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異世界でも宗教って面倒くさい

◆◇◆◇◆『イセスマ』


「うっわ、ミスった」


 男とも女ともつかない声に小さな後ろ姿、朧げで起きているのか寝ているのか分からない感覚の中、それの一言から何とも不安な雰囲気が聞き取れた


「えぇどうしよ」


 何なんだよ、何がそこまで不味いんだよ


「いや、まだ間に合う、まだ間に合う」


 慌ただしく右往左往する影が僕の方にやってくると僕の持ち物を全部ひっくり返した


「これを流用して、後からアプデすれば多分大丈夫…死にません様に」


 はぁ、変な夢だな。カバンの中身が乱雑に仕舞い込まれるの眺めていると突然視界が暗転した


◆◇◆◇◆『イセスマ』


「大丈夫ですか?」


「え?」


 数秒に感じた暗転から目が覚めた。全身を刺す酷い寒気に先程までの眠気と記憶が一蹴される


「うわ、寒」


 全身を震わせどうにか体温を捻出しようと努めるものの気絶するまでに使った諸々が仇となり衰弱していく一方だった


「酷い状態だ、誰か手伝ってくれ!」


 体に力が入らない僕の腋に誰かが潜り込むと誰かが僕を持ち上げた。抵抗する気力に体力もない僕はそれがどんな人であれ、身を任せる他なかった


◆◇◆◇◆『イセスマ』


「助かりました」


「いえ、私達も」


 馬車の中で冷めた身体と体力を奪っていた一要因のスーツの着替えを貰い、これまた貰った蜂蜜ミルクに口をつけた


 ミルクの優しさと蜂蜜の甘味に生を実感する


「巡礼者の方をお助けできたことを嬉しく思います」


「巡礼者?」


「おや?違いましたか?これ程神力に見慣れない衣服を纏っている方は巡礼者に違いないと思ったのですが」


不思議な話だ。神への感謝も祈祷もそれ程熱心にしたつもりはないのだが神力とやらが僕には宿っている様だが自覚はない


 しかし、ここで否定するのは不自然だろうし、ここは乗っておくのが吉だろうと僕は返事を返した


「この地では巡礼者と呼ばれるのですね」


「これは失礼しました。同郷とばかり」


「いえ、私の学が足りなかったばっかりに不安にさせてしまいました」


 僕は取り敢えずこの人から色々話を聞くことにした


◆◇◆◇◆『イセスマ』


「そうなれば、巡礼ではなく巡教、いやはや一時代の助けをできるとは恐れ多い」


 この男性、ロッツォさんは服屋を営んでいる人だった。物珍しそうにモノグラスで服を眺めていたのは服の材質や技術を眺めていた、そう言うことだろう


 ロッツォさんが言うには新しく宗教ができるのは然程珍しいことではないらしい。ただし新しい宗教と合っても"おいそれと"作れるモノではないらしい


 宗教の始まりである『神道』───この世界には唯と開闢の属性が異なる神が存在する様で唯は二つと存在しない唯一神をさす言葉。一方、開闢は人類種と呼ばれる『人』の身でありながら唯に通ずる悟りや神通を得た者でなければ『害あるもの』として干されるらしい。怖


「して、その神通が分からないと来た」


「はい」


『神力』と『神通』に『宗教』───燃料とエンジンに似ている。ガソリンにもハイオク・レギュラー・軽油などある様に誰でも神力を持っているが性質に違いがあり袂を分かつに至っているのだと


『改宗』と『家庭事情』───血縁に左右されず、目覚めた後、親と同じ宗教に入っても相性が悪く改宗することもあるため一世帯に別々の宗教が住んでいることは珍しくない


「寛容なんですね」


 僕の視線がロッツォさんの表情に翳りが見られたのを捉えた。どうやら宗教にも寛容な宗派とそうでない宗派がいる様だ。何故こうも繋ぐ手を振り払ってしまうのか


「貴方様の育てる教えに慈悲があることを願わくば私の信仰するシーマ神とどうか仲違いなく」


「…」


 ロッツォさんの口上の後、僅かに暖かい空気を感じた。その熱は緩やかに解けていくとやがて馬車の中の温度に溶けて消えた


 そしてふと思い出す。あの適当そうで夏休みの宿題を最終日にまとめてやりそうな雰囲気の小さな影が僕の神様なのだろうか?と


 だとしたら行き当たりばったりでとても差別をする柱なのではないと見れる。暖かい感覚も拒絶の意思はないと思いたい、目の前で熱心に祈りを捧げていたロッツォさんと話をしつつ、ロッツォさんのお店があるリーフテン・ベルクという都市に向けて馬車は動き続けた

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