修羅場?
「ドミニク様、お久しぶりです。」
「ブリジット嬢か。久しぶりだな。君も今年デビュタントだったな。おめでとう。」
ブリジットは領地貴族派閥の中堅のオジェ伯爵家の令嬢で、
幼い頃にマリオン侯爵家でのお茶会で何度かドミニクとも遊んだ幼馴染とも言えなくはない間柄である。
「ありがとうございます。婚約されたのですね。
お相手はクレージュ公爵家の方ですか。王宮貴族の。
政略ですわね、間違いなく。王太子殿下もこちらから選ばれましたし。
ドミニク様は本当にそれでよろしいのですか?」
「どういうことかな?貴族なら当然のことと思うが。」
「つまり…本当に愛している方と添い遂げなくても後悔はないか、とお聞きしているんです!」
ブリジットのパートナーとして来ていたと思われる兄のコンスタンが慌てて駆けつけて来たが少々遅かった。
「ん?政略だから愛がないなんてどうして言えるのかな?
私たちはこの3年間、婚約者として交流を重ねてきたのだが。」
「私は!私は幼き日からドミニク様を」
ドミニクは最後まで言わせないように遮って言った。
「ああ済まなかった。私としたことが気が利かなくて。
お嬢さん1曲お相手していただけますか?」
急な想い人からのダンスの申し込みに顔を真っ赤にして頷いたブリジットを確認して
セリーヌを恐縮するコンスタンに預けてからエスコートしてフロアに連れて行った。
ドミニクは踊りながらブリジットを諭した。
「ブリジット嬢、ここは王宮で君は王族批判ともとれるような発言をしてしまった。
このままではオジェ伯爵家に対して良くない噂が立ってしまうのは分かるかな?」
ブリジットは踊りながらも真っ赤だった顔を蒼白にして頷いた。
「ダンスが終わったらクレージュ公爵家の令嬢に謝罪しなさい。
私たちは今日からもう子供ではなくなったんだ。分かるね?」
ブリジットが頷いてすぐに曲が終わったので2人はセリーヌとコンスタンの元に戻った。
「セリーヌ様、私の失言をお許しください。
慣れないお酒に酔ってしまい、皆さまにご迷惑をおかけしました。
大変申し訳ありませんでした。」
「ブリジット様、許します。お兄様も心配なさっておりましたよ。
初めてのお酒は美味しいですね。私も気をつけなくては。」
悄然としたブリジットは兄に連れられて去っていった。
「女の扱いにずいぶん手慣れているのね。」
「まさか!ヒヤヒヤしたよ。目隠しして綱渡りをした気分さ。」
「言い訳まで手慣れて…憎らしいわ。」
(まるでイケメンにイイ女が文句を言っているようじゃないか…あ、イケメンだった!)
「(はたして政略に愛があるのかどうか…それが問題ね)」
「ん?なんか言った?」
「ううん。なんでもないわ。」