第3話: 信じる怖さと遠ざかる心
春の終わり、ハルのアパートに冷たい雨が降る。学校から帰ったハルは濡れた制服のままソファに座り、膝を抱える。いじめっ子の笑い声が頭に響き、「死にたい…」と呟く。そんな時、玄関のチャイムが鳴る。*
ドアを開けると、瑞稀が傘を手に「お姉ちゃん、ハル君、びしょ濡れじゃない! 風邪引くよ」とタオルを持って入ってくる。「ハル君、お姉ちゃん、心配したんだから」と頭を拭いてくれる。ハルが「……ありがとう、お姉ちゃん」と呟くと、瑞稀が「ハル君、昨日スープ喜んでくれて嬉しかったよ。また作ってあげるね」と笑う。
ハルの心が揺れ、「お姉ちゃん…優しすぎるよ」と呟く。瑞稀が「ハル君が寂しそうだからだよ。お姉ちゃん、そばにいたいだけ」と言うと、ハルは一瞬目を潤ませる。「もしかしたら、この人には…信じてもいいのかも…」と思うが、すぐに「いや、信じたら裏切られる。両親みたいに…」と心を閉ざす。
翌日、瑞稀が「お姉ちゃん、ハル君と一緒に買い物行こうよ。何か欲しいものある?」と誘う。ハルが「……別にいいよ」と言うが、瑞稀が「ハル君、お姉ちゃん、ハル君の好きなもの知りたいんだ。ね?」と手を引く。ハルは仕方なくついていくが、瑞稀の笑顔に胸が締め付けられる。
スーパーで瑞稀が「ハル君、これ好き?」とスープの材料を見せると、ハルが「……うん」と小さく頷く。瑞稀が「じゃあ、また作るね。お姉ちゃん、ハル君の笑顔見たいから」と言うと、ハルは「…お姉ちゃん、僕なんかのために…」と呟き、心が温かくなる。でも、「信じたら…失うのが怖い」と一歩引く。
帰り道、ハルが「お姉ちゃん、僕、ちょっと疲れたから…一人で帰る」と言うと、瑞稀が「ハル君? お姉ちゃん、心配だよ。一緒に帰ろう?」と手を伸ばす。ハルが「…いいよ。お姉ちゃん、ありがとう」と手を振り払い、アパートに戻る。瑞稀が「ハル君…」と寂しそうに見つめるが、ハルは振り返らない。
部屋でハルが「信じちゃダメだ…裏切られたら終わりだ…」と膝を抱える。でも、瑞稀のスープの味や笑顔が頭に浮かび、「でも、お姉ちゃんは…違うのかも…」と揺れる。
数日後、学校でいじめられ、帰宅したハルがドアを開けると、瑞稀が「お姉ちゃん、ハル君、ケガしてる!? 誰にやられたの?」と駆け寄る。ハルが「……なんでもないよ。お姉ちゃん、ほっといて」と冷たく言うが、瑞稀が「ハル君、お姉ちゃん、放っておけないよ。傷、手当てするから」と腕を掴む。
ハルが「お姉ちゃん、やめて! 僕、信じられないんだよ! お姉ちゃんが優しくても…裏切られたら…僕、もう耐えられない!」と叫び、瑞稀の手を振り払う。瑞稀が「ハル君…お姉ちゃん、そんなつもりじゃ…」と目を潤ませると、ハルが「ごめん…お姉ちゃん、距離置きたい」と呟き、部屋に閉じこもる。
瑞稀がドアの外で「ハル君、お姉ちゃん、そばにいたいだけなのに…」と呟き、立ち去る。ハルは「信じたい…でも、怖い…」と涙を流す。
その夜、ハルの部屋に甘い香りが漂う。窓の外で赤い目が光り、「ハル…お前の心の隙…」と呟く声が聞こえる。ハルが「また…夢?」と呟くが、心に重い影が落ちる。