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大坂の陣で豊臣軍と戦う宮本武蔵  作者: カイザーソゼ
10話 道明寺の戦い
127/145

10-13

 午後三時、大阪城から大野治房の使者が藤井寺に到着した。

 毛利と渡辺は本陣で使者を出迎えた。渡辺は手を三角布で吊っていた。

 使者は治房の指示を伝えた。


「今朝方、若江において木村隊、長宗我部隊が井伊、藤堂隊と戦い敗戦。木村様はお討ち死に。長宗我部様の行方も知れません。

 直ちに天王寺まで撤退してください」


 渡辺は泣いた。

 毛利は「若江って何だ?」と確認した。


「お二人は両将軍の本陣に奇襲を仕掛けようと密かに出撃しましたが、若江の地で敵に見つかり、逆に攻撃を受けて……」


 渡辺は泣きじゃくった。

 毛利は言いたい事は山ほどあったが、そこはグッとこらえて使者に告げた。


「分かった!こちらも後藤と薄田が死んだ。矢玉は少なく、手負いの数は計り知れない。退却を承知したと伝えろ」


 渡辺は退却を拒否した。


「今日ここで死ぬべきです!木村に続きましょう!」


「死ぬのは明日勝ってからにしろ」


 毛利は明石と幸村に伝令を送って本陣に呼び寄せた。


 話を聞いた二人は撤退に同意した。

 しかしどの順番で逃げるかで揉めた。三人とも「しんがりは俺に任せろ」と言い張った。

 最後はクジで決める事になった。

 幸村は六角形の箱を振った。何も書かれていない木の棒が出てきた。

 次に明石が振ったが外れだった。

 最後に毛利が振ると「当たり」の棒が出てきた。


 午後四時、豊臣軍は順次撤退を開始した。

 最初に幸村隊が門前町から撤退した。


 水野隊は泥仕合で疲弊しており、単独での追撃は不可能だった。

 勝成は伊達隊、松平隊に追撃要請を出した。両隊は「余力なし」として断った。


 次に明石隊が古墳群から退却した。

 勝成は本多隊に追撃要請を出した。本多隊も断った。

 勝成は無傷の忠輝隊に追撃要請を出した。忠輝隊は無視した。


 最後に毛利隊は藤井寺周辺の村々に火を放って撤退した。


 松平と本多は伊達隊の本陣を訪れた。二人は政宗に追撃を懇願した。


「今追撃を仕掛ければ全員殺せます。上総之介殿(忠輝)を説得してください」


「まず我ら松平隊が先行します。後に続いてください!」


 政宗がうんざりしている所に勝成がやってきた。

 勝成は「俺もだぞ!」と政宗に言った。

 政宗は断った。


「婿殿には婿殿の勝算がある。私はそれを尊重したい。

 今日の戦いで真田と明石は抜け殻になった。首は取れなかったが、血よりも貴重な弾薬を垂れ流して逃げていった。この大勝利で今日は締めるべきだ」


 勝成は頼んだ。


「俺はその上の大大勝利を狙っている。あの三人の首を取るんだよ。お前のクソ息子さえ動けばこの戦争は今日終わる!」


「そのクソ息子が言う事聞かねえんだよ!」


 忠輝は将軍の弟で、所領は全国三位の七十五万石。普段から強気な言動が目立った。最近では地位にあぐらを欠いた傲慢な言動が増えるようになった。この戦いの直前にも秀忠とトラブルを起こしている。

 忠輝はふてくされて味方の足を引っ張った。


 幕府軍は追撃を断念した。

 豊臣軍は無事に戦場を離脱した。

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