表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大坂の陣で豊臣軍と戦う宮本武蔵  作者: カイザーソゼ
11話 天王寺・岡山の戦い
129/145

11-1

 一六一五年五月五日、幕府軍十六万は京都を出撃した。

 六日、豊臣軍三万は迎撃のため大阪城を出撃。八尾、道明寺で戦ったが敗北した。


 六日夜、敗北した真田幸村隊は大阪城南方の防御陣地に帰還した。


 大阪城の四キロ南に聖徳太子が建立した四天王寺があった。

 四天王寺の四百メートル西に茶臼山古墳があった。標高三十メートル。南に池があって、これが天然の水掘の役目を果たしていた。

 四天王寺の一、七キロ東に御勝山古墳があった。標高十五メートル。周囲は水掘に囲まれていた。元の名前は岡山だったが、冬の陣でこの地に本陣を敷いた秀忠が御勝山に改めさせた。


 豊臣軍は茶臼山~天王寺~岡山に至る全長約二キロのラインにかけて、長篠の戦いのような馬防柵を設置した。


 幸村隊の指揮官十数人は部隊を天王寺に残して大阪城に向かった。

 通りは無人だった。住民は家の中で息を潜めていた。


 かつて大阪の城下町は惣構えと呼ばれる空堀+土塁で守られていた。講和条約で惣構えは破壊されたが、豊臣家が条約を破って修復しつつあった。


 空堀は腰が隠れる程度まで掘られていた。土塁は人の背丈ほどの高さまで盛られていた。土塁の上に二重の土塀が張られていた。

 土塀は乾くとほうじ茶アイスのような渋い色になるが、塗りたては茶色が濃く、かりんとう饅頭のような色をしていた。

 一部の土塀は小舞竹(格子状の竹の骨組み。藁を混ぜた土を塗って土塀にする)のままだった。土塀自体がない場所もあった。


 指揮官グループは惣構えの門を潜って大阪市内に入った。


 人口は二十万。日本二位の大都市である。五万の難民が流入したが、それ以上の数の避難民が流出した。

 まだ人がいる家は明かりが灯っていた。避難済みの空き家は暗かった。略奪を受けて壊された家もあったし、放火で全焼した家もあった。

 壊れた街はまだらに光っていた。


 街の奥に大阪城がそびえ立っていた。こちらも講和条約で堀、壁、櫓が破壊されたが、修復工事で元の姿を取り戻しつつあった。

 堀は人の背丈ほどの深さまで掘り返されていた。壁はある程度復活していた。櫓の代わりにジャングルジム状の井楼が要所に設置されていた。


 指揮官グループは大阪城の門を潜って城内に入った。


 一週間前に開戦した時、城には八万の兵力がいた。これが数度の戦闘で五万に落ちた。死傷者より逃亡者が多かった。

 士気は低かった。規律も低下していた。

 兵舎の明かりは灯っていた。兵士は夜まで酒を飲んで歌ったり、バクチを打って盛り上がっていた。女性禁制だが女の笑い声もした。


 城の中心部に本丸があった。

 本丸の南側に政務を取る表御殿があった。現代で言えば首相官邸である。

 本丸の北側に奥御殿があった。いわゆる大奥である。

 本丸の北東に天守閣があった。北西にミニ天守閣の月見櫓があった。

 本丸の北端に蔵がいくつか建ち並んでいた。


 指揮官グループは表御殿の大広間に入った。既に他の部隊の諸将も集まっていた。

 メンバーはここで最後の作戦会議を開いた。


 最初の作戦は「少数でも守りやすい場所を抑えて迎撃する。ある程度打撃を与えた後に逆襲する」というものだった。

 しかし作戦は失敗した。

 道明寺に向かった幸村隊は守りやすい場所を先に取られた挙句、大軍と正面から打ち合って敗走した。

 八尾に向かった木村重成、長宗我部盛親隊は進軍中の幕府軍に奇襲攻撃を仕掛けたが、見破られて壊滅した。


 会議では天王寺で敵を迎撃する作戦が採択された。不完全な惣構えよりは天王寺の防御陣地の方が固かった。

 その後は部隊の割り振りに入った。

 まだ動ける部隊は前線に出された。もう動けない部隊、戦闘能力が怪しい数合わせの部隊は後方に下げられた。

 真田幸村隊は相当疲弊していたが、チームのエースなのでスタメン起用された。参戦していないフレッシュな毛利勝永隊に期待がかかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ