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大坂の陣で豊臣軍と戦う宮本武蔵  作者: カイザーソゼ
9話 大和郡山城の戦い
113/145

9-14

 松倉重政は奈良南部の大名である。元は筒井家臣だった。

 二十六日、松倉は伊賀一揆の動きを掴んで藤堂高虎に報告した。

 伊賀の反政府勢力は残らず逮捕された。


 二十六日夜、大野治房隊二千が生駒山地の峠を越えて奈良方面に侵入した。主力は奈良出身の牢人衆で、土地勘があった。

 治房は伊賀の反政府勢力が逮捕された事をまだ知らなかった。


 たいまつを持った治房隊は一列に連なって細い峠道を下っていった。固まって歩くと人数は実際より多く見えた。


 奈良側の麓に筒井家の偵察部隊が配備されていた。部隊は治房隊を三万の大軍だと誤認した。

 筒井隊は夜の内に郡山城から逃げ出した。


 早朝、治房隊は無人の郡山城を制圧した。部隊は多数の住民を殺害した後、市街地に火を放った。郡山の街は大半が焼失した。


 治房隊は勢いに乗って北東の奈良東大寺を目指した。

 奈良の町衆は貢物を進呈して攻撃中止を懇願したが、治房は拒否した。


 一報を聞いた水野勝成隊三千が京都から猛烈な勢いで南下してきた。


 松倉は一帯の諸大名に反撃を呼びかけた。奈良の大名は所領が小さく、三万ともされる治房隊を恐れて尻込みした。多くの大名が様子見に回った。

 奥田忠次という幕府旗本がいち早く松倉支持を表明した。

 松倉は奥田と共に北上を開始した。


 治房は敵の接近と伊賀一揆の失敗を知り、撤退を決意した。後退して河内国分に誘き出す計画も放棄した。

 夕方、治房隊は治房率いる本隊と奈良牢人部隊に分かれて退却を開始した。


 治房本隊はすぐに撤退せず南下した。このままでは帰れない。何か手柄が欲しかった。

 郡山の南に今井という門前町があった。「海の堺、陸の今井」と呼ばれるほど栄えていた。

 治房本隊は南下を続けて今井に到着した。ここで街に放火しようとしたが、町衆に雇われた傭兵部隊に撃退された。

 治房本隊は西の生駒を目指して逃走するも途中で松倉隊の追撃を受けた。治房本隊は何とか振り切って撤退に成功した。


 郡山の西に法隆寺があった。豊臣家の元重臣、片桐且元は法隆寺の門前町にある竜田城を治めていた。

 夜、撤退途中の牢人部隊は竜田城に放火した。町民の消火活動で法隆寺は守られたが、城と門前町の一部が焼けてしまった。

 牢人部隊は悠々と峠を越えて撤退した。


 竜田放火は「法隆寺が焼かれた」というフェイクニュースとなって関西中を駆け巡った。豊臣軍は四天王寺を放火で壊滅させた前科があった。事件は「豊臣軍は隅々まで破壊してから火を点けた」、「聖徳太子以来の財貨を略奪した」と尾ひれが付いて広まった。


 大野兄弟の三男、治胤は治房が普段率いている部隊三千を引き継いで二十七日に出撃した。


 大阪城の南に住吉大社があった。大阪有数の大きな神社だった。栄えた門前町と立派な港を持っていた。

 治胤は軍事協力を要請したが、大社側は拒否した。

 治胤隊は社殿と門前町と港を焼いた。


 小出家は岸和田城に籠城して幕府に救援を要請した。


 幕府は様子見している浅野家に出撃を命じた。

 浅野家は強行出撃した。


 二十八日、治胤隊は堺に放火した。

 付近にいた幕府水軍が救援に駆け付けたが、激しい銃撃で上陸出来ず、逆に指揮官が負傷して後退した。

 治胤隊の兵士は火薬も油も好きなだけ投げ込んだ。堺は一軒残らず燃え尽きた。


 堺を焼いた治胤隊は南下して岸和田城を包囲。城下町と港を焼いた。


 沿岸部の主要港湾は全て使用不能になった。

 大阪湾は悪天候の日が連日続いた。徳島の蜂須賀隊は荒海と港破壊で出撃出来なくなった。


 同じ二十八日午前、京都所司代は市内を強制捜査してテログループ十五人を逮捕した。

 メンバーは一か月前から犯行を準備していた。この頃、治房が京都に放火するという噂が流れていた。


 メンバーは自白した。


 首謀者は大野治房と秀頼側近の古田重行。スポンサーは古田家に仕える茶人の木村宗喜。

 彼らはこのような計画を立てていた。

 幕府軍が出撃した後、市内に潜伏する他のテログループと共同して京都全域に放火する。本隊が慌てて戻ろうとした所を豊臣軍主力が背後から攻める。

 しかしスポンサーの木村が金を渋ったせいで毎日の生活にも困るようになった。怪しんだ地域住民は所司代に「近所に不審者がいる」と情報提供した。


 メンバーの自白を元に木村や他のテログループも逮捕された。逮捕者は最終的に三百人に上った。

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