私と私
「真優。少し、痩せた」
「うん、少しね。寝る前に食べるの、やめたから」
「ふうん」
私は、もう一人の私、真優が運転する軽自動車の助手席で真優が用意していた缶コーヒーを飲む。真優はきれいな女だ。私もきれいな女だ。職業も一緒。タクシードライバー。昔、二人の堤真優が高校の卒業アルバムに書いた将来の夢。『タクシーの運転手さん』。それが叶った。私たちが嫌いだなぁ。と思う、人間のタイプも同じ。プライドだけが高い奴。よく、小さな頃から、一つ屋根の下、思ったものだ。私は真優を愛し、真優は私を愛してくれる。テレビのバラエティ番組にも出演したこともある。
『ナルシストな美人タクシードライバー』
とかなんとか。私たちは、鳥取の街を北上して、真優が暮らすマンションへと向かう。真優は、今日、オレンジのワンピースに緑のカーディガン。私は、黒いワンピースに今日は袖を通した。不思議な関係といえば不思議な関係だ。子供の頃から、よく笑われ、よく、ナルシストな私たちは馬鹿にされた。煙草に火を点ける、真優。コンビニの駐車場で休憩。今日は3月3日。金曜日。私はあくびを残して、真優と同時に車に乗った。
「今日、これから、雪だって」
「ふうん。寒いもんね。『林檎』は元気してるの」
「うん、ここんとこ、よく食べるようになったよ。デブ猫ちゃん」
「ふうん。それはよかった」
林檎か。林檎は真優が大学の頃に拾ってきた猫。オス。ぽっちゃり、可愛い猫ちゃんだ。私も真優も同時に缶コーヒーを飲み、マンションの駐車場に到着。車から降りた。