空中からは何度も見ていた地球だが 10年ぶりに教育機関以外での地球の土を踏む。
遂に鴻池銀河が10年間の訓練を経て
地球軍隊の訓練機関を卒業する時がきた。
10年前の5歳の時に乗せられた銀色のカプセルに
再び乗り訓練センターを後にする。
空中からは何度も見ていた地球だが
10年ぶりに教育機関以外での地球の土を踏む。
銀河は、成績最優秀卒業生の超エリート。
卒業と同時に地球軍隊エアー・フォース少尉だ。
銀河には、東京のアース・アーミィー本部に
勤務する前に2週間の卒業休みが与えられた。
「やっと皆に会えるぞ」
そう思った銀河はさっそく
祖父・鴻池星三郎の所へ向った。
星三郎はちょうど牧場で馬に乗っていた。
「お爺ちゃん!お爺ちゃん~!」
銀河は、大きな声で呼ぶ。
「誰だ?」と言いながら星三郎は振り向くが
きょとんとしている。
「お爺ちゃん、私です。銀河です」
「何、銀河?・・・孫の銀河か!」
星三郎は慌てて馬から降りる。
そして、銀河を抱きしめ
「おお、立派になって帰って来たなあ。
顔をよく見せとくれ」と言う。
「私、アース・アーミィーの空軍少尉です」
「少尉? お前が少尉か!」
星三郎はうっすら涙を浮かべ
じっと凛々しい銀河の軍服姿に見とれていた。
その日の夜の
鴻池ワールド・ファーマーズ・カンパニーは
銀河の卒業&就職歓迎会で賑わった。
助教授から大学教授になっていた父親
金星の神器のお陰で末期の胃がんを克服し
看護婦長として元気に働いている母親
そして、外科医師の兄が集まった。
ただ、姉の百合はニューヨークでケーキ屋をしており
再会するのは後になる。
「銀河少尉、火星や金星はどうなの?」と
兄の流星が興味を抱いて訊く。
「兄さんも知ってる通り、金星は軍事平和同盟の星です。
そして、スーパー医療技術を持っています。
地球が学ぶべきものが多いと思います。
一方、火星は野蛮な星で危険性に溢れており
近い将来、地球と金星の連合軍が火星を
攻撃することになるでしょう。
火星は太陽系から消滅するものと思われます」
「そうか、僕も金星に行ってみたいなあ。
そして、スーパー医療技術をこの目で見てみたい」と
流星が銀河に願いを込めて言う。
「兄さん、私が実現してあげましょう。
もうしばらく待っていてください」
すると、傍で聞いていた星三郎が
「わしも金星に行ってみたいなあ」と
笑って言う。(12)