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海外でもよくやるよね、しない?

◆◇◆◇◆『イセスマ』


 男がしばらく歩くと薄着の女性や男性がやや増えてきたことに気がついた。そんなこともあり大通りが十字路に合流するタイミングで男が脇道を見やった。そこには『娼館』立ち並ぶ『夜の道』が目に入ってきた


「…」


 男は金が幾ら合っても足りないだろうなと苦笑いを浮かべつつ当初目的としていた宿泊区画へと足を踏み入れた


◆◇◆◇◆『イセスマ』


「さてと」


 所狭しと立ち並ぶ宿屋の数々、男はそのひとつで懐かしさを受けた三日月の金属看板に異世界文字の彫られた宿屋に目をつけた


 無意識に馴染みのある形の方に足を運ぶ男はその三階建ての建物を見上げる近さまでやってくると、その外観を大雑把に見回した


「掃除は行き届いてそうだな」


 両開きの扉の端に埃や砂つぶすらない様子に安心しつつ扉を開けて中へと入った


◆◇◆◇◆『イセスマ』


「いらっしゃい、食事それとも宿?」


 入るや否やそこは食堂だった。円卓が不規則に並びつつも人の歩ける程には広く余裕が取られる造りをしていた


 男を出迎えたのは入って少し進んだ所のカウンターにいたお姉さんだった。赤毛のポニーテールにエプロン姿、溌剌とした発声をする人だ


「宿泊をお願いしたいんですが、一泊いくらになりますか?」


「一泊銅貨1枚、朝晩の食事つけるなら銅貨3枚」


 淡々と説明をする女性を他所に男はやや考えを巡らせていた。それは通貨価値についてのものだった


 銅貨1枚の価値───1日の稼ぎが不明な分、宿泊費用が高いのか安いのか判断出来ず困っていた。ぼったくりにあったとしても別にいいかと考えつつも男は袋から金貨を取り出すと女性に差し出した


「これで食事付き10泊お願いします」


「あいよ、10泊食事付きね」


 女性がカウンターの下から銀貨7枚を取り出し、男へと差し出した


「あ、朝食終わってるけどどうする?」


「済ませてますので大丈夫です。ありがとうございます」


「?分かった」


 男はカウンターに置かれた銀貨を受け取ると袋の中にしまい始めた。女性はその間にカウンターから宿帳を取り出して、今日の日付と宿泊期間を書き終えると男の前に差し出した


「ここにサインをお願いしますね」


「分かりまし…た」


 差し出された宿帳とペンとインクを受け取った時、男は酷く後悔した。彼は喋れるが文字は書けなかったのだった


 男は急いでスマホを取り出して『いつも通り』に検索に頼ろうとしてひとり絶望していた。『圏外』なのだったと


「…」


「部屋の確認をしてきます」


「は、はい」


 男は冷や汗を滝の様にかき、衣服に馴染ませる中、何かないかとスマホの操作をし始めた。すると見慣れないアプリがあることに気がついた


「なんだこれ?」


 男は藁にもすがる思いで『アプリ』───『翻訳』アプリへと人差し指を伸ばした


◆◇◆◇◆『イセスマ』


「お待たせしました◾️◾️さんですね。こちらへどうぞ」


「…はい」


 男は手の震えを握力に変換し、鞄に与えて押し殺しつつ女性の後をついて2階へと上がった。埃や砂の類は見当たらず清潔に保たれている様子に男は安心すると部屋の前まで来た


「これが部屋の鍵です。再発行できますが無くさないようにして、トイレは各階の奥、浴場は地下にあります。食事は一階で準備しますがお部屋まで運ぶこともできるのでお申し付けを」


 淡々と説明をする女性から鍵を受け取った男は女性が居なくなるのを見送り、部屋の扉を開け中へと入った


「はぁ〜疲れた」


 扉を開けて男を出迎えたのは六畳半の部屋で、ベッド、机に椅子とクローゼットが備え付けてあった


 男は酷く疲れており、服装をそのままにベッドに横になると深い眠りにつくのだった


◆◇◆◇◆『イセスマ』


 ガヤガヤと聞こえてくる喧騒を片耳に欠伸を一つ、背伸びを一つした男は窓の外の景色が夜になっていることに少し驚きつつ『スマホ』を確認した


『午後6時』───気候は夏なのに冬の様な日の傾きに男は頭を掻くと再び欠伸をした後、扉を開けて一階へと向かった


 食堂の賑わいを全身に受けつつ階段を降りていく、美味しそうな香りが徐々に増す状況に喧騒に掻き消される腹の虫が鳴いた


「ミラちゃん、エールおかわり」


「ミラちゃん、こっちも」


「マーズちゃん、料理まだ?」


 よく聞こえる人名はおそらく従業員のものだろうと小耳に挟みつつ1階へ到着するとカウンターにいた女性と目が合った


「あ、えっと」


「…」


 オロオロとする女性を前に男はその手に『料理』が乗っていることを確認すると目配せをした


「少々お待ちを」


 オロオロとしていた女性が円卓の方へと行くのを見送りつつ男はカウンター席に着き、メニューの木の板を眺めながら『スマホ』を取り出して『翻訳』をし始めた


「…昼食みたいな内容だな」


「注文は決まった?」


「ミラちゃ〜ん」


「少し待ってな酔っ払い」


 男が注文表を眺めている最中に昼頃に対応してくれた従業員のミラが酔っ払いを嗜めているのに何処か懐かしさを受けつつ男は『サンドウィッチ』を頼んだ


◆◇◆◇◆『イセスマ』


 少々もの足りない量だったため追加の注文を片手に自室へと戻る男は部屋の扉とは反対に見える『夜の都市』に少しばかり目を預けた


 街に灯る光は電気のものではなく、火のものでもないものが確認でき、興味深く眺めていたものの、先にやるべきことがあると扉を開けて中へと入った


 男の持つ『スマホ』その現状を

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