追放された俺のチンコなら世界を救えるかもしれない~魔王も倒せるってマジで言ってんの?
「ロンド!! あなたのチンコを追放したわ」
「は……?」
寝起きでそんなことを言われれば誰でも困惑するだろう。なんか変な夢でも見ているのだろうか? 目の前の法衣を身にまとった銀髪の美しい少女はむすっとした顔で形の良い唇から再度同じ言葉を発した。
「だから、その……あなたのチ……チンコを追放したわ!!」
「プリム……恥ずかしいなら何度もいうなよ……だいたい聖女様がそんな言葉をいったらイメージが悪くなるだろう」
まるでリンゴのように顔を真っ赤にしているプリムに呆れながら突っ込みを入れる。彼女は俺の幼馴染であり、この国一の回復魔法の使い手『救世の聖女』と呼ばれているのだ。
その美しい容姿とその実力からファンも多い。そんな彼女が朝っぱらから「チンコチンコ」と連呼しているのを万が一でもファンが見たら発狂ものだろう。
「だいたいチンコを追放ってなんだよ。俺を追放って言うならわかるけどさ……」
苦笑しながら起き上がってふと下半身に違和感を感じる。無茶苦茶嫌な予感がして下半身に触れると……
「ない!! 俺のチンコがいない!!」
「だから言ったでしょ……あんたのその……アレは追放したって……」
顔を真っ赤にしたままつぶやくプリムの言葉は本当だったようだ。
自己紹介が遅れたが、俺の名前はロンド。勇者パーティーで盗賊をやっている。まあ、そんなことはどうでもいい。それよりも俺のチンコの方が大切である。
「一体何だっていうんだよ!! この状況は!!」
「いやぁ、大変だねぇ……僕も同じ男だから苦労はわかるよ」
「どうでもいい……あ、パンおかわり」
同情心に満ちた目で俺を見ている金色の髪をした外見だけは好青年が勇者カーマインで、どうでもよさそうにパンをむしゃむしゃと食べている幼児体型でありながら胸だけは成長している少女が大賢者のレインだ。
この二人に加えて聖女のプリムと俺の四人はカーマインを中心として、パーティーを組んでおり、魔王討伐に最も近い『勇者パーティー』と呼ばれているのだ。
そして、この騒ぎの現況を作った聖女プリムは先ほどからずっとむすっーとしている。
「ふん、あんたが悪いのよ!!」
「チンコを追放されるほどの大罪ってなんだよ!! てか、なんで俺生きてんの?」
「これが聖女の力……神々の奇跡によって不可能を可能にする……すごい……賢者である私ですら到達できない領域……あ、パンおかわり」
「いや、そんなにすごいなら、神様の奇跡で魔王もぶったおせばいいじゃん!!」
「それは無理……魔王は神よりも強敵……」
俺のチンコに興味はないが、聖女の力には興味があるレインが解説をしてくれる。いや、俺のチンコに興味を持たれても困るからいいんだが……
「だいたいこんな嫌がらせをするなら、素直に俺を追放すればいいだろ。知っているんだぜ。ほかのパーティーの連中が盗賊にすぎない俺はハイエナのようにお前らのおこぼれをもらっているって陰口をいっているのをな!! お前らだって、俺なんかよりも戦士とかと組んだ方がいいと思っているんだろ!!」
盗賊というのはそもそもサポート系だし、貴族受けも悪い。初心者パーティーならばともかく魔王軍の幹部とも戦えるくらいに強くなったパーティーだったら、俺のようなサポート職よりも戦力が上がる前衛を雇った方がいいは事実だ。
不幸にもこういう追放劇は珍しいものでもない。命がかかっているのだ、いつまでも戦力にならない人間と組んでいる余裕はないだろう。
そう思っていたのだが……
「何を言ってるのよ!! あなたがずっとついてきてくれるっていうから、私は怖いけど勇気をふりしぼって聖女をやっているのよ!! あんたの悪口をいったやつはだれ? ぶっ殺してやるわ!!」
「追放なんかしない……私たちはロンドが偵察とか情報取集をしてくれているから、強くなれたんだって知ってるよ……あと、ロンドがいなくなったら誰も料理できない……死んじゃう……特にプリムのはひどい……」
「そうだ!! 君がサポートをしてくれているから僕らは全力を出せるんだよ!! だから、冗談でもパーティーから抜けるなんて言わないでくれ!! あと、パーティーに男一人はまじでつらいって!!」
「お前ら……俺のことをそんな風に思っていてくれていたのか……」
みんなの言葉に俺は胸が熱くなり、涙があふれそうになる。ああ、そうだよ。俺の戦力では他の三人に劣る。
だから、色々なサポートを頑張っていたんだが、みんなそれをちゃんと評価してくれていたんだ。それがわかっただけですごい嬉しい。
「あれ、じゃあ、なんでプリムは俺のチンコを追放なんかしたんだよ」
「それは……その……あんたが……行ったから……」
「え、なんだって?」
なにやらぶつぶつと言っているプリムに聞き返すと彼女はなぜか顔を真っ赤にして声を上げた。
「あんたが、昨日の夜にエッチなお店に行ったからでしょ!! 仮にも勇者パーティーに一員がそんなところに行ったてばれたら悪い評判が立つじゃないの!! だいたいそういうことなら私に言ってくれれば……」
「「げっ」」
プリムの言葉の後半は聞き取れなかったが、俺とカーマインは顔を見合わせてうめき声をあげる。盗賊のスキルをつかって気配を隠していたというのに二人でエッチな店にいったのにばれていたらしい。
「確かに僕とロンドはエッチな女の子のいるお店に行った。だけど、それには深い事情があるんだよ。この前負けた四天王『サキュバスクイーン』対策のためなんだ、なあ、ロンド」
「そうそう、決してやましい気持ちでいったわけじゃないんだって。あくまでちょっとエッチな女の子に馴れるためにだな……」
そう、俺たちは先日四天王の一人であるサキュバスクイーンの住処にいって逃げ帰ったばかりなのである。しかも、サキュバスクイーンに会う前に手下のサキュバスに魅了されまくったのだ。
仕方なくない? 俺もカーマインも童貞なんだよ!!
それで酒の勢いもあって、二人で夜の店に行ってきたのである。そう、これは修業である!!
「ふーん……それで『巨乳美少女ファンタジー王国』に行ったんだ……わざわざ巨乳にこだわる必要ってあるのかしら?」
プリムがじとーっとした目で俺を睨みつける。なぜか彼女のその手は自分のスレンダーな胸元で何かを確認するように動いている。
「それは……てか、店名までばれてんのかよ!!」
「うふふ、神の奇跡ほどじゃないけど魔法も万能……遠くだって見れるよ。あ、スープおかわり」
「才能の無駄遣いしすぎだろ!! てか、だったらカーマインいいのかよ!! こいつも同罪だろ」
「それは……カーマインはどうでもいいのよ」
「どうでもよくねーだろ!! むしろ盗賊なんかよりも勇者がエッチな店に行っているほうが問題だろうが!!」
「あはは、そうなんだけど、たぶんそういう問題じゃないんだよ」
「ロンドは鈍感……あ、デザートおねがい!!」
顔を真っ赤にしているプリムを見て二人はなぜかやれやれとばかりにため息をついた。なんでみんなは納得してるんだよ。おかしいだろ……
「さて、それよりもそろそろ四天王の一人『サキュバスクイーン』攻略の作戦を考えようか? 僕らは一度負けた……だからこそつぎは勝たなきゃいけないんだ!!」
「いや、俺のチンコの件が何も解決してないんだけどな!!」
「やっぱり遠距離攻撃メインがいいと思う……私の魔法と、カーマインの聖剣をメインにすべき……」
「すこしでもおかしいなっていったら教えて、すぐに癒すわ」
俺の言葉はかなしくスルーされてしまったのだった。
翌日、俺たちは四天王の一人であるサキュバスクイーンが根城にしているという砦に向けて進んでいた。
ここは元々優れた技量を持つ騎士たちが納めていた剣の国の砦である。敵なしと言われていた彼らもサキュバスクイーンの特殊能力の元にあっさりと倒されてしまった。
「レイン!! 威力は弱くてもいい!! 連射できる魔法を!! プリムは僕とロンドに状態異常回復魔法をいつでもかけれるようにしておいてくれ」
「わかった……フィンガーファイアーボム」
カーマインの指示に従って、レインがその手から何発もの火の玉を連射していく。遠距離からの攻撃に妖艶な体つきのサキュバスどもが近寄ることもできずに歯痒そうにしている。
こいつらは特殊能力こそ厄介だが、戦闘力はそこまで高くないからな……とはいえ、このままではジリ貧である。だが、俺たちは心配していない。その時のために勇者がいるのだ。
「邪なるものを滅せよ!! エクスカリバー―!!」
カーマインが剣を振り下ろすとまばゆい光の熱線がサキュバスどもを焼き払う。これが魔王を倒すことのできるといわれている伝説の聖剣エクスカリバーの力である。
逃れたのは三体か……
「絶界!!」
俺がスキルをつかうと同時に世界そのものがスローに感じる。そして、それは比喩ではない。盗賊として鍛え続けた動体視力と、瞬発力を一時的に高めたのだ。
そして、俺は遅延した世界でサキュバスたちの逃亡ルートを先読みして数発のナイフを放ちそのまま駆け出した。
「悪いな!! 美女を傷つけるのは進まないが、これも生存競争だとあきらめてくれ」
「うぐぅ!!」
「また、色目を使って!!」
俺のナイフが刺さったサキュバスたちが苦しみ悶えていく。ナイフの刃に塗った毒によってそのまま天国にいったはずだ。プリムがなんか言っているが気にしない。
死体とかしたサキュバスからナイフを回収しようとした時だった。毒に耐性があったのか、最後の力をふりしぼったのか、ナイフの刺さったサキュバスのうち一匹が体を動かして……その瞳が俺の目とあうと妖しく光る。
「まずい……」
サキュバスの魔眼だ。その効果は絶大で、その目を見た異性はサキュバスに魅入られてしまうのだ。これが騎士たちが壊滅された理由でもある……はずなのだが……
「ロンド、今すぐに治療を……」
「いや、大丈夫だ」
俺は何事もなかったようにサキュバスの胸元にナイフを突き立てる。信じられないという表情のまま今度こそサキュバスは絶命した。
そう本当に何ともなかったのだ。サキュバスの魅了は本能に働きかけるものだ。魔法への耐性とかも無効で、絶対避けられないはずなのに……
「いやいや、すごいな。ロンド!! どうやって耐えたんだい?」
「そうよ。この前なんて、サキュバスに魅了されて私たちにナイフを向けてきたのに!!」
「それは悪かったって……でも、確かになんでだろうな……」
そう、プリムの言うようにサキュバスクイーンを討伐しにいった俺とカーマインは無様にもサキュバスに魅了されて同士討ちをしかけて撤退したのである。
だからこそ童貞の俺とカーマインは女性慣れするためにちょっとエッチなお店に行ったのだが……
「ロンドに魅了が効かない理由……わかったよ……」
「まじか!!」
さすがはパーティーの知識担当のレインである。俺たちが彼女の言葉を待っているとおもむろに、俺の手をつかんで自分の胸に押し付けた。
「「「なっ!!」」」
むにっと身長に比べて主張の激しい胸部の柔らかい感触がする。一体何を……と質問する前にすさまじい力でプリムにレインから引きはがされる。
「レイン、何を考えているのよ!!」
「ロンド……私の胸に触ってどう思った?」
「え……どうって……柔らかいなって……そのおっぱいで冒険者は無理ですよと思ったが……」
プリムに引っ張られた俺は思ったままの事を返すとレインは何かを確信したようにうなづいた。
「そうじゃなくて……エッチな気持ちにならなかったよね?」
「あ……確かに……」
俺は自他ともに認めるおっぱい好きであり童貞である。女性の胸に触れるなんて、大事件だというのに何も感じなかったのだ。本来ならば今すぐ宿屋に引きこもり感触をわすれないように一週間くらいはその手を洗わないでいただろうに……
それにさっきからプリムに抱きかかえられているから、慎ましいとはいえ胸が当たっているというのに一切感情は揺らがない。
「そう、今のロンドは常に賢者モード……だよ。今ならサキュバスにも勝てる」
「うおおおお。すっげえな!! 神の奇跡!!」
そういえば、今日は朝〇ちもしなかったし、トイレにもいかないでも大丈夫だった。サキュバス対策としては最高じゃないか!!
「ナイスだな、プリム!! これならばサキュバスクイーンだってこわくないぞ!! これがお前の作戦だったのか!!」
「どうしよう……ロンドが男としてだめになっちゃった……これじゃ私を異性として見てもらえない……」
「あれぇぇぇーーー?」
俺の予想とは違ってプリムのやつこの世の終わりみたいな顔してぶつぶつ言っているんだけど……
「まあまあ、サキュバスクイーンを倒したらロンドのチンコを戻せばいいじゃないかな?」
「それが、追放したら何処か行っちゃったのよ……」
「待って、俺のチンコ自我持ってんの!?」
「流石神の奇跡……興味深い……」
チンコが追放ってのも頭おかしいと思うけど、勝手にどっかいくってのもやべえな……てか、俺はこのままなのか?
それはつまり……
「一生童貞のままなのかよぉぉぉぉぉぉ!!」
俺の絶叫が平野に響くのだった。
「くそが、お前らがいるせいで俺のチンコはぁぁぁぁぁぁ!!」
「ちょっと待って……私もあなたのチンコを探す奇跡を編み出してみるから落ち着いてよ」
「落ち着けるか、ぼけぇ!!」
あの後八つ当たり気味に俺はナイフを振り回しながら、サキュバスクイーンの住む砦へと突っ込んでいた。サキュバス自体は魅了さえければそこまで強力な魔物ではない。
女性を魅了するインキュバスはそもそも男の俺の敵ではないしな!!
「ふははは、悪いな!! お前らなんぞ俺の敵ではない!! サキュバスクイーンはどこだぁぁぁ!!」
「なんで、泣きながら私たちをおそってくるの!?」
「なによ、あの男魅了が効かない!? インポなの?」
「インポのがましだわ。ぼけぇ!!」
俺の猛攻にサキュバスたちも困惑しながら悲鳴を上げる。
いや、わかってるよ。完全に八つ当たりだっていうことくらいは……だけどさ、まさか無茶苦茶後悔して泣きながら謝ってきたプリムのやつに当たるわけにはいかないし、元々サキュバスクイーンが俺たちを魅了したのが悪いのだ。
「すごいな、ロンド!! あの数のサキュバスに一人で突っ込むなんて……まるで勇者のようじゃないか!!」
「じゃあ……カーマインもチンコを追放してもらう? 二人目も同じ効果があるか興味深い……」
「はっはっは、冗談じゃないね。僕は童貞のまま死にたくないよ!!」
「ぶっ殺すぞ、てめえら!!」
後ろの安全圏でくだらないことをほざいているカーマインとレインを怒鳴りつける。いや、こいつらが心配してついてきてくれてるのはわかるよ。
でも、むかつくじゃん。
「ごめんなさい、ロンド……まさかこんなことになるなんて……」
「いや、そのお前も悪気はなかったんだろ、わかってるよ」
俺がため息をつきながら頭をなでてやると彼女はしゅんとしながらも、嬉しそうにほほ笑む。そうなんだよな。
こいつは昔っからつい、かーっとなってやらかすが、冷静になったあとすごい後悔して反省しているのだ。
「まあ、神の奇跡もあるしなんとかなるだろ?」
「うん……この責任は私が取る……私が一生をかけてでもあなたのチンコを探すわ」
「いや、そこまでしなくても……なんとかなるかもしれないしさ」
さすがにチンコを一生探してもらうのは申し訳なさすぎる。まあ、チンコの家出のようなものだ。そのうち帰って来るだろ……来るかな?
「そうね……そうよね……もしも見つからなかったら神の奇跡で新しいチンコを作れば……」
いや、こいつ何言ってんの? 神の奇跡を気軽に使いすぎじゃない? そんな風に思ったがなんかぶつぶつと言っているプリムが怖かったので、放っておいて先に進む。
しばらく進むとやたらと豪華な扉の部屋にたどり着いた。そして、その中に何か強力な魔力を感じだ。これまでのサキュバスとは比べ物にならないくらいの力だ。
「……」
俺とカーマインは目を合わせてうなづいた。そして、彼が聖剣を構えるのを確認して、俺は扉にかかっ鍵を外し、乱暴に扉を開ける。
そして、そこにいたのは……
「あ……♡ あ……♡」
「「「「……」」」」
エッチな声を上げてベッドの中でもぞもぞとしている美少女サキュバスだった。
むっちゃお楽しみ中だったぁぁぁぁ!!
想定外の光景に俺たちが絶句する中もっともはやく正気に戻ったのはプリムだった。
「ロンドは見ちゃダメ!!」
「あっぶねぇぇぇ!? 目を狙うなぁぁぁぁ!!」
俺は咄嗟に抜き手で目をついてきたプリムの一撃をかわす。こいつ殺意が高すぎない!? 全然正気じゃねえわ。くるってるわ、この聖女!!
そして、部屋にこもる甘い匂いに嫌な予感を感じた俺の耳に入ったのはなにか重いものが落ちる音だった。
「カーマイン!! 正気に戻れ!!」
「ああ、サキュバス様美しい……あとおっぱいでかい……」
俺の視界に映ったのは持っていた聖剣を床に落とし、恍惚とした目でゆっくりとベッドの方に向かっていくカーマインだった。
完全に魅了されてやがる……
そして、それはカーマインだけではなかった。レインも同様にうつろな目をしている。
「本当……サキュバス様美しい……興味深い……」
「く……また、巨乳!! 絶対負けないんだから!!」
さすがはサキュバスクイーン……女性も魅了するらしい。聖女としての意地か、抗っているのはプリムだけだ。
なんとかしなきゃ……
俺がナイフを構えた時だった。いつの間にか嬌声は消え、ベッドの上にいるサキュバスクイーンと目が合った。そう思った時だった。彼女はこちらを見て、にやりと笑ってこういった
「見 つ け たー♡」
あ、これやばいやつだ……
そう思った時にはベッドの上からサキュバスクイーンの姿は消えたかと思うと、いつの間にか俺の目の前に迫ってきた。
「早い!! 身体能力も高いのかよ!! プリムみんなの状態異常を……」
「この匂い……やっぱり……」
サキュバスクイーンは攻撃するでもなく、なぜか俺の匂いを嗅いで嬉しそうに笑った。
「会いたかったよ、ダーリン!!」
「「はぁぁぁぁぁ!??」」
いきなり抱き着いてきたサキュバスクイーンに俺とプリムの驚きの声をあげるのだった。
「えへへ、城にいたサキュバスたちは全員魔王軍を魅了しに行ったよ♡ だから、この砦はもうダーリンのもの♡ もちろん、私もダーリンのものだよ♡」
「あ、ああ……」
気配を探ると、サキュバスクイーンの言う通りあんなにあった魔物の気配はすっかり消えている。マジで全員いなくなったようだ。
彼女はそういうと豊かな胸元をぎゅーっと押し付けてくる。普段ならば歓喜の叫び声をあげるであろう俺だが強制的に賢者モードにっている俺からしたら『やわらかいし、いい匂いがするな』程度でしかない。
そして、なんでこうなったかというと……
「ダーリンのチンコすごかったよ……オークのよりもずっとすごかった♡」
「つまりあれだよな……お前は俺の追放されたチンコを見つけて……一人遊びをして……」
「うん……本当にすごかった。あんなの味わったらもう他のじゃ満足できないよ♡」
恍惚とした表情でさらにぎゅーっと抱きしめてくるサキュバスクイーン。どうやら俺は知らない間に童貞を卒業したらしい。
うっそだろ……マジで死にたい……
「ちょっと、ロンドから離れなさいよ!! ロンドもデレデレ……はしてないわね、でも離れなさい!!」
「いや、こいつの力むちゃくちゃ強いんだって……」
「いやーよ♡ やっと理想の相手をみつけたんだもん。はなさないよーだ♡ あんたも悔しかったらあんたもダーリンに抱き着けばいいじゃない」
「それはその……そんな恥ずかしいことできるわけないでしょ!!」
サキュバスクイーンの言葉に顔を真っ赤にして反論するプリム。なんで俺を睨んでんだよ……そんなことを思っているとサキュバスたちが帰ってくる。
「クイーンよ、四天王『フェンリル』の魅了が終了いたしました!!」
「そう、よくやったわ。あとは魔王城までの厄介な魔物を魅了してきなさい」
「はっ!!」
そういうとサキュバスたちは再びどこかに飛び立っていく。待って、フェンリルって魔王のつぎにやばい魔物のはずなんだが……
「ダーリン、私は役に立つでしょう? だから、魔王を倒して、チンコを取り戻したら私と気持ちいいことをいっぱいしてね♡」
そして、彼女は己の快楽のために魔王軍を裏切ったのである。ちなみに仲間のサキュバスを殺しまくったことに関しては『弱い方がわるいんだよー♡』とのことである。さすが魔物である。価値観が野性的である。
「ああ……魔王が奪っていった俺がチンコを取り戻したらお前とその……すればいいんだな」
「そうそう、私の部下が勝手に魔王様に献上しちゃったの。むかつくよねー♡」
そう……俺のチンコはサキュバスクイーンが散々楽しんで気を失った後に、部下が余計な気をまわして魔王に献上されてしまったらしい。
「だけど、魔王には勝てるのか? 強いんだろう?」
「大丈夫だよー魔王様も女の子だからね。ダーリンのチンコが使えば一発だよ。それに今ごろはあの子もダーリンのチンコに倒されてるかもね」
俺のチンコを過大評価しすぎでは? よくわからないが俺のチンコはとても優秀らしく、俺たちがサキュバスクイーンの元に行ったときに一人で楽しんでいたのは余韻に浸っていたらしい。
こいつら頭おかしいんじゃねーかな?
「はっはっはー、魔王を倒す聖剣はエクスカリバーではなくロンドのチンコだったようだな」
「そんな方法で魔王をたおしたやつはいないよ……興味深い……」
「ううう……ロンドの浮気ものぉ……」
カーマインが他人事だと思って笑い、レインは興味深そうに目を輝かせて、プリムがなぜか俺を睨んでいる。
なにはともあれ俺たちは魔王城にあるであろう追放されたチンコを救い出し、魔王を倒すための旅に出るのだ。
だけど、一言言っていいだろうか?
「追放された俺のチンコなら世界を救えるかもしれない、魔王も倒せるってマジで言ってんの?」
最近まじめな話ばかりだったので気分転換に書いてみました。
面白いなって思ったらブクマや評価をくださるとうれしいです。