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大坂の陣で豊臣軍と戦う宮本武蔵  作者: カイザーソゼ
7話 真田丸の戦い
75/145

7-5

 幕府軍は三藩の連合部隊だった。

 出雲松江藩の堀尾忠晴隊。常陸古渡藩の丹羽長重隊。上野館林藩の榊原康勝隊。計千二百。指揮官の安藤正次隊三百。


 安藤、堀尾、丹羽、榊原は本陣に集まって話し合った。

 榊原は二十代。怒り狂っていた。


「返事待ってたら全滅しますよ!?行きましょうよ軍監(指揮官)殿!」


 安藤は五十代。この中では一番の年長者だった。


「命令違反を問われて改易になったらどうする?路頭に迷う家来の気持ちを考えろ。全員に地獄を味あわせる覚悟が出来たら行っていい」


 丹羽は四十代。関ヶ原では西軍に属したが、秀忠に信頼されて大名に復帰した。


「丹羽家全員で腹を切って将軍家に詫びます。今すぐ行きましょう」


 榊原は何度も頷いた。

 安藤は渋々了解した。


「俺は見なかった事にする。今から優雅に昼のおやつを取るから、その間に全員殺してこい。

 しかし上杉にはどう話を付ける?勝手に陣地に入ったら打ってくるぞ」


 丹羽は堀尾を見た。

 堀尾は十五才。当時日本一の美少年と呼ばれていた。全国の大名から求愛されたが、大恋愛の末に加賀藩の前田利常と結ばれた。


 堀尾は一人で上杉隊の本陣を訪れた。

 メンバーは勝っても負けても無言だった。堀尾も透明人間扱いされた。

 堀尾は頑張って用件を告げた。


「武家に生まれた者として、味方を助けて敵を殺す名誉を我慢出来ません。これより佐竹隊の救援に向かいます。一緒に出かけませんか?」


 景勝は立ち上がった。堀尾と上杉家臣は緊張した。

 景勝は堀尾の前に立って、彼の美しい顔をじっと見つめた。堀尾は負けずに強い目で見つめ返した。


 景勝は堀尾の肩をポンと叩くと、彼の左横を通って本陣の外に出た。

 家臣は全員立ち上がって景勝の後を追った。困り顔の堀尾一人が残された。


 堀尾、丹羽、榊原三隊は船を担いで鴫野の第一ゲートに入った。安藤隊は秀忠に忠義を示すために後方に残った。

 三隊は階段を下りて川に船を並べた。

 景勝直属の精鋭近衛部隊は土手に立って射撃準備を整えた。


 対岸の木村隊が打ってきた。

 近衛部隊は銃で応戦した。

 三隊は近衛部隊の支援を得て敵前渡河を開始した。堀尾は指揮官ながら前線に立って銃を打った。


 木村も前線で指揮を取っていた。彼は何度も前を見たり、横を見たりした。

 佐竹隊は崩壊寸前だった。しかし新手が側面に迫っている。ここで一気に押し切れるか。


 後藤が走って木村の所にやってきた。

 後藤は対岸を指差して撤退を指示した。


「無理だ!撤退しよう!俺がしんがりを務める!」


「後一押しです!佐竹の首を取って大逆転だ!」


「敵が来たらお終いだ!今は逃げるぞ!」


 木村は悔しそうに叫んだ。


 木村隊、後藤隊は撤退を開始した。佐竹隊に追撃する余力はなかった。

 援軍の三隊は第一ゲート脇に上陸して土手に上がった。


 しんがりの後藤隊は放棄された第二ゲートに籠った。その間に木村隊は逃げた。

 三隊は竹束を構えて前進。第二ゲートの後藤隊と打ち合った。

 対岸の近衛部隊は側面から射撃した。


 木村隊が第三ゲートを通過すると、後藤隊も第二ゲートを放棄して第三ゲートに向かった。三隊と近衛部隊も追撃した。

 木村隊が第四ゲートを通過すると、後藤隊も第三ゲートを放棄して第四ゲートへ。後藤隊は多大な犠牲を払いながらも、何とか木村隊を援護して大阪城内まで退却した。

 後藤本人は被弾して血まみれになった。


 大和川方面の戦いは夕方までに決着した。幕府軍は豊臣正規軍を追い返して一帯を確保した。

 幕府は戦勝を伝える書状を各部隊に配布した。命令無視は不問に付された。


 前田利常の元にも書状が届けられた。

 利常は読み終えると、書状を愛しそうに抱きしめた。


 豊臣軍は戦死者五百以上。捕虜は五十人以上出した。城内の士気を下げるため、幕府軍は捕虜の指を全て切り落とした上で城に返した。


 秀頼は対抗して木村に恩賞の金銀を授けた。

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