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大坂の陣で豊臣軍と戦う宮本武蔵  作者: カイザーソゼ
10話 道明寺の戦い
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10-5

 木村隊は明かりを点けずに闇夜を進んだ。長宗我部隊は地元出身の木村隊の後を付いていった。


 木村隊は土地勘はあったが冷静さはなかった。二つ先のカーブを左に曲がるのが正解だったのに、焦って一つ先のカーブを左に曲がってしまった。

 沼地に出てしまった。

 木村は「時間がない!このまま進め!」と指示した。


 木村隊は沼地に入った。腹まで浸かる泥沼だった。引き返した方がよっぽど早く済んだ。


 幸村隊は無理せずたいまつを大量に焚いた。こちらは危なげなく行軍して、午前二時には河内国分付近まで全軍進出した。


 河内国分の北を大和川が東西に流れている。

 河内国分の西の山を小松山という。石川が小松山の西を南北に流れている。

 二つの川は上から見るとTの形に交わっている。


 Tの字の左側、石川西岸の平野部を道明寺という。

 道明寺には日本で二番目に大きな誉田古墳と、それに付随する複数の小古墳がある。古墳群は南北に連なっている。

 この古墳群の西側を藤井寺という。

 先鋒の後藤隊三千は道明寺方面に展開した。幸村隊一万七千は藤井寺方面に展開した。


 後藤隊はたいまつを掲げて石川を渡った。

 正面の霧越しに小松山が見えた。

 南北に長い山だった。誰もいないので真っ暗だった。


 武蔵と偵察兵数名は小松山の山頂にいた。武蔵は背にヤカラ旗を差していた。

 霧越しに敵の姿が見えた。

 たいまつを持った部隊が川を渡り、こちらに近付いてきた。耳を澄ますと水音や馬のいななきも聞こえた。


 武蔵は部下に指示した。


「よし、撤収だ」


 幕府軍三万五千は戦闘準備を整えて河内国分に展開していた。部隊は奇襲を警戒して大量のかがり火を焚いていた。


 水野勝成隊四千は小松山の北東に展開していた。

 小松山の東には鉄砲八千丁とも言われる超高火力の伊達政宗隊一万。その南に本多忠政隊五千。その南に松平忠明隊四千が展開していた。

 伊達隊の東に松平忠輝率いる本隊一万二千が控えていた。


 夜の作戦会議では、小松山に本陣を据えて、石川で敵を迎撃する作戦が話し合われた。しかし勝成は小松山を敵に取らせた上で逆襲する作戦を主張した。最終的に勝成案が通った。


 水野隊の先鋒は堀隊が務めていた。

 堀の本陣に勝成からの伝令がやってきた。


「敵が小松山にやってきました。数は三千。たいまつが目印です。日向守様は『牢人だからと侮るな』との事です」


 堀は半信半疑だった。


「いや、敵の前でたいまつ使う部隊いないでしょう(自分の動きがばれるので)。味方じゃない?」


 やがて小松山に大量のたいまつが灯った。

 堀は「山にいるのは敵の前でたいまつを使うほど慌てた豊臣軍」と判断した。しかし侮りはしない。


 小松山のたいまつはやがて消えた。

 堀は部隊に指示した。


「敵が来た!火縄に火を点けろ!」


 後藤隊は南から回り込まれないように縦に長く頂上に布陣した。

 後藤は頂上から一帯を見下ろした。


 東の麓から頂上に至る山道は何本かあった。麓には大軍が展開していた。

 北の麓から頂上に至る山道は一本だけあった。麓の守備隊は少数だった。


 後藤は伝令を呼び寄せた。


「藤井寺の本隊に連絡。敵は既に河内国分に展開している。我が隊は小松山で敵を防ぐ。直ちに救援部隊を送ってくれ」


 伝令は馬を走らせて西の斜面を下った。

 後藤は部隊に指示を出した。


「まずは北の部隊を一撃離脱で叩く。救援が到着次第、逆落としで東の敵陣に雪崩れ込むぞ」


 東の敵を攻めたら北の敵に側面を突かれる。後藤は自ら精鋭を率いて北の部隊を攻める事にした。

 本隊は頂上で待機。山道の出口に竹束を並べて守りを固めた。


 水野隊に属する松倉重政隊二百が北の麓の入り口を守っていた。

 北の麓から背後の大和川までの距離は二百メートル。松倉隊はこの狭いエリアに前衛、後衛二段に分かれて布陣していた。


 松倉隊の前を奥田忠次隊三十人が横切った。抜け駆けして一番首を取るつもりだった。


 奈良方面に豊臣軍が攻めてきた時、松倉は現地の諸大名に出撃を呼びかけた。他の大名が尻込みする中、奥田はいち早く協力を申し出た。松倉は奥田に借りが出来た。


 松倉隊は目を瞑って見て見ぬ振りをしてくれた。奥田隊は頭を下げて感謝した。

 奥田隊は霧の中に消えていった。


 午前四時、小松山の西の麓から激しい銃声が聞こえた。奥田隊と敵の交戦が始まった。

 松倉隊は銃を構えた。


 銃声が止んだ。奥田隊は壊滅した。

 続いて喚声と地響きが聞えてきた。

 北の山道を駆け下りて敵の槍隊千が突っ込んできた。

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