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『アプリ』の使用はご利用的に

◆◇◆◇◆


 金銭の概念はとてつもなく有用だ。今回の場合は硬貨文明だが『価値』を可視化できるという点だ。特殊な事例を除き『対価』として払われる


 難易度に応じた対価設定は逆を返せば高ければ高いほどに困難を極めると見ることができる


 当然相当な報酬が支払われるか否かはさておき、それはひとつの指標となる


◆◇◆◇◆『イセスマ』


 窓の外から僅かに差す街明かりと星の光、穏やかな雰囲気の部屋にひとり、男は静かにスマホを見つめていた


 数刻前、数分前に問題を解決するのに使用したスマホを前に胡座をかき、両腕を組んでスマホを見つめていた


 傍には一階で注文し、部屋まで自ら運んだサンドウィッチを共にその『圏外』の文字を眺めていた


「…」


 腕組みをする男が思い出していた───夢の内容、神やも知れない存在に中身を改められていたその瞬間を思い出していた


 気づかないはずもない、今、目の前にあるスマホが何らかの影響を受けている現状を前に呑気に『素晴らしい力』だと思う気持ちにはなれなかった


 生来、男は思い切りの良さを持っていながらに臆病な性格をしていた。それ故に『力』の裏にある『要求』や『対価』について考えを巡らせることとなった


「触る分には問題ないだろうけど」


 今の今まで触れていた事実を前にそう結論づけた男は早速スマホを持ち上げ画面の操作を始めた


 使い勝手は元より取り回しに大きな変化はなかった。問題は『内部』───『アプリ』の方に縛られた。2回の使用、帳簿に書き込む時、メニューを読む時と短くない期間での2回使用はリスクありきの使用の場合大きな徴収を受けることになる


◆◇◆◇◆『イセスマ』


「ん?」


 男はふと画面の右上の表紙に視線を集中させた


『充電量』───本来電池を横倒しにしたマークとは違い『圏外』に気を取られていた男はその反対側に表示されている


『雫』───半円の上部が窄んでいる形のマークが表示されていた


「何だこれ?」


 男が表示を気にしていた最中に時間は『20:00』を指した瞬間、雫の内に溜まっていた黒い部分が目減りし黒から赤色に変化したと同時に画面に『魔力の残量20%以下』の表示が発生した


 男は突然の変化に肩が跳ねた。いつもの表示に慣れた手つきで『了解』の選択肢を押そうとした時、その表示の違和感に気がついた


 しかし、男の判断とは裏腹に『了解』の文字はタップされてしまい、その表示は消えてしまった


「あ、クソ」


 男はそれからスマホをつけっぱなしにした。『残量通知』は20%と10%の計2回発生する特性を利用して再度確認しようと思ったからだ


◆◇◆◇◆『イセスマ』


 ところが待てど暮らせど2回目の通知は発生しなかった。時間は『22:00』を指し、再びの睡魔が男を飲み込んだ


 窓の外の景色にも少しばかりの消灯が見られる中、男の意識もひとつ、またひとつとその緊張の糸をほぐしていった、そしてそのままベッドに横になるとスマホの電源をそのままに眠りについた


◆◇◆◇◆『イセスマ』


 鳥の囀りと窓の外から差す光で男は起こされた


 男は窓に近づき、街は静まり返り薄青に掛かる街の陰がまだ眠り続ける稚児を起こさまいとしているように見える光景を窓の内から眺めていた


 欠伸と背伸びをすると扉に手を掛け通路へと出た


 床板のぐっぐっ扉鳴のを足裏で感じつつ一階へと向かう男はバッタリとローズに出会した


「あ、あ」


「おはようございます」


 寝ぼけ眼の抜けない何とも言えない表情の男がローズに挨拶をした。ローズは言葉ではなく頭を下げることでそれに返事をした


「すみません、まだ朝食は」


「分かりました、少し外を散歩してくるだけですので」


「は、はい」


 どうやら、朝食の時間にはまだ早いようで男はそれならと街の散策へと出掛けることにした


 鞄を片手に歩く後ろ姿は朝の早いサラリーマンよろしくフラフラとした危ない足取りをしていた


「…」


 ローズは惚けた様子でその後ろ姿を眺めつつ業務へと戻って行った

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