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会議後、有楽斎は自宅の茶室に大野を招いた。
有楽斎は遺恨が残らないように融和を図った。
「今回は賛成に回ったが、お前が憎い訳ではないし、豊臣家を裏切った訳でもない。お家の将来を考え抜いた上でこれが最善だと判断した。俺の気持ちを分かって欲しい」
「あなたはいつも正しい」
「ここで戦にする訳にはいかなかった」
「その予測が間違っていたのでは?大御所は攻めてきませんよ」
大野は片桐を非難した。
「御袋様は心が弱い。神の御指示と言われれば何でも信じてしまう。軍配者(占い師)を買収して『大御所と戦え』と指示させる者が今後現れたらどうします?そのような手を周りに思い付かせた片桐は罪深いと思いませんか?
あいつは豊臣家を愚弄している」
「まあ片桐の天下は長くないよ。上様は今年で十七だ」
「それを分かっていながら俺と敵対した」
「お前がそう考えているならもう何も言わない。ただお前が片桐を追い出すには俺の力が必要だよな?ならまだお互い手を組んでいた方がいい。
様子を見て『俺が』息子を戻す。そこから反撃開始だ」
大野は頷いた。
有楽斎は秘密を話した。
「ここだけの話にしてくれ。
最近御袋様から聞かされたんだが、上様にはもう子供がいるそうだ。しかも二人も。ばれる前に御袋様が然るべき所に預けたらしい」
「めでたい事じゃないですか。堂々となさればよい!」
大野は笑った。
裏で隠し子を作って、それを母親に何とかしてもらう。有楽斎はそのだらしなさを恐ろしく思った。
この後、有楽斎グループも急進左派に歩み寄り、三党で野党統一会派を結成する。やがて統一会派は急進左派に乗っ取られて、巨大な反片桐、反徳川の大野党が誕生する。