火星の空軍が迎撃する間がない。 それほどタイミングの良い急襲だった。
銀河は、アーミィーに勤めて3年後
米国アーミィーとの合同訓練のため
ニューヨークに行き、姉の百合に再会している。
そして10年後、銀河は25歳、残る寿命30年。
順調に出世し、地球軍隊の空軍大尉に昇進していた。
何度も繰り返される火星人との戦争に終わりがなく
地球と金星の合同軍隊に焦りが見えてきた。
そんな時、金星の王子から連絡があり
火星に総攻撃をかけるという。
どうも火星軍隊の不意打ちの爆撃で
数百名の金星人が死亡したのがきっかけらしい。
火星人は、理由なしに攻撃をしているわけではない。
侵略というれっきとした理由がある。
金星と地球を植民地化しようと企んでいるのだ。
火星は地球や金星と遜色ない軍備力を持っている。
ただ、金星が持つような特殊医療技術は持たない。
いよいよ火星への総攻撃の日がきた。
鴻池銀河大尉を総隊長とする地球特殊攻撃隊500機と
金星の空軍300機が一斉に火星へ向かう。
地球軍隊は100の核弾道ミサイルも装備し
火星軍隊の壊滅を狙う。
火星の上空に飛来する。鴻池隊長が命令を下す。
「軍の基地を重点的に総攻撃せよ!」
「キィーン!」「ダダダ~、バギューン!」
火星の空軍が迎撃する間がない。
それほどタイミングの良い急襲だった。
火星の上空は真っ黒に染まり、火星全体が真っ赤に燃えた。
時折、地上迎撃ミサイルが飛んでくる。
「隊長~、後ろにミサイルが~!」
「何、まずい!」と思った瞬間、左翼に「バァギューン!」
「やばい、落ちるぞ!」
銀河は、思い切って操縦桿を引くが硬くて引けない。
狂ったとんぼのように落ちていく。
「だめだ、脱出だあ~!」
銀河ともう一人の隊員は緊急脱出ボタンを押した。
鴻池銀河大尉と原田少尉の2人は
敵地にパラシュートで落下し捕虜となる。
「胸のバッチからしてこいつはどうも隊長のようです」
「公開処刑まで2人とも独房に隔離せよ」
火星は階級に厳しく
一般社会も上下の身分がはっきりしている。
そして、貧富の差が激しい。
一部の政府と軍関係者だけが裕福の星だ。
銀河と原田に与えられる食事は飲み物だけ。
それも味のない赤い水だけだ。
「明日地球人を公開処刑せよ!」
火星警務隊長が命令を下す。
2人は目隠しもされず
公園のような広場にキリストの様にはりつけにされる。
もすごく寒い。息が白く見える。
死刑執行狙撃隊10名が、2人の前に整然と並ぶ。
周囲には、見物目的の火星人が数千名取り囲んでいる。
銀河、絶体絶命の危機だ。 (14)