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家畜の俺が、世界を反転させるまで  作者: フミタロウ
第一章 転機の日
3/28

買われる少女_1

 震えが止まらない。




 ステージの中央に立たされた少女は今にも泣きだしそうだった。


 でもそれだけは出来ないと、必死にあふれそうになる涙をこらえる。あの少年が自分のことをみていることに気付いたから。どんな顔で自分のことを見ているのだろうか。きっと心配そうにみているのだろうなと、勝手な想像をしてしまう。




 でも……




(そうだったらいいな……)




 少女は気になって、自分の真横に立つ司会者に気付かれないようにそっと少年の方を振り返った。


 しかしそれに気付いた少年は、気まずそうにすぐに顔をそむけてしまった。


 でも、それもほんの一瞬のことですぐに元のように目をあわせてくれる。


 思った通りの少年の表情に、少女は胸が締め付けられるような思いにかられた。


 少年が自分のことを気にかけてくれていたことがたまらなくうれしかった。


 でもそれと同じくらい、申し訳ないと思った。


 これ以上、少年に心配はかけさせたくない。泣くなんてもってのほかだ。




 だから、せめて最後くらいは……。




 少女は今もなお心配そうな表情を浮かべている少年に向けて目いっぱいの笑顔をつくってみせる。


 自分はもう平気だから……もう心配しなくても大丈夫だから……だからここからは自分のことだけを考えて……と。


 泣きそうになるのをこらえてつくった笑みだったが、意外とすんなり出来た。


 一瞬驚いた顔をした少年が、少しだけ可笑しくて、愛おしかった。




(きっと、気付いてないんだろうな……)




 ふと、少年を始めてみたときのことを思い出す。数か月前のことだ。


 そのときから、ずっと目で追っていた少年。


 そして今日、最後の最後でやっと言葉をかわすことが出来た。もっとたくさん話したかった。知りたいことも、知ってほしいことも数え切れないほどあった。




(せめて名前だけでも知りたかったな……)




 最後に少年のことを脳裏に焼き付ける。


 これ以上は、また泣いてしまいそうで、もっと見ていたい気持ちをこらえて少女は前に向き直った。

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