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大坂の陣で豊臣軍と戦う宮本武蔵  作者: カイザーソゼ
7話 真田丸の戦い
74/145

7-4

 木村隊、後藤隊は渋江隊を押し込んだ。

 渋江隊は第二ゲート、更に第一ゲートまで後退した。敵兵にはしっかり打撃を与え続けた。

 両隊の勢いは鈍った。逆襲の時が迫ってきた。

 後藤は大阪城に伝令を送った。


 安田隊は大軍の猛攻に苦しみながらも第二ゲートを死守した。景勝は本隊から増援を送り込んだ。

 大野隊の先鋒隊は猛射撃で打ち倒された。しかし大野は新手を次々投入して間断なく攻め立てた。

 鴫野の戦いは膠着した。


 幕府軍は後方の秀忠本隊に前線参加の許可を求める伝令を送った。

 上杉隊にも許可を求める伝令を送った。景勝は勝手に援軍を送ったら激怒する男だった。


 伝令は景勝の本陣を訪れた。

 景勝以下、全員無言で椅子に座っていた。

 伝令は頑張って話しかけた。


「今こそ協力して豊臣軍を討つべきです!

 我ら一千五百、微力ですがいつでも動けますので、何かあれば気軽に援軍要請をお出しください!すぐに駆け付けます!」


 返事はなかった。目も合わせてくれなかった。伝令は透明人間のように扱われた。

 直江が代表して返事をした。


「ありがたい申し出ですがお断りさせてください。上杉が他家を助ける事はあっても、助けられる事はありません」


「しかし……」


「真の上杉武士ならば、こんな子供の石合戦のような戦で負けるはずがありません。死んだら名を騙る偽物だったという事」


 伝令は引き下がるしかなかった。


 大阪城から小早(武装ボート)十隻がやってきた。

 後藤隊の最後尾にいた後藤と側近百人は斜面を駆け下りて小早に飛び乗った。

 小早船団は大和川を東進した。


 対岸の鴫野の第二ゲートは遂に陥落した。安田隊は第一ゲートまで後退した。

 大野隊は逃げる安田隊を追撃した。

 小早に乗った後藤別動隊は雄たけびを上げた。対岸の大野隊は両手を振って応えた。


 今福の第一ゲートでは敵味方が激しく打ち合っていた。


 小早船団は第一ゲート横の岸に乗り付けた。別働隊は武器を持って飛び降りた。

 渋江隊は別働隊に銃撃を加えた。しかし別働隊は物ともせずに階段を駆け上がって渋江隊の側面に突撃した。

 正面の木村隊、後藤本隊も突撃した。


 二方向から第一ゲートに敵が雪崩れ込んできた。

 渋江は馬を打たれて落馬。その際に頭を強く打って気絶した。木村隊は渋江に殺到して首を取った。

 渋江隊は第一ゲートを捨てて逃げ出した。

 木村隊、後藤隊は逃げる渋江隊を追った。渋江隊は散々蹴散らされて第〇ゲート(前日に構築しておいた出撃拠点)まで後退した。


 佐竹義宣は渋江隊を収容して第〇ゲートで敵を迎え撃った。

 血みどろの銃撃戦が繰り広げられた。佐竹本隊は数倍の敵を相手に何とか膠着状態に持ち込んだ。


 佐竹は自ら槍を持って最前線に出ようとしたが、周りが泣いて止めた。

 佐竹は恥を忍んで上杉隊と幕府軍に救援を要請した。

 景勝はもう少し待ってくれと断った。

 幕府軍は秀忠の許可がまだだと断った。一応、いつでも行けるように準備だけは整えておいた。


 大野隊は上杉隊を第一ゲートまで押し込んだ。

 第一ゲートを守る水原隊は安田隊を収容した後、大野隊を迎撃した。


 景勝はありったけの銃兵と弾薬をかき集めて水原隊に送り込んだ。水原隊はマシンガンのような連射で敵をなぎ倒した。

 銃が熱くなると水をかけて冷やした。

 連射すると銃身内部に燃えカスがこびり付く。兵士は「とがり玉」と呼ばれる特殊弾を適宜装てんして、発砲しつつ内部の燃えカスを削ぎ落した。


 大野隊は正面から槍突撃を繰り返しては打ち倒された。

 撤退時は味方の死体や負傷者を残らず引き取った。勇敢な兵士ばかりだった。しかし正面突撃と撤退を繰り返す内、土手に残る死体が増えていった。


 数度に渡る波状攻撃で土手の上は死体でいっぱいになった。

 勇敢な兵士が死に絶えると、慎重な兵士が竹束を構えて前進してきた。

 上杉隊は竹束も貫通する大口径銃(通常の火縄銃より火薬を多く使う)を途切れなく打ち込んだ。兵士は竹束ごと射殺された。


 勇敢な兵士と慎重な兵士が死に、臆病な兵士だけが残った。敵は百メートル先から当たらない射撃を繰り返した。

 水原隊はひたすら銃弾を打ち込んで敵の気勢を削いだ。臆病な兵士は竹束の後ろに隠れた。


 安田は水原隊の後ろに決死隊五百人を集めた。兵士は動きやすいように顔面を守る面頬を外した(付けたまま走り回ると呼吸困難になる)。


 敵の竹束の間を通って、秀頼側近の渡辺糺が率いる精鋭白兵部隊が突撃してきた。

 刀や槍、薙刀の達人が揃っていた。渡辺自身も槍の名手だった。部隊の旗は豊臣秀吉が以前使用していたものだった。


 水原隊は渡辺隊を銃撃した。有名な剣豪や槍使い、薙刀使いがあっけなく打ち倒された。

 渡辺隊は怯まず正面突撃を続けた。水原隊は猛射撃を叩き込んだ。


 渡辺隊は半壊した。生き残りは後方の竹束の所まで撤退を開始した。

 安田隊は第一ゲートから突撃した。

 渡辺隊は武器も旗を捨てて逃げ出した。

 安田隊は逃げる渡辺隊を蹴散らして後方の大野治長本隊に突撃した。水原隊も続いた。


 大野本隊は崩れた。

 前の兵士は後ろの部隊に逃げ込もうとした。後ろの部隊は逃げ出した。

 前の兵士が逃げ出すと、後ろの部隊もパニックになって戦う前から逃げ出す。これを裏崩れという。

 裏崩れが起こった。

 本隊の兵士は狭い地域で押し合った。圧死や将棋倒しが発生した。土手から転がり落ちて溺死する者も大勢出た。

 安田、水原隊は逃げる本隊を追撃した。

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