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魔術師、異世界をソロで往く ヴァン国編  作者: 迷子のハッチ
第1章 ヴァン国への道
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第17話 結末と別れ(2)

帝国への反撃の準備でもあります。

 再び港に入り、王家の桟橋に横付します、水流推進機は前後への水流の移動だけでなく左右へもゆっくりですが水流を出すことが出来ます。


 接岸作業は桟橋に並行に入り、行足を止め錨を入れた後、横へゆっくり移動すれば桟橋に付ける事が出来ます。

 船首と船尾の艫綱で船をしっかり固定した後、再びデッキを舷側から桟橋へ出して桟橋へ降りれるようにします。


 船長代行をレタに任せて、私はエドワール皇太子の所へ移動しています。

 このまま宮殿で今回の火球砲の事で話し合いが行われるので、それに出席する為です。


 舷側でエドワール皇太子が船から降りるのを一旦見送り、その後私もレタとナミに見送られて船を降ります。


 アイは私の侍女として同行します。


 桟橋から王宮へ戻る道の途中で、エドワール皇太子が立ち止まって私を待っています。

 お付きの人は先に行っていて、護衛は彼をかばって前に出た男の人だけです。

 何か聞きたい事でもあったのでしょうか。


 私が近づくと、一人残ったエドワール皇太子が話しかけます。

 「今日は色々あって遅れてしまいましたが、お礼を申します。」

 「船に乗せて頂きありがとう、それに火球砲の威力確かに驚異的と見ました。」

 「これと同じものが帝国に在ると考えると、この王都が火の海に沈むことも考えられる事態だと思います。」

 「教えて頂き感謝に絶えません。」

 と頭を下げて礼をします、一国の皇太子が単なる王族の姫にして良い礼ではありません。


 「頭をお上げ下さい、エドワール皇太子様お立ち下さりませ」と彼の手を掴んで、引き揚げます。

 私の手に引かれて立ち上がったエドワール皇太子が、頼みごとをしてきます。


 「実にカスミ姫に申し訳無いのだが、火球砲と船を作る時に使用した合板の技術を是非にも教えて欲しいのだ、対価は払うし、ビチェンパスト王国の小麦をヴァン国に輸出もしようと考えている。」

 「カスミ姫の合板なら大型の船が作れるし、中の海の外へ出ても大丈夫な頑丈な船が出来るだろう。」

 「船が大きくなれば、積み荷を多く積めるから輸送費が安くなるだろう。」

 「帝国より安く小麦を提供できる。」

 とそこまで、一気呵成に話すと息を大きく吸った後、彼の手を掴んでいた私の右手を両手で挟んで私の目を見ながら言う。

 「頼む!」


 「はぁ、仕方が在りませんね、提供いたしましょう」と彼の勢いに押されて引き受けてしまいました。

 ある程度は肩入れする積りでしたけど、合板の秘密までは考えていませんでした。

 でも考えてみれば、貿易で成り立つビチェンパスト王国の皇太子です、船の大型化は国是と言えるのでしょう。


 会議室での話し合いの前に、二人の密談で火球砲と合板の提供が決まってしまいました。

 火球砲は作って渡すだけですが、合板は接着剤の作成法方法の提供になります。


 会議室では、ビチェンパスト王国のエドワール皇太子側近団から提案された、火球砲、合板の作成方法、偵察バード、水流推進魔具の4点を購入又は交易品との交換として提供してもらいたい件が会議の議題になり、私はその内容を聞いて一度船に持ち帰る事になった。


 それからの会議はレタとナミが出席して進められることになった。


 「宰相のビストール・ナンド・パスト侯爵とリリエビッチ子爵、他にも居るがね彼らは帝国に内通していたので処分したよ。」

 と最初の会議が終わった次の日、私にエドワール皇太子が教えてくれた。


 彼の教えてくれた内容はと言うと。

 私の拘束と船の押収を目的にして。

 侯爵の手勢と帝国の商船5隻に乗っている傭兵からなる100人の武装した兵が小舟10艘に分乗し。

 さあこれから襲うため船を漕ぎだそうとしたところで、張り込んでいた王国海兵団の30艘の船に周りを囲まれて取り押さえられたそうです。


 神聖ロマナム帝国からビチェンパスト王国の王都へ派遣されて来ているカーク大使は帝国の船に乗っていた乗組員が襲撃を計画して襲い掛かる寸前だったことについて。

 「我が国所属の商船の乗組員が海賊行為をしようとしたことは遺憾千万ですが、相手は傭兵のカスミとやら傭兵ギルドで雇われたどこかの賞金稼ぎの仕業でしょう。」

 と関りを否定し、宰相の兵が居たことについては。

 「宰相様に帝国の逃亡した賊に付いて手配してほしいとのお願いはしましたが、それ以上は私のあずかり知らぬ事でございます。」

 と言を左右に中々尻尾を掴ませません。


 そこらへんは織り込み積みなのでしょうが、王国の対処が早すぎでしょう。

 昨日の今日です、前々から機会を狙っていたのでしょうか、それとも私を餌におびき出したのでしょうか。


 又もやどや顔を見せるどこかの皇太子へ。

 「ありがとうございます、彼らが襲っていればこちらにも被害が出ていたでしょう、感謝申し上げますわ」と丁寧にお辞儀カーテシーをして挙げた。


 少し赤ら顔になったエドワール皇太子ですが、礼儀には礼儀と丁寧なお辞儀を返して。

 「いいえ、感謝するのはこちらですよ、貴方の御蔭でネズミも顔を出しましたし、帝国に警告することも出来ました。」と今回の出来事はネズミを炙り出して退治するのが目的だったと教えてくれました。


 ねずみは退治できましたが、火球砲やその他の交渉はこれからです。


 レタを中心としたヴァン国と皇太子の側近団からなるビチェンパスト王国との交渉は値段と対価で少し揉めたけれど、最後には双方が納得できる所で納める事が出来ました。


 大まかな対価は小麦の輸出と魔金属と中級魔石や魔物の有用部位の提供、今回は金貨などの現金での取引はしなかった。


 私達は火球砲改を最終的に50門まで材料を提供してもらい乍ら(ながら)作ってはビチェンパスト王国に納めた、彼等はこの砲を納品された側から船に2~4門づつ積んでいった。


 火球砲の操作方法も部隊を新設して、ナミを教官に学んでいった。

 火球砲の納品が終わるころ彼等も20隻の船に分散して乗り込み火球砲の船団での運用をするため、訓練に励んでいる。


 偵察バードはゴーレムでは無いので、生物を模した魔道具を作る事がビチェンパスト王国の錬金術師では出来なくて、これも私達が作る破目になった、火球砲の作成が終わった後、偵察バードの作成に入り、同じように材料の提供を受け乍ら(ながら)作った物から納品していった。


 一番簡単だったのが、合板の作り方で、既に合板を作った事がある工房があるので、接着剤のレシピを渡して、船工房ウーミャ・ドリゴッソで確認してもらえばそれで済んだ。


 最後の水流推進魔具は王国の錬金術師は見ただけでお手上げと諦めたので、話は無くなりました。

 ただし、魔術師の方は魔術旋風と魔術水流は理解できていたので、教える事ができました。


 色々作っていたので、5月末になっていました、6月初日やっと船出できます。

 見送りにエドワール皇太子様御一行と大ぜいの教えた人たちが見送ってくれます。

 彼らに手を振りながらいざ冒険です。


 (いえ、ヴァン国に帰ります by大姉)

 (一度も帰った事無いけどね by妹)


ビチェンパスト国への意図的な軍事支援です。

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