もしも婚約者の王子がまともだったら
もしも、婚約破棄でおなじみのあの流れで悪女にたぶらかされる王子様がまともだったら。
というか、悪女より一枚も二枚も上手でそうそうたぶらかされるようなたちじゃなかったら。
そんな感じのお話です。きっとn番煎じ。
色々ゆるふわで書いておりますので、寛大な心でお読みください。
——婚約の件について会談の席を設けたい。
ついては王城まで来られたし。
グロリア・エメル・ウィルフレッド公爵令嬢の下にそんな書状が届けられたのは、貴族学院の卒業パーティーを間近に控えたある日のことだった。
送り主の名はエルドレッド・キース・ルヴィルカリア。ルヴィルカリア王国の王位継承者にして、グロリアの婚約者その人だ。
王族からの登城の命にグロリアはただちに馬車を走らせて会談の席へ赴き、通された城の一室には第二王子エルドレッドと侍従達のほかにもう一人の姿があった。
メロディ・ミナ・クレイン男爵令嬢。多くの男子生徒からの支持を集める学園の華にして、近頃エルドレッドの寵愛を得ている彼女はエルドレッドと同じ長椅子に掛け、彼の右隣でたおやかな笑みを浮かべていた。
「突然呼びつけてすまないね」
エルドレッドは柔らかく微笑んで「座るといい」と向かいの椅子をグロリアに勧める。
グロリアが一礼をして椅子に腰を下ろすと、対面のメロディが露骨に表情を曇らせる。きゅっと唇を噛んでうつむき、すがるようにエルドレッドに肩を寄せるメロディの姿に、グロリアが微かに眉根を寄せる。
それが余計気に障ったのか、メロディはふるふると震えながらエルドレッドの腕に両腕を絡めて目を伏せた。
「エルドレッド様。やっぱり怖いです」
「大丈夫だよメロディ。私がついているからね」
震えるメロディの肩を抱き、甘く優しい声と共に背を撫でるエルドレッド。さながら仲の良い恋人同士が睦み合っているようなその姿に、グロリアは苛立ちさえ感じ始めていた。
「殿下。今宵は私達の婚約の件についてお話があると伺っておりましたが」
不興を隠しきれないグロリアの声音に、メロディがわざとらしく肩を跳ねさせる。そんなメロディを「よしよし」となだめて、エルドレッドはグロリアに向き直る。
「ああ。私が王位を継いだあかつきには君を正妃とし、メロディを側妃とする旨を以前に伝えていたな。悪いがその約定を少し変えさせて欲しいんだ」
「どういうことです?」
エルドレッドの言葉に、グロリアが怪訝な顔をした瞬間。
エルドレッドの腕に囲われたメロディの口元が、ほんの一瞬だけではあったが愉悦を示す歪な形に吊り上げられたのをグロリアは見逃さなかった。
(なんてはしたない。本性が漏れているわよ)
このメロディという令嬢は学園の男子生徒からの評判はすこぶるいいが、女子生徒からの好感度は底辺を割っているような人物であった。
見目と家柄の良い令息にはとかく愛嬌を振り撒き、婚約者がいようとお構いなし。ぱっとしない令息には申し訳程度の挨拶だけで、令嬢にはそれすらもしない。
そんな振る舞いが常だから令嬢方には生意気な小娘と毛嫌いされていて、特に婚約者に色目を使われている令嬢などは怒り心頭。いつかあの女に一泡吹かせてやる、と敵意を燃やす乙女は少なくない。
にも関わらず、メロディが学園の華とちやほやされているのはなぜか。それは残る男子生徒達がこぞってメロディに首ったけになっているからだ。
やわらかくカールした栗色の髪に垂れ目がちで丸い緑の瞳、華奢な体躯に似合わず豊かな胸元、そして鈴を転がすような甘い声という持って生まれた愛くるしい要素は男子達の庇護欲をいっそ過剰なまでに掻き立てるらしく、女子からの敵視をメロディは追い風として利用していた。
メロディに熱を上げていない男子は彼女に素っ気なく対応されている子爵位以下か垢抜けない容姿の令息くらいで、大半はメロディの味方だ。学園内でも地位の高い男子を後ろ盾にした彼女は今や王太子エルドレッドの寵愛も得て、完全に波に乗っている。
無論、そんなメロディの躍進を彼女をよく思わない令嬢方が指をくわえて見ているはずもない。メロディの騎士役をしている男子やメロディ自身への諫言という真っ当なやり口で彼女の増長を止めようとする動きもあれば、水面下で彼女を攻撃する動きもあった。
たとえば茶会や夜会から締め出したり、聞こえよがしに陰口を叩いたり、わざとぶつかって転ばせて制服を汚させたり。令嬢方は日頃の恨みつらみをここぞとばかりにメロディにぶつけたが、それがかえってメロディの武器となった。
メロディは自身に侍る男子達をたくみに操り、自分に嫌がらせを働いた者達が反対に攻撃される流れを作り出した。
メロディに骨抜きにされた令息はいずれも伯爵家以上の高位貴族ばかりであり、彼らが家名を持ち出して睨みをきかせれば逆らえる生徒などはほとんどいない。加えてスカートを裂かれただの教科書を汚損されただのとありもしない罪状をさらに追加して責め立てられれば、令嬢達は分が悪いと退かざるを得なかった。
それだけでは飽き足らず、メロディは自分に対する嫌がらせの数々の首謀者がグロリアであると周囲に吹き込んだ。
いわく、エルドレッドとメロディが親しくしていることにグロリアが嫉妬しているだの、人目のつかない所に呼び出され強い口調で「警告」をされただの、事あるごとにきつく睨みつけられて怖いだの……事実無根の流言の数々はメロディ派の男子達を大いに沸き立たせ、今やグロリアは学園の華を汚した悪女として非難の的にされている。
おおかたメロディはこの醜聞を理由にグロリアを正妃の座から引きずり下ろし、自分がその後釜に座る気でいるのだろう。いよいよそれが叶うと思ってほくそ笑んだのがさっきの歪な笑みに違いない。
淑女の風上にも置けない、と内心憤慨するグロリアをよそに、エルドレッドがメロディの腕をほどいて立ち上がる。
潤んだ目で見上げるメロディを一瞥し、エルドレッドは真正面からグロリアを見据えて口を開いた。
「グロリア・エメル・ウィルフレッド。君を正妃に迎えたいという気持ちに変わりはない。ただこちらのメロディ・ミナ・クレイン嬢を側妃にするという話は取りやめとしよう」
「えっ」
凛とした宣言に、エルドレッドの脇から間の抜けた声が上がる。声の主は当然長椅子に取り残されたメロディだった。
「あ、あのー、エルドレッド様? どういう事でしょうか? グロリア様と婚約破棄をなさるのでは……?」
「そんな事言ったかな? 私はただ、私達によってよりよい形になるよう婚約を見直そうと言ったはずだけれど」
「そんなっ!」
メロディが目に涙を溜め、胸を寄せるように肩口で両拳を作って上目遣いでエルドレッドを見る。きっと男性の庇護欲をそそるお決まりのやり口なのだろう。
「エルドレッド様は、わたしが嫌いになってしまわれたんですか? グロリア様にいじめられているってお話しした時、あんなに優しく慰めてくれたのに……」
「いやいや、愛情はすでに冷めていたよ。君がグロリアを貶めた時点でね」
「えっ……?」
呆然とするメロディをよそに、エルドレッドは優雅な足取りで室内を闊歩する。その隙に部屋の隅に控えていた侍女がすっとメロディの掛ける長椅子の両脇に移動したのを、グロリアは見逃さなかった。
「君の報告ではグロリアが主導となって君に嫌がらせをしていた、との事だったね。ただ、グロリアは君への嫌がらせが過熱したタイミングで「王の側妃となる者をいたずらに害するのは王家への反意と見なされかねない行為だ」と、令嬢方に向けて警告を発していたはずだ。この行動は君の証言と少し矛盾するんじゃないかな?」
「でも……! その後も嫌がらせは続いていました! 現に私はスカートを裂かれたり、教科書を汚されたりして……」
「いや、令嬢方からの嫌がらせは綺麗さっぱりなくなっていた。そのあたりの被害は君の自作自演だろう? 現に、人目につかない場所で君が自分のスカートを切っている姿を影が見ている」
「えっ」
エルドレッドの言葉に、メロディの顔がたちまち青ざめる。二の句も告げず凍りついたままのメロディの顔を見てにっこりと微笑むと、エルドレッドは悠然と大理石を踏みしめる。
さながら獲物の頭上を旋回する鳶のように、身を低くして牙を剥く瞬間を待つ獅子のように——エルドレッドはわざと足音を響かせながら室内を歩き回る。
「自分の教科書を汚したり、令嬢とすれ違った時にわざと姿勢を崩して転んだりする姿も報告されているよ。……ああ、でも君が人気のない場所でグロリアに罵倒される姿は目撃しなかったらしい。振る舞いを慎めと、もっともな進言をされる場面は見たようだけれど」
「う、嘘です! だってわたしは確かに……」
「王室直属の影が嘘をつくものか。君を側妃に取り立てる意向を示してから、ずっと君の側には複数名の影がついている。グロリアにも同様だ。彼女が君への嫌がらせを指示するような場面は報告に上がっていない」
「わ……わたしを監視していたんですか⁉︎」
「将来妃となる女性に護衛をつけるのは当然だろう? 見えない所で何かあっては遅いからね」
「そんな……な、何かの間違いです! きっとグロリア様が、わたしを陥れようと……!」
メロディはさめざめと涙を流したかと思うと、両手で顔を覆ってうつむく。
得意の嘘泣きで同情を誘って全てをうやむやにするか、あるいは時間稼ぎをしてその間に言い訳を考える算段なのだろうが、すでに彼女の手口を見抜いているエルドレッドがそれを許すはずもない。
「残念だけれどね、メロディ。王室の影は訓練を施した選りすぐりの従者だ。王以外に忠誠を誓う事はないし、権勢に媚びへつらって報告を曲げる事もない。たとえ相手が将来の妃であるグロリアであっても、王太子の私であってもね」
父上から君につける影を借りるのは苦労したよ——と冗談めかして言いながら、エルドレッドが肩をすくめる。
薄く笑みをたたえた口元とは裏腹に、その瞳は喉元に突きつけられた白刃を思わせる鋭い輝きを放っていた。
「そういうわけだ。これまで君の素行を見定めていたが、将来の正妃を貶めようとする行いは見過ごせない。君を側妃に迎える約束は白紙に戻そう。その旨はすでに君の父君にも伝えてあるから、領地に戻ってゆっくりと話すといい」
「ま、待ってください、エルドレッド様……!」
嘘泣きをやめたメロディは席を立ってエルドレッドに詰め寄ろうとしたが、両脇に控えていた侍女がすかさずメロディの前に立ち塞がる。
侍女達はなりふり構わずに押しのけて通ろうとするメロディの両腕を掴むと、手際良く押さえ込んでがっちりとホールドした。
「馬車に乗せてやれ。一応淑女なのだから、丁重に扱うんだぞ」
エルドレッドの指示を受けて、侍女は暴れるメロディをずるずると部屋の外まで引きずっていく。
「エルドレッド様」という末期の悲鳴にも似た叫び声を遮るように扉が閉められると、室内は一転してしんと静かになった。
「さて。茶番劇に付き合わせて悪かったね、グロリア」
「……お戯れも大概になさいませ、殿下」
満面の笑顔で振り向いてみせるエルドレッドに、グロリアははあと溜息を吐いた。
この場が会談とは名ばかりのメロディの断罪劇の舞台である事は、グロリアも知っていた。事情を知らずに呑気に皮算用としゃれ込んでいたのは当のメロディだけだ。
少し痛い目を見せて反省させよう——という悪趣味な提案に、グロリアは最初反対した。しかし事態を知らせたメロディの父、クレイン男爵からの「そういう事ならきつく仕置きをしてやってください」という申し出もあって、渋々了承せざるを得なかったのだ。
「だいたい、あそこまで熱のこもった演技をせずともよいでしょうに」
「すまないね。最初は嫌だったのだけど、おだてるといっそ気持ちのいいくらい泳いでくれるものだからつい」
「……意地の悪いお方ですわね、本当に」
いたずらっ子の顔をしたエルドレッドに、グロリアは呆れ果てて何も言う気になれなかった。
ただでさえ一部の男子からちやほやされていたメロディが、学園の華とうぬぼれて増長し始めたのはエルドレッドが彼女を構うようになってからだ。伸びに伸びた鼻っ柱を折られたメロディの心境はいかばかりのものか——すっかりしおれていればまだ救いはあるが、反対にグロリア達への怒りを燃やしていようものなら領地でクレイン男爵からそれはそれはこってりと絞られるに違いない。
「あの子も側妃で満足すればよかったのにね。運が良ければ王太子の生母になれたかもしれないのに、人を追い落としてまで正妃になりたいものかな」
「そういう子だとわかって側妃に迎えようとしたのは殿下でしょうに。わざとつけあがらせるような真似をするだなんてお人が悪いですわ」
「王室に迎え入れてから何かあったんじゃ遅いんだ、実際に地位を得てどういう振る舞いをするのか試すくらいはいいだろう? まあ、その結果があれなんだけど」
彼女も自分の立場くらいわかっていると思ったのに、とエルドレッドは苦々しい表情で頭を振る。
そもそも、エルドレッドがメロディを側妃に迎え入れる意向を示したのは彼女の色香にたぶらかされたから——なんて事はなく、単なる政治上の都合であった。
メロディの父、クレイン男爵は祖父の代に爵位を賜った新興貴族であるが領地経営に関してはとかく腕が立つ名領主であった。
雨季の水害に悩まされていた領地で大規模な治水工事を執り行い、見事毎年の水害の規模を抑えてみせたほかにも、農地改革を推し進めて収穫量を大幅に増やし、さらには独自に商会を立ち上げて自領の特産品を使った質の良い商品をどんどん売り進めている。まさしくクレイン領からすれば稀代の名君なのだ。
そんな目覚ましい功績を上げているクレイン男爵だからこそ、王家としてはぜひ手厚く扱ってその利益を最大限に引き出したいという気持ちがあった。
故に最大限の恩賞として娘を王太子の側妃に取り立てる約定を交わし、王家に血を連ねる名誉を与えたわけだが——どうもその娘であるメロディは側妃になれたのは自分の魅力のせいだと驕り高ぶってばかりで政治的意図が全く読めていなかったらしく、自分の好き勝手な振る舞いで父への恩賞をふいにしてしまったというのが今回の顛末であった。
「多少捻くれているだけなら王宮で根性を叩き直せるだろうと思っていたのだけど、あれではねえ……クレイン男爵も娘の育て方だけは苦手らしい」
「ひとり娘で甘やかされて育ったのでしょうね。あそこまではいきませんが似たようなご令嬢はいくらか存じておりますわ」
「男兄弟はみんなまともなのにねえ。これを機に心を入れ替えてくれる事を祈ろう」
「そうですわね。心を入れ替えてくださらなければ私が逆恨みされるかもしれませんもの」
「グロリア、もしかして怒ってる?」
「さあ。どうでしょうね」
エルドレッドの問いに、グロリアはつんとそっぽを向いた。最初からこの断罪劇に乗り気でなかったのに加えて、本意ではないとはいえ婚約者とメロディが睦み合う様を目の前で見せつけられたのだから当然と言えば当然である。
「あの子に優しくしていたのは全部演技だよ。僕の本心はグロリアだってわかってるはずだろう?」
「さあ、どうでしょう。殿下は嘘がお上手でいらっしゃいますから、私の前で見せるお顔も偽物かもしれませんわ」
「グロリア……ごめんって。機嫌を直してよ」
メロディを詰めていた時の鋭さはどこへやら、すっかり子供っぽい顔になってしょげるエルドレッドに、グロリアは内心おかしさをこらえて扇で口元を隠す。
そんな二人の微笑ましい様子を、側に控える侍従達は温かい目で見守っていた。
その後、無事貴族学院を卒業したエルドレッドは数年を経て王位を継承し、グロリア・エメル・ウィルフレッド公爵令嬢はグロリア・エメル・ルヴィルカリアとなって、夫との間に三人の子を設けた。
一方。クレイン領に連れ戻されたメロディは歪んだ根性を叩き直すべく徹底的にしごかれたが、一度ひねくれた性格はなかなか直らず、グロリア妃を貶めたという悪行もそう簡単には忘れてもらえず。
どこにも嫁の貰い手がないので、今はクレイン領で兄達の厳しい監視のもと商会の下働きをしているのだとか。
めでたし、めでたし。
◆グロリア・エメル・ウィルフレッド
公爵令嬢。被害者兼共犯者。
父は王国の法務大臣で、実家は代々法務大臣を輩出してきた名門。
メロディの断罪劇の後、卒業パーティーでエルドレッドがメロディとの婚約破棄とグロリアにかけられた冤罪のことをきちんとお話ししてくれたので悪評はだいたい晴れた。それでもぶちぶち言う奴はエルドレッドが「正妃を貶める気か」と黙らせたそうな。
いたずら小僧気質のエルドレッドに手を焼きながらも、内心はちょっと可愛いかもなどと憎からず思っている。
王妃になった後はグレアム、ローレンス、エヴァンの三人の王子を授かり、おしどり夫婦としてエルドレッドと仲良く国を治めている。
◆エルドレッド・キース・ルヴィルカリア
ルヴィルカリア王国第二王子。主犯。
第一王子は側妃の子で、エルドレッドは正妃の子なのでエルドレッドが王太子となっている。
とにかく頭がよく回り、人を手玉に取って遊ぶのが大好きな天性のいたずら小僧。王より軍略家が向いてるんじゃね?としばしば言われる程度には知略に長けている。
父の申し出もあってメロディを側妃として迎え入れることにしたが、あんまり性格がよろしくないようなので王宮入り前のテストとしてハニトラを仕掛けてみたら面白いくらい引っかかって大爆笑した。
ベタ惚れしているグロリアが唯一の弱点で、ハニトラ中も本気にされて嫌われないようにこっそりラブレターを送り続けていた。グロリアからの返事は全部自室で大事に保管している。
即位後は「賢鷲王」の異名を取る賢王として、グロリアに支えられながら存分に辣腕を振るっている。
◆メロディ・ミナ・クレイン男爵令嬢
加害者にしてはめられた人。
クレイン男爵家唯一の女児として幼少期から蝶よ花よと育てられたため、性格が歪む。
いくら裕福でも男爵家なんてカーッペッ、夢はでっかく公爵夫人だ!と意気込んで学園内で婿候補狩りをしていたところで側妃の申し入れを受け、調子に乗りまくる。
欲をかいて正妃になろうとしたのでエルドレッドに見放され、結果側妃は取りやめに。それに伴ってクレイン男爵家の叙爵の話もパーになった。
幸いにもグロリアへの慰謝料請求だけでお家取り潰しなどにはならなかったが、当然親兄弟にはこってり叱られた。
卒業後は根性の叩き直しも兼ねて実家の商会で下働きをさせられている。見目だけはいいので同じ商会の男(平民)と結婚はできたが、こんなはずじゃなかったのにと思いながら毎日忙しなく働いて過ごしている。