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大坂の陣で豊臣軍と戦う宮本武蔵  作者: カイザーソゼ
10話 道明寺の戦い
122/145

10-8

 藤堂別動隊千は北上した。

 南では既に戦端が開かれていた。霧の中から銃声が絶え間なく聞こえた。


 別動隊は北上を続けて西郡村という集落に到着した。

 十字路の道沿いに茅葺の民家が建ち並んでいた。敵部隊千が交差点を封鎖する形で竹束を並べて待ち構えていた。


 木村隊は三角形の陣形だった。

 西郡村の北に別動隊千が控えていた。西郡村の北西に本隊四千が控えていた。


 別動隊は攻撃を開始した。敵味方は竹束を挟んで打ち合った。


 幕府軍は部隊の統制に苦しんでいた。

 前線は手柄目当てで勝手に攻めて死ぬ。大名の方は命令違反で処分する訳にも行かず、「忠義を尽くしてくれた」として遺族の給料を上げる。ますます抜け駆けが増える。

 自分に多額の保険金をかけた後、敵を使って自殺するような行為が横行した。


 解決策の一つが「指揮官自ら前線に立つ事」だった。上司が見ている所で勝手は出来ない。しかし指揮官を失った部隊は戦闘を継続出来ない。


 別動隊の副指揮官は最前線で銃弾を浴びて戦死した。代わりに後方から指揮官が上がってきた。

 指揮官は最前線で銃を持って戦った。


 兵士は竹束の間から身を乗り出して銃を打ち、また竹束の後ろに隠れて玉を込めた。

 銃撃戦で押し込まれた側は怖がって竹束の後ろから出なくなる。打つ時は狙いを付けずにすぐ打ってすぐ隠れるのでまず当たらない。

 西郡守備隊は竹束の後ろに隠れがちになった。別動隊は一方的に銃撃した。


 指揮官は竹束から出て銃を構えた。

 流れ弾が飛んできて指揮官の額を打ち抜いた。指揮官は倒れた。


 リーダー二人を失った別動隊は退却を開始した。しんがりには銃兵が立った。

 守備隊は竹束から飛び出して槍突撃した。しんがり部隊は連射で打ち倒した。


 長瀬川の藤堂隊先鋒は指揮官クラス四人が奇襲突撃で戦死した。

 部隊は崩れて逃げ出した。


 八尾の藤堂本隊が救援に駆け付けた。

 前方から泥だらけの味方が武器を捨てて逃げてきた。後ろからは血まみれの敵槍兵が追ってきた。

 後ろに逃げる先鋒隊と前に進む本隊が交差した。本隊の一部は怖くなって逃げ出した。

 本隊は突進してくる長宗我部隊に銃撃を開始した。


 西郡守備隊は別動隊との銃撃戦で大きなダメージを負った。木村本隊も無理な行軍で疲労困憊だった。どちらも別動隊を追撃する余力はなかった。

 西郡の北の部隊は動かせなかった。幕府軍の増援が北から来るかもしれない。

 増援は北から現れるとは限らない。東の玉串川方面にも注意する必要があった。


 木村は追撃を諦めて守りを固めた。彼は本隊から別動隊四百を玉串川西岸の土手に派遣した。

 木村本隊はその場で朝食を取った。

 南で長宗我部隊が激しく戦っているのに、北では木村隊がおにぎりを食べるという不思議な光景になった。


 木村は恥ずかしかった。彼は立ったまま誰よりも早くおにぎりを食べ終わった。それから「お前らも早くしろよ」という感じで周囲を見回した。

 部下も急いでおにぎりを食べた。


 朝七時、赤い鎧で統一した井伊隊三千が戦場に到着した。霧は晴れつつある。

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