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大坂の陣で豊臣軍と戦う宮本武蔵  作者: カイザーソゼ
11話 天王寺・岡山の戦い
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11-11

 秀頼、浅井、城に残った秀頼側近グループは天守閣一階に移動した。

 秀頼は畳と火薬箱を見て決意が鈍った。浅井が「さあ」と促しても一歩も動かず、無言でその場に立っていた。


 大野が遅れてやってきた。彼は嘘を言って切腹を止めようとした。


「お待ちください!先ほど入った一報によれば、真田の活躍で戦局は一気に逆転したとの事!」


 一同は歓声を上げた。

 前線を見てきた浅井は信じなかった。


「なぁーにが逆転しただ!表御殿も焼けてるのにさ!死ぬのを嫌ってグズグズしてたら上様の名に傷が付きますよ!生き恥を晒さず堂々と切腹なされませ!」


 しかし大野は嘘を付き続けた。

 毛利が大将首を三つも取った。真田が家康本陣に突撃して家康が切腹した。大野治房も秀忠の本陣に突撃して重傷を負わせた……

 親衛隊長の一人、速水守久も同調した。

 味方は盛り返した。すぐに吉報が届く。まだまだ死ぬ訳には行かない……


 秀頼は頷いて天守閣を出た。

 大野は浅井に畳と火薬を片付けるように言い残して秀頼を追った。この男がいると話が進まない。


 奥御殿にも火が燃え移った。本丸全体に黒煙が立ち込めた。


 秀頼と大野一行は本丸北西にある月見櫓に入った。

 淀と女性側近グループはこちらに避難していた。彼女達は悲嘆に暮れて泣いていた。

 秀頼一行は櫓の窓から下を見た。


 幕府兵が歩き回っているのが見えた。逆転したなんて大嘘だった。

 男達も泣き出した。


 側近の一人、渡辺糺はその場に座って着物を脱いだ。

 秀頼は振り返らずに外だけを見ていた。


 後ろから渡辺の絶叫が聞こえた。これは腹の空気を抜くためだ。続いて脇差を体に刺す音、更に介錯人が刀で首を切り落とす音が聞こえた。刎ねられた首はごろごろ音を立てて転がった。

 女性達は悲鳴を上げた。


 秀頼一行は二階に上がった。

 全員意気消沈していた。誰もが死にたくない気持ちでいっぱいだった。

 秀頼は降伏を受け入れた。


「こうなっては仕方ない。大和転封に応じよう……」


 開戦前、幕府は七年間の期限付き大和転封を提案していた。秀頼は七年間大阪に住めない事が我慢出来ずに断っていた。

 秀頼は京極忠高隊に降伏の使者を送った。京極隊には淀の妹、常高院がいた。


 浅井は月見櫓一階に入った。

 渡辺の母で淀の側近、正栄尼が浅井に駆け寄って介錯を頼んできた。

 殺してくれ。息子は立派に自害した。早く自分も息子の所に行きたい……

 介錯希望の女性が一人、また一人と浅井の元に集まってきた。


 血だらけの浅井は二階に上がった。

 誰も死んでいなかった。浅井は苛立った。

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