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大坂の陣で豊臣軍と戦う宮本武蔵  作者: カイザーソゼ
9話 大和郡山城の戦い
104/145

9-5

 家康は駿府城大広間に政権閣僚を集めて会議を開いた。

 閣僚は意見を述べた。


 様子見や再交渉といった弱気な意見が多かった。和睦して一か月で再戦はさすがに腰が引けた。

 再戦を望む声もあった。ただ戦うとしても、戦後の豊臣家をどうするかで意見は分かれた。完全に滅ぼすのか。家は残すのか。


 本多正純は再戦を唱えた。


「豊臣家は当事者能力を失いました。最早どんな約束をしても守られる事はありません。

 我々は豊臣家存続のために手を尽くしました。なのにあのクソデブは恩を仇で返しやがった。今こそ謀反人を討ち取るべきです」


 以心崇伝は交渉継続を唱えた。


「御公儀の敵は大野主馬(治房)です。我々と豊臣家は打倒主馬で共闘出来ます。

 交渉している間に突然変異で向こうの正気が戻るかもしれません。殴る前にまず話し合いの場を持つべきかと」


 家康は静観を唱えた。


「治房がどう動いても対応出来るように準備を整える。これが第一。足元を固めた上で治房の粛清を待ちたい。これが第二。

 治長も愚か者ではないよ。家の安全と肉親の情。必ず正しい方を選ぶと信じている」


 徳川秀忠は江戸城大広間に政権閣僚を集めて会議を開いた。

 こちらは再戦論が多かった。


 秀忠は立花宗茂に意見を求めた。


「勝利だけを考えるなら今すぐ兵を挙げて大阪城を落とすべきです。向こうはまだ弱い。

 しかしかつての主家を滅ぼすとなると、これには相当な理由付けが必要になります。動揺が走って豊臣家に付く大名が出る可能性もあります。

 安定を取るなら和戦両様です。

『再三手を尽くしたが向こうが断ったから仕方なく動いた』。開戦前にこの形を全力で作っていく。『主家存続のために手を尽くした』と今胸を張って言えるかというと、それは違いますよね。

 戦争の準備もしつつ交渉も続ける。私はこちらを推します」


 秀忠は本多正信に意見を求めた。


「大御所が秀頼を許したのは一度や二度ではありません。それで向こうは『何をやってもお爺ちゃんは許してくれるんだ』と勘違いしてしまった。こうなった責任の九割九分は腐れ無能デブにありますが、一分はつけ上がらせて判断を狂わせた大御所にある。

 父の間違いを正すのは息子としての責務です。再戦を念頭に入れつつ、しかしながら交渉を継続すべきかと考えます」


 秀忠は決断した。


「この場にいる誰よりも、俺は秀頼の不誠実な態度に怒っている。だから今すぐ軍を動かして殺してやりたいが、それは恥知らずな婿を持った親の私情だ。

 焦らず、機が満ちるのを待とう。正義が徳川にあると万人が確信した後に我々は打って出る」


 十四日、京都の板倉から続報が届いた。


 ―「治房が出陣して京都に放火するという噂が流れています」


 幕府は京都近隣の井伊家、藤堂家、本多家らに京都防衛の動員令を出した。部隊は直ちに上洛して京都防衛に当たった。

 また幕府は九州四国の米の大阪回漕を禁じて尼崎に送るように指示した。北陸の諸物資は京都に輸送させた。


 板倉は取り締まりを強化して京都市内の反社会勢力を連日逮捕した。

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