銀河は、ルームの仲間で最年少だ。 一番近い岸田次郎が2年で7歳。 この岸田と銀河は同じセクション E で 今後助け合って生きていくことになる。
「ウ~ウ~ウ~!」「ウ~ウ~ウ~!」
「警報だ!急げ、こっちに来い!」
2人はカフェテリアの緊急避難シェルターへ走った。
この地球軍隊教育センターには
無数の緊急避難シェルターが色々な所にあって
万一の場合には、シェルターごと
空中に脱出飛行することができる。
シェルター自体が戦闘機になっているのだ。
天井が崩れて「ガガーン!」という爆音とともに
銀河の目の前で爆発が起こった。
「伏せろ、伏せろ!目を隠せ、つぶれるぞ!」
木村副長が必死に怒鳴る。
「おい、大丈夫か?」
「はい」
「よし、今だ、走れ!」
2人はシェルターに間一髪飛び込んだ。
「今のは何ですか?」
「火星人の急襲だ」
「何のために攻撃してくるのですか?」
「よくわからないが、火星以外の惑星を略奪するのが
彼らのねらいと考えている」
木村一郎副室長のガイドが終わり
銀河は105号室に戻って来た。
後の訓練生9名もデナー前になると
全員部屋に帰還してくる。
105号室はC, D, E の3セクションに分離しており
C は山川平太室長と木村一郎副室長の幹部2名で
D は4名、銀河の E は5名となっている。
各セクションには専用のバス、トイレが設置され
冷蔵庫や電子レンジ付簡易キッチンもある。
もちろんTVもPCも各セクションにある。
この教育機関での全ての購買は
購買書に記入さえすれば
何でも無料で手に入れることができる。
銀河達訓練生には給料などの報酬はない。
更に、105号室専用の
緊急戦闘機15名乗船可能が設置されており
いつでもルームから離陸発進できる。
これは各ルームにも全て常備されている戦闘機だ。
全部で111機配備されている。
携帯やスマホなどはない。
全員モバイル・ウォッチが与えられ
それで交信できるようになっている。
鴻池銀河1年生は、初めて105号室の
10名全員にデナー前にルームで会う。
銀河は、ルームの仲間で最年少だ。
一番近い岸田次郎が2年で7歳。
この岸田と銀河は同じセクション E で
今後助け合って生きていくことになる。
「今日105に来た新人の鴻池銀河の歓迎会をする。
副長、ルーム内にデナーの準備をしてくれ」と
山川室長が命令する。
木村副長は、部下を5人連れて食料調達に出かける。
そして、他の者達は歓迎パーテーの会場作りをする。
「銀河君、我々は君の仲間だ、同志だ。
我々は一心同体、親兄弟よりも絆が深い同志だ。
君が困っているとき、僕らは惜しみなく助ける。
君が悲しいとき、一緒になって泣いてやる。乾杯~!」
山川室長が歓迎の言葉を述べ
コーラを上に向って高々と掲げた。
「おい、木村副長、例の歌を頼む」
「はい。それでは手拍子をお願いします」
「貴様と俺とは同期の桜~同じ兵学校の庭に咲く~♪」
1000年以上も前の太平洋戦争時の軍歌だ。
華々しく散る兵隊の姿を桜花に喩えた軍歌を
彼らは愛して歌っているのだ。
「しかし、俺達の先祖は勇敢だったなあ。
写真で見たけど、神風特攻隊なんか最高だよ」と
6年生、11歳の加藤美星が言う。
「今は地球全体が同志だから戦争はないけど
宇宙戦争があるから神風特攻隊も復活するかもな」と
同じ6年生の山下も同調して言う。
「おい、鴻池銀河、何か挨拶をしろ」
山川室長が命令する。
「はい。僕は何も知らない人間です」
「おい、僕と言うな。私と言え」
「はい。私は何も知らない人間です。
どうかいろいろとご指導をお願いします」
「銀河、お前のライフは?」
「はい、ライフ55です」
「ほう~、結構長いな。俺なんか、ライフ35だから
後、22年しかないよ。
俺は俺なりに精一杯生きてやるさ」 (4)