緩む。


「ジェシ……」

「だから」


ジェシは、カクテルを持ち上げる。


「このカクテルは、私が全部飲むわ」

「そこ?」

「もちろん」


チューチュー。


「それと、牡蠣も私が食べる」

「もうないわよ」

「じゃあ追加しましょう」

「なんで?」

「新婚旅行だから」

「その理屈、強すぎない?」


ジェシは、テーブルのメニューを開く。


「えーと……伊勢海老、金目鯛、鮑……」

「待って」


エアリが立ち上がる。


「魚介類は危険よ」

「じゃあお肉にしましょう」

「そういう問題じゃないの」

「じゃあステーキ」

「ジェシ」

「和牛」

「ジェシ!」

「サーロイン」

「私、いま時空を越えそうなくらい

 猛烈に疲れてるのよ!」


ジェシは、メニューから顔を上げる。


「じゃあデザートにしましょう」

「……」

「ケーキなら安全よ」


エアリは、しばらく黙っている。

そして、小さくつぶやく。


「……この人、マジで私の話を聞いてるのかしら」


ジェシは、笑う。


「もちろん聞いてるわ」

「じゃあ何を聞いたの?」

「エアリが牡蠣に当たったこと」

「そこじゃない!」


ジェシは、首を傾げる。


「違うの?」


エアリは、天井を見上げる。


異次元より先に、この妻を理解する必要がある。

たぶん、それが今回の新婚旅行で最大の課題。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


秋葉原。閉店後のお屋敷。


客のいなくなったカウンター。

メイド長代理のマデラが1人、伝票を整理中だ。


1枚。

2枚。

3枚。


ペンを止める。


「……はぁ」


溜め息。


そのとき、スマホが鳴る。

マデラは、画面を見る。


少しだけ眉を動かす。


「もしもし?」


相手の声は聞こえない。


「マデラ。こんな時間に済まないな」


男の声だ。YUI店長?

マデラの表情が変わる。


「いえ。大丈夫だけど」

「ちょっと確認したいことがあってさ。ははは。

 実は、俺にも心当たりがあってね」

「……そう」


マデラは、椅子の背にもたれる。


「どこで話す?私、まだ仕事が残っているの」

「そうだな。じゃあ、明日メイド協会で良いか?」


マデラは、一瞬だけ黙る。


「……わかったわ」

「全部話す」


その言葉に、マデラの指が止まる。


「……全部?」

「全部だ。あの件も含めてな」


マデラは、ゆっくり微笑む。


「わかったわ」

「それじゃあ」

「ええ。また明日」


電話が切れる。

マデラは、スマホを伏せる。


その横顔には、さっきまでの疲れがない。

まるで、別の顔を取り戻したようだ。


そのとき。


カウンターの陰で、物音がする。

マデラが振り向く。


「……誰?」


返事はない。

そこには、誰もいない。


……と思ったが、廊下の角。

ミユリさんが壁に張りついている。


息を殺している。

聞こえた言葉が頭の中を巡る。


メイド協会。

全部話す。

あの件。


そして。


マデラの、あの微笑み。

ミユリさんはそっと1歩下がる。


その瞬間。


「ミユリさん?」


暗闇に問う。

ミユリさんは、反射的に柱の裏へ消える。


「……あれ? 誰かいたような」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


翌朝。熱海ヒルズのプレジデンシャル・スイート。


温泉地の朝は、何事もなかったように晴れている。

ベッドの上では、ジェシが完全にグロッキーだ。


布団に半分埋まり、髪は乱れに乱れて

片腕だけがベッドの外に垂れている。


「……うぅ……」


一方。


エアリは、けろっとしている。

翅もきれいに畳んでいる。


昨夜の騒ぎが、存在しなかったかのようだ。

しかも今日は、派手なリゾートウェア。


南国の花柄。

大きなサングラス。

小さなバッグ。


どう見ても、異次元から来た元カレを追う女ではない。

どう見ても、熱海の観光へと出かける新婚の旅行客だ。


エアリは、鏡の前で1度だけ身なりを確認する。


「……よし」


そして、ベッドを見る。


「ごめんね、ジェシ」


眠っているジェシに小さく声をかける。

返事はない。エアリはそっと扉を開ける。


そして、閉める。


カチャ。


プレジデンシャル・スイートに静寂が戻る。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


しばらくして。


「……うっ」


ジェシが呻く。

ゆっくり目を開ける。


天井。

壁。

知らないようで知っているホテルの照明。


「……?」


ジェシは瞬きをする。


2回。

3回。


「……朝?」


時計を見る。


「……朝ね」


なぜか納得する。


そして、まだ半分眠っている頭で

昨夜を思い出そうとする。


牡蠣。

カクテル。

エアリ。

時空。

元カレ。

異次元。


「……」


ジェシの眉間に皺が寄る。


「……夢?」


弁護士として慎重に検討する。


「いや……夢にしては証拠が多すぎる」


ベッドから起き上がろうとする。


「うっ……」


身体が動かない。


「……これは夢じゃないわ」


妙なトコロで確信する。


ジェシはベッドの縁につかまり

ようやく立ち上がる。


「エアリ?」


返事がない。


「エアリ?」


部屋を見回す。

誰もいない。


「……エアリ?」


もう1度。

今度は少し大きな声。


「エアリ?いないの?」


当然、返事はない。

ジェシは、しばらく立ち尽くす。


そして、ふと気づく。

テーブルの上に、エアリの姿はない。


代わりに置かれていたのは

1枚のメモだ。


ジェシは、それを手に取る。


「……」


読む。そして、真顔になる。


「……これは、家出?」


やっと法廷戦術を練る弁護士の顔になる。


「それとも、無断外出?」


さらに考える。


「……いや」


首を振る。


「新婚旅行中の単独行動だから……」


しばらく悩む。


「……契約違反ではないわね」


誰も聞いていないのに、勝手に法的整理を始める。

そしてジェシは、ようやくメモを裏返す。


「……エアリ」


窓の外を見る。晴れた熱海の街。

その街に、エアリが何をしに行ったのか。


ジェシはまだ知らない。

ただ1つだけ、確かなコトがある。


新婚旅行は、まだ終わらない。


第4章 黒い瞳のビララとバラ園の対決


熱海ヒルズ。温泉ホテルのバラ園。


エアリが歩いている。

背中の大きく開いたリゾートウェア。


黒い生地に、赤いバラが咲き乱れている。

どう見てもバカンス帰りではない。


何かを決着させる。そう決意を固めた女の背中。


傍らの茂みの陰では、マリレが寝ている。

完全に爆睡している。


「……マリレ」


僕が小声で呼ぶ。

返事はない。


もう1度。


「マリレ、起きろ」

「……」

「行くぞ」


マリレの目が片方だけ開く。


「……もう?」

「もうだ」


僕たちが立ち上がった、そのとき。

エアリがこちらを一瞥する。


そして何も言わず、スタスタと歩き去って逝く。


「……行ったぞ」

「了解」


僕とマリレは、追いかける。

そのときだ。


「テリィたーん!」


背後から猛ダッシュの音。


振り返る。ジェシだ。

寝起きの顔のまま、なぜか全力疾走している。


「あら!テリィたん?なぜここにいるの?」

「(それはコッチが聞きたいょ)おぉ……ジェシか」

「一体なんで、なぜどーしてテリィたんはココにいるの?そもそも何をしてるの?」


真面目な顔で詰め寄ってくる。

マリレが即答する。


「バカンスよ」

「え?」


ジェシが固まる。


「……バカンス?」

「ええ」


マリレは、平然としている。


「エアリから、とても良いところだって聞いて。

 だから、バカンスに来てみたの」

「……」


ジェシは、僕を見る。

僕も見る。マリレを見る。


「……そうなの?」

「そうだ」


僕も答える。


「バカンスだ」


ジェシは、納得しそうになる。

しかし、すぐに眉を寄せる。


「でも……どうして2人とも、そんなに急いでるの?」

「健康のためよ」


マリレ。


「……健康?」

「歩くの」

「なるほど」


ジェシは、うなずく。

うなずいてしまう。


僕は、思わずマリレを見る。

マリレは、無表情だ。


「ねぇ」


ジェシが再び僕たちを見る。


「ごまかさないで。いったい何が起きてるの?」

「いや……」


僕は、時計を見るふりをした。


「もう時間がないんだ」

「何の?」

「じゃあな」


マリレは、僕の腕をつかむ。


「テリィたん、行きましょう」

「そうだな」


僕たちは、何歩か歩き、そして、走り出す。


「ねぇ!待ってよ!」


ジェシが追いかけてくる。


「どこへ行くの?」


マリレが振り返る。


「ダイビングの講習なの。ごめんなさい」

「ダイビング?」

「そう」

「2人で?」

「そう」

「でも、エアリは?」

「知らないわ」

「……」


ジェシは、完全に困っている。


「テリィたん」

「なんだ?」

「ホントに?」

「じゃあな」


僕もやむなく調子を合わせる。


「ジェシ、ハネムーンを楽しめ」

「ねぇ!」


ジェシが叫ぶ。追いかけて来る。


「一体どうなってるの?」


僕は、歩きながら小声で言った。


「マリレ……なんとかしろ」

「任せて」


マリレが後ろ手に手をかざす。

空気が、ほんの少し揺れる。


「……?」


ジェシが僕たちに追いつく……

その瞬間。


ガラガラガラッ!


どこからともなく

無人のネコ車が飛び出して来る。


「え?」


ジェシと正面衝突。


「きゃあああ!」


ドサッ!


ジェシは、見事に転ぶ。

そして、そのまま植え込みへ。


ベチャッ。


肥料まみれになる。

気まずい沈黙。


僕とマリレは、立ち止まる。


「……マリレ。やりすぎじゃないか?」

「大丈夫」


マリレが答える。


「死んでない」


肥料まみれのジェシが、ゆっくり顔を上げる。


「……マリレ」

「なに?」

「これ……」


ジェシは、自分の服を見た。


「ダイビングの講習?」

「そう」

「違うわよね?」

「……」


マリレが初めて黙る。

ジェシは、立ち上がる。


顔は、泥と肥料で汚れている。

それでも、声だけは妙に真面目だ。


「エアリに何かあったの?」


僕は、答えられない。

ジェシは、僕を見る。


「テリィたん」

「……」

「私、エアリの夫よ」


そして、肥料を一滴、頬から落とす。


「だから、ちゃんと説明して」


僕とマリレは顔を見合わせる。


……ジェシ。君は善人すぎる。

こんな時まで。


しかし、エアリが向かった先。

そこには、キバァがいる。


ハネムーンは観光では終わらない。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


熱海。温泉ホテルのバラ園。

エアリは1人、ゆっくり歩いている。


まるで何かを探しているようでもあり、何かに追われているようでもある。


そのとき。


「エアリ」


横から突然キバァが現れる。

いきなり抱きつく。


「どうするか、決めたのか?」


エアリは、少しだけ間を置く。


「ええ」


キバァの目を見る。


「あなたについて行くわ」

「よし」


キバァは、満足そうに笑う。


「じゃあ"母なる世界線"に帰ろう」


2人は、手を握る。

そして、バラ園の奥へ歩き始める。


その後ろ。

僕とマリレは、生垣に張りつく。


「……行ったぞ」

「見えてるけどね」

「声が大きい」

「テリィたんもね」


僕たちは、慌てて移動する。


生垣から生垣へ。

花壇の陰。

石灯籠の裏。


どう考えても、尾行としては素人だ。

2人はセンター広場に出る。


僕たちも反対側の生垣に身を隠す。


「ここなら大丈夫だわ」


マリレが言う。


「何が?」

「隠れてるし」

「……丸見えだぞ」

「気のせいよ」


そのとき。


キバァが突然エアリを振り向かせる。

そして顔を近づける。エアリは逃げない。


2人は、唇を重ねる。


僕は、思わず目を逸らす。

マリレは、無表情に見ている。


「……あれ」

「なんだ?」

「マジでお芝居なの?」

「さぁな」

「ずいぶん熱演ね」


その瞬間。


エアリの背中から翅が広がる。

リゾートウェアの隙間から、まるで花が咲くように。


そして、怪しい青と白の明滅を始める。

マリレが呆れる。


「……あらあら。満開じゃない」

「そうだな」

「クリスマス電飾まで付けちゃって」

「舞台照明かな」


やがて、2人は唇を離す。


エアリは目を閉じたまま、しばらく余韻を味わう。

その脳裏に、別の景色が走る。


暗闇。

黒いドレス。

胸元にはクレオパトラを思わせるネックレス。


そこに立つエアリ。


いいや。彼女は……


ビララ。


キバァがゆっくり近づいてくる。


「君は、永久に僕のものだ」


エアリは、目を閉じたまま

恥じらうように少しだけ顔を伏せる。


「……キバァ」

「なんだ?」

「実は……」


1拍置く。


「テリィたんたちが来てるわ」


キバァの顔が変わる。


「何?どこだ」

「そこ」


エアリが指を向ける。

キバァは、鼻で笑う。


「くだらない」


その瞬間。


エアリは、目を開く。

瞳が黒い。完全な黒だ。


「……え?」


僕が声を漏らす。


エアリは、静かに手を上げた。

掌から青い光が走る。


「マリレ」

「なに?」

「来るぞ」

「何が?」


ゴゴゴゴゴ――。


生垣が揺れる。


「え?」


次の瞬間。


ガラガラガラッ!


生垣が崩れる。


その陰にしゃがみ込んでいた僕とマリレは

丸ごと露出する。


「……」

「……」


僕たちは、しゃがんだまま固まっている。

キバァがこちらを見る。マリレを見る。僕を見る。


そして僕たちは、ゆっくり立ち上がる。

枝を頭から払いながら。


「……こんにちは」


僕が言う。


キバァが鼻で笑う。マリレは、僕を見る。

相変わらず無表情だ。


「カッコ悪いわね」

「マリレもな」

「私は、寝起きだから」

「関係ないだろ」


そこへエアリが振り向く。


「どうしたの?エアリ!」


マリレが叫ぶ。

エアリは、答えない。


ただ、こちらを見ている。


黒い瞳。


背中では翅が、青白く明滅している。

そして、静かに言う。


「私は……」


1歩、前へ出る。


「ビララよ」


庭園の空気が変わる。

キバァが笑う。


僕は、笑えない。

マリレも、さすがに黙る。


そして誰もまだ気づいていない。


この場で最も状況を楽しんでいるのが

誰なのかを。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「久しぶりじゃないか。ザグフ」


キバァが僕を見る。

ザグフは、僕の"母なる世界線"での名前らしい。


ザクかグフかどっち何だ?


「夢にも思わなかった。また再会の時が来るとはな」

「お前がエアリを奪うコトは出来ないぞ」


僕が言うと、キバァは鼻で笑う。


「お前が奪われたくないのは

 花嫁のエアリじゃなくてセフレのエアリだろ?」

「違う!」

「それに、私は力づくで奪ったワケじゃない」


キバァは、エアリとつないだ手を掲げる。


「ほらな」


エアリは、黒い瞳のまま、僕を見る。


「エアリ!手を離せ!」

「どうしちゃったの?エアリ!」


マリレも叫ぶ。

エアリは、僕たちを胡散臭そうに見る。


「もう……私を放っておいて」


その声には、かすかな息切れが混じっている。


「お願い……」

「おいおい、ザグフ」


キバァが肩をすくめる。


「また彼女に殺されたいのか?」

「いや」


僕は、即答する。


「今度はそうならないさ」


根拠はない。

まったくない。


「だが以前、お前は彼女に殺された」

「違うわ」


マリレが突然口を挟む。


「エアリは、殺してない」

「え?」


マリレは、エアリを見る。


「やっと思い出した」


マリレの顔から、いつもの眠そうな表情が消える。


「ビララは、私たちを平和のためだと言って

 街に招き入れた」


エアリの黒い瞳が揺れる。


「ビララ自身も、それが平和のためだと

 信じ込まされていたの。だから協力した。

 誰も殺さないと言われてたから」

「……」

「ところが街に入った途端、奴は態度を変えた」


マリレがキバァを見る。


「虐殺を始めた」


キバァの顔が引きつる。


「虐殺をしたのは、貴女じゃない」


マリレは、エアリに向き直る。


「キバァよ」


エアリの黒い瞳に、不信感が宿る。


「……あなたが?」


キバァは一瞬だけ黙る。

そして、両手を前に出す。


「話はもういい」


シュッ!


「うわあああ!」


僕とマリレの身体が瞬時に吹っ飛ぶ。


「きゃあああ!」


僕たちは、生垣に突っ込む。


「……」

「……」


マリレが僕を見る。


「今の、必要だった?」

「これで邪魔者は完全に消えた」


キバァは、エアリに微笑みかける。


「……」

「さあ、行こう」


エアリは、キバァの首に両手を回す。


「行けるかい?」

「はい。もちろん……」


しかし、エアリは少し息を乱している。


「行けるわ」


2人は、手をつないで森の奥へ進む。

そのとき、キバァが右手を上げる。


掌から光が溢れる。

天空の一角が歪む。


ゴゴゴゴゴ……。


時空そのものが裂ける。

そこから、滝のように光が流れ落ちてくる。


「さあ、帰ろう」


キバァが言う。


「"母なる世界線"へ」


森の中に、巨大な光の滝が立ち上がる。

エアリが1歩近づく。


そのとき。


「待ったあああ!」


横から"何か"が飛び出して来る。


ドスッ!


キバァにタックル。


「ぐわっ!」


ジェシだ。


「私の奥さんに触らないで!」


ジェシは、キバァを地面に推し倒す。


「ジェシ!」


僕が叫ぶ。


ジェシも、息を切らしている。

それでも、キバァを睨んでいる。


そして拳を振り抜く。


「えいっ!」


ゴン!


キバァが転がった。


「……」


僕とマリレは、顔を見合わせた。


「つ、強いな(暴行罪だけど)」

「善人は、怒ると怖いのよ」


ジェシは、エアリに向き直る。


「エアリ。一体これは何なの?」


荒い息をしながら、真剣な顔。


「私は、行かないと」


エアリが答える。


「私を放っておいて」

「その瞳、どうしたの?」


ジェシは、エアリの顔を覗き込む。


「カラコン?何かのコスプレなの?」

「……違うわ」

「そう」


ジェシは、納得しない。

そのまま、エアリの首に腕を回す。


「エアリ。一体何があったの?」

「ジェシ……」

「頼むから全部話して」


ジェシは息を整えながら、真っ直ぐエアリを見る。


「エアリ、愛してる」

「……」

「聞こえる?」


エアリの手が、そっとジェシの手に重なる。


「許して、ジェシ」


その瞬間。


ドサッ!


頭上から太い枝が落ちて来る。

ジェシの脳天を直撃する。


「……」


アッサリ大の字になって大地に伸びる。


「ジェシ!」


僕が叫ぶ。

その横でキバァが頭を振りながら起き上がる。


「……何なんだ、この世界線は」


エアリがキバァに手を差し出す。

キバァは、その手につかまり立ち上がる。


「急がないと」

「早く行きましょう」


2人は、再び光の滝へ向かう。


「エアリ!」


僕が叫ぶ。


2人は、立ち止まる。

僕は、走り出そうとする。


「行くな!」


エアリが振り返る。

そして、微笑む。


「……また来たら」


1拍置く。


「あなたを殺すわよ」

「怖いコト、言うなよ!」


僕が叫ぶ。


しかし、エアリが見たのはキバァだ。

そして、両手を胸の前に出す。


「さようなら」


ドン!


キバァの胸を推す。


「え?俺?」


キバァの身体が光の滝へ推し込まれる。


「エアリ……?」


キバァの身体が光をまとい始める。

そのまま、吸い上げられるように時空の歪みへ。


「待て!」


キバァが何かを叫んでる。

しかし、エアリは静かに手を振っている。


次の瞬間。

光の滝は閉じる。


パァン。


静寂。そして……


ポトッ。


キバァの身体だけが落ちて来る。

大の字。完全に気絶している。


「……」


僕とマリレが駆け寄る。


「マリレ、彼を起こせ」

「ROG」


マリレがキバァ、いや、恐らくデニィさんの身体を抱き起こす。必死に揺する。


「エアリ、君は大丈夫か?」

「私は、大丈夫よ」


そのとき。


「……うぅ」


デニィさんが目を開ける。


「おい、君たち……ここはどこだ?」


僕は、答える。


「熱海ですょ。デニィさん」

「熱海?」


「早く家に電話して。4126(ヨイフロ)じゃありませんよ。

 ご家族が心配してる」


マリレが肩を抱く。


「奥さんとお子さんが待ってるわ」

「私はなんで、こんなところに……?」

「貴方は、ブラックホール第2.5惑星人に誘拐されて改されかけたの」

「え。まさかメカモスラのコントロール装置を……」

「ほら、早く行きましょう」


マリレは、デニィさんの肩を抱いて歩き出す。


「いったい何があったんだ?」

「あとで説明するわ」

「いつ説明するンだ?今でしょ」


2人の声がバラ園の向こうへ消えて逝く。


僕は振り返る。

エアリが立っている。


瞳の色は……もう普通だ。


その足元には、まだジェシが大の字になって

ノビている。


「ジェシが来てくれたの」


エアリが微笑む。


「キバァを殴ったわ。私のために」

「あぁ。見たよ」

「なのに……」


エアリは、ジェシを見る。


「私はジェシを、こんな目に合わせてしまって」

「……見られたのか?」

「ええ」


エアリは、小さく息を吐く。


「全部ね」


僕は、空を見上げる。


「そりゃ……まずいコトになったな」

「ええ」

「これからどうする?」


半分は、自分への問いかけだ。


目の前には、気絶した新郎。

その向こうには、正気を取り戻した花嫁。


そして、バラ園の奥には、

家族に電話をかけるリア充。


熱海まで来て。

新婚旅行までして。

1番最後に残った問題は……


「ジェシを、どうやって起こすかだな」

「まさか、死んでないわょね?」

「マリレ!何てコトを……

 大丈夫。ジェシは、メイド弁護士だから」

「それが生存理由(レゾンデートル)か?」


熱海の空は、何事もなかったように青い。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


秋葉原。パーツ通り。


マデラとYUI店長が並んで歩いている。

2人とも、妙に真剣な顔で何かを話している。


やがて、神田リバー沿いにある

秋葉原メイド協会のビルへ入って逝く。


その姿を、少し離れた物陰から

見つめる人影がある。


ミユリさんだ。


「……やっぱり」


小さく、つぶやく。

そして、また身を隠す。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


熱海ヒルズ。プレジデンシャル・スイート。


エアリは、ベッドサイドテーブルに氷のカチ割りを置く。人生で最も優しい声で語りかける。


「ジェシ」


ベッドでは、ジェシが気を失ったまま眠っている。

エアリは、そっと覗き込む。


「……起・き・て」

「……うっ」


ジェシが目を開ける。


「エアリ?」

「何?」


エアリは、ゆっくり微笑む。


「私は、ここにいるわ」


ジェシが空を探すように手を伸ばす。

エアリは、その手をしっかり握る。


「大丈夫よ」

「何があったの?」


ジェシは、眉を寄せる。


「あの男はどこにいる?

 いったい、あの人は何だったンだ……」

「恐ろしい人だったわね」


エアリは、ジェシの胸元にそっと手を置く。


「きっと何か薬を飲まされたのよ」

「……今でも気分が悪い」

「そうね」


エアリは、優しくうなずく。

後光がさす微笑。


「貴女は?」

「私なら、大丈夫よ」


にっこり。

あまりにも笑顔が自然だ。


「他に記憶は?何か覚えてる?」


ジェシは、目を閉じ、記憶を探る。


「確か……バーに行って、2人で踊った」

「そうね」

「彼は、貴女に気があるみたいで

 口説こうとしていたわ」

「そうだったカモ」

「少しお酒を飲んで……

 それから、どうやってここに戻ったのかしら?」

「歩いてよ」

「歩いて?」

「何とかね」


エアリは、微笑む。


メイド弁護士は、まだ納得していない。


「その前は?」

「その前?」

「喧嘩になった気がする」

「ええ」

「彼は、私に殴りかかってきたわ」

「そうね。でも……」


エアリは、うっとりした顔をする。


「貴女のパンチ、すごかったわ」

「……」

「1発でノックアウトよ」

「そ、そうなの?」

「ええ」


ジェシは、苦笑する。

そして、ちょっとだけ嬉しそうだ。


「惚れ直したわ」

「……」


エアリは、黙ってジェシを見つめる。


「何?」

「ううん」


エアリは微笑むと、そっと唇を重ねる。

ジェシの言葉が止まる。


「……」


しばらくして、エアリが離れる。


「あなた、ハネムーンってことは覚えてる?」

「ええ。もちろんよ」

「じゃあ……」


エアリが少しだけ身を寄せる。


「始めない?」

「……」


ジェシの顔がパッと輝く。

が、次の瞬間、極めて真面目に確認する。


「つまり、私たちは、未だ新婚旅行中なのね?」

「えぇ。未だよ」

「じゃあ、今からね?」


2人は、もう1度キスをして……

ところが。


「待って」


またまたジェシは突然、顔を上げる。


「確か……テリィたんとマリレがいたわ」


エアリの動きが止まる。


「……」

「ねぇ、熱海に来てるのよね?バカンスで」

「……」


エアリは、一瞬だけ考える。

そして、微笑む。


「何ヲ言ってるの?」

「え?」

「来てるワケないじゃない」

「でも……」

「ジェシ」


エアリは、優しく頬に触れる。


「新婚旅行よ」

「……」

「今は、私のことだけ考えて」


ジェシは、しばらくエアリを見つめる。


「……そ、そうね」


納得する。恐ろしいほど素直に。

エアリは、微笑む。


2人は、再び唇を重ねる。


窓の外では、熱海の海が静かに光っている。

そしてプレジデンシャル・スイートの隅々に……


昨夜、2人が大騒ぎした痕跡が、いくつか残る。


ジェシは、それには気づかない。

エアリも、気づかないふりをする。


少なくとも今だけは。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


熱海。温泉ホテルのバラ園。

芝生を払いながら、僕とマリレは歩く。


服には土。

髪には葉っぱ。

靴には謎の小枝。


ついさっきまで、時空の裂け目に由来する諸々を相手に戦った2人とは、とても思えない。


「ねぇ、テリィたん」

「なんだ?」

「ダイビングしていこ?」


僕は、足を止める。


「……ホンキか?」

「もちろん」


マリレは、僕の前でくるりと回る。


「せっかく熱海まで来たんだよ?」

「いや。もう僕は帰るよ」

「私、ビキニになるから」

「それ、帰らない理由にはならないし」

「かなり派手なやつ」

「むしろ帰りたくなった」

「赤」

「報告するな」


マリレは、不満そうに唇を尖らせる。


「テリィたん、ビキニに弱いんじゃなかった?」

「今日は、疲れてルンだよ」

「じゃあ、癒してあげる」

「嫌な予感しかしない」

「海に潜るの」

「普通だな」

「私がビキニで」

「そこに戻るのか」

「魚を見るの」

「魚に謝れ」


マリレは、胸を張る。


「綺麗な魚を眺めて、心を癒すのよ」

「それなら、1人で行けば良いだろ」

「1人じゃつまらないわ」

「ミユリさんを呼べば?」

「……テリィたんが良いの」

「なぜ?」

「荷物持ち」

「……」

「あと、日焼け止め塗って」

「自分で塗れ」

「背中」

「そこだけ急に人類になるな」


マリレは、ケラケラ笑う。


「キバァに殺されかけたンでしょ?」

「そうだよ」

「だ・か・ら。癒しが必要なのよ」

「その癒しがビ・キ・ニなのか?」

「違うわ」


マリレは、真顔になる。


「ビキニは作画資料用」

「じゃあ何が癒しなんだ?」

「海」

「なるほど」

「魚」

「うん」

「そして私」

「最後だけ余計だ」


マリレは、満足そうにうなずく。


「ホンキなんだな?」

「もちろん」


そして、僕の肩をポンと叩く。


「さぁ、テリィたん」

「どこへ?」

「ダイビングショップ」

「……」

「ビキニを見に」

「目的が変わってるぞ」

「最初からソレ狙いだけど」


マリレは、胸を張って歩き出す。


僕は、その背中を見ながら思う。

マリレは、この世界線を救った後も通常運転だ。


そして僕は、今日初めてホンキで思う。

キバァよりマリレの方が手強いカモ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


同時刻。


アキバでは、次の物語が始まろうとしている。

神田リバー沿いにある秋葉原メイド協会。


マデラのオフィス。


窓の外では、うららかなアキバの昼下がりが

何事もなかったように流れている。


「それで、これからどうする気?」


腕を組んだYUI店長が入って来る。


「見張るつもりよ」


マデラは、デスクの書類から目を上げない。


「できることなら、YUIさんにもそうして欲しいな」

「わかった。一体、何があるんだろうな。

 俺は何をしたらいい?」

「わからないわ」


マデラが立ち上がる。


「それを突き止めるの」


2人は、オフィスを出て逝く。ドアが閉まる。

柱の陰から、じっと2人を見ている影。


ミユリさん。


しばらく待ってから、

音もなくマデラのオフィスへ入る。


「……さて」


誰もいない部屋。


ミユリさんはデスクの上の書類を

ちょこんと摘まんでめくる。


1枚。2枚。3枚。


「ふーん」


大したことは、描いていない。

次に壁の掲示板へ。


無数のポストイットが貼られている。

人名。場所。日付。意味のわからない単語。


ミユリさんは首を傾げる。

そして、掲示板の端に手をかける。


「……これ、動くわ」


ゆっくり持ち上げる。


カタン。


その裏から、もう1枚、別の掲示板が現れる。

ミユリさんの表情が止まる。


そこには、1枚目の掲示板とは

明らかに違うポストイットが貼られている。


**池袋。**

**乙女ロード。**

**ティル。**

**SATO。**

**人生補完計画。**

**消えたケッテンクラート。**


そして最後に――


**テリィたんは、何を隠しているのか。**


「…………」


ミユリさんは、息を呑む。

1歩後ろへ下がる。


けれど、視線だけは掲示板から離れない。


「……テリィ様」


小さくつぶやく。そして、もう1度。

最後の1行を見る。


「何を隠してるんですか?」


しかし、ミユリさんは、未だ知らない。

その掲示板の裏には**もう一枚あることを。**


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


熱海ヒルズ。プレジデンシャル・スイート。


ベッドサイドテーブルには

手つかずのオードブルとシャンパン。


その隣で、ジェシとエアリ。

ベッドに大の字になっている。


2人とも、息が上がっている。


「……Wow」


ジェシが目を閉じたまま、小さくつぶやく。


「ねぇ、大丈夫?」


エアリが荒い息のまま尋ねる。


「ええ。何とか大丈夫よ」

「ホントに?」

「……たぶん」


エアリも大の字になって、天井を見上げている。

しばらくして、ジェシの顔にようやく笑顔が戻る。


「1つだけ、言いたいコトがあるわ」

「なに?」


ジェシは、天井を見たまま言う。


「私、こんなの初めてだわ」


エアリが振り向く。

そして、ウレしそうに笑う。


「……私もよ」


エアリは、ジェシの首に腕を回す。

2人の唇が重なる。


次の瞬間。

ジェシがエアリを推し倒す。


テーブルの上では、シャンパンだけが

静かに待っている。



おしまい

今回は、海外ドラマによく登場する"ハネムーンのドタバタ"をテーマに、この世界線を滅ぼしかねない元カレの激しい愛に翻弄される新婦、その新婦がスーパーヒロインであることを知らない新郎をコミカルに描いてみました。


海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、すっかりインバウンドの家族旅行先として定着した感のある、中華な言葉の消えた秋葉原に当てはめて展開してみました。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。