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大坂の陣で豊臣軍と戦う宮本武蔵  作者: カイザーソゼ
5話 片桐且元退去事件
48/145

5-2

 夜、大野治長は弟の大野治房と織田頼長を自宅の茶室に招いた。


 頼長は織田有楽斎の長男で、秀頼側近グループのリーダー格である。城内の反徳川派をリードしていた。


 三人は狭い密室で水タバコを吸った。煙が充満した。

 大野は頼長に言った。


「片桐は大阪を徳川に売った。お前に言いたくはないんだが、お前の親父殿は……」


「いいですよ、言ってくださいよ」


「ずる賢い。自分の手は汚さずに他人を煽る。いざとなればすぐ逃げる。

 我ら兄弟が頼りにしているのはお前だ。自分の信念のために体を張れる。最後まで逃げない。上方一の勇者だ。

 正直な所、俺はこれからどうしたらいいか分からない。お前ならこの局面、どう切り抜ける?」


 頼長は呟いた。


「殺すしかねえな」


「うん。殺すかあ……」


「お二方がやらないなら俺がやりますよ。俺は日本一の勇者だ!気合じゃ誰にも負けねえ!」


「頼もしい!左門は三国志の張飛のようだ。

 しかし本当の問題は殺した後だぞ。駿府がどう出るか」


 治房は答えた。


「いつも通り何も出来ません。『もうしないでくださいね?』ってまた頼んでくるだけです。徳川に戦争する根性があったらもう百回ぐらいしてます。むしろこちらから挙兵すべきです」


「俺も九割方何も起きないと思っている。しかしここで運悪く一割を引きたくない。

 徳川が攻めてきた場合に備えるべきだ。

 左門は側近衆をまとめろ。俺と治房は上様と親父殿の説得だ。全体の意思を統一した上で、全国の豊臣恩顧の諸大名に挙兵の檄文を飛ばす」


 二人は承知した。

 頼長は尋ねた。


「戦争になったら誰が指揮を取るんですか?」


「ああ、そういう問題もあるんだな。さすが左門。鋭い」


 大野は考えた。

 一人の男が頭に浮かんだ。彼にだけは頼みたくなかったが、この際文句は言っていられなかった。


「前内府(織田信雄)を推す。左門はあの方を口説き落としてくれ。お前なら話も通じるだろう」


 頼長は内心不満だった。彼の望みは豊臣軍の総大将だった。

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