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ヒロイン



「リリア、さん?はじめまして。」


正ヒロインの名前を耳にして、ソフィアに緊張が走る。

緊張が走ってるソフィア様も麗しい、と一瞬見惚れて、はっとするリア。


「あ、いえ、【リア】です!私も、よくは分からないのですが、幼少の頃【リリア】から変わった?…らしくて。この学園への登録も【リア・リトルスター】となっております。【リリア】とは同一存在の別人と思っていただければ…。」


説明がド下手糞だった。


「貴女、も、転生者、なの………?」

「それは、…えーと、」


リアは転生者、なのだが、"も"と言われるとソフィアの転生とはちょっと種類が違って…、と言うことも話したいところだが、前世のリアは、言わばソフィア様のプライベートを覗き見していたわけだが…。


リアは電話で話す内容を予めメモしておかないと、「もしもし?」と言われた途端、頭が真っ白になるタイプだった。


うーん、と頭を捻っていると、学園都市の中央に聳える時計塔が目に入った。


「ああ!!ソフィア様、お引き止めしてすみません。もう行かないと。入学式典が始まりますよ!」


「私は庶民で行儀を知らないので、走って行きますが、ソフィア様も遅刻なさらないでくださいね!暗い気持ちで王子様の新入生挨拶を聞くシナリオですよ!」

「お待ちなさい!!」


走り出さんとするリアにソフィアが声を張る。


「貴女、どうして学園都市に来たの?」


ひどく動揺した様子の令嬢を前にして、リアは心底不思議そうに首を傾げる。


「ですから、貴女様のファンなんですってば。」






変な名前の王子の挨拶等を聞き流しながら、リアは心の中で大反省会を開いていた。


・男に興味が無いので警戒の必要は無い

  →言ってない。


・自分は転生者

  →言ってない。


・ソフィア様のファンです

  →言った。


・王子との仲を応援している事

  →言ってない。


ーー駄目じゃん!!!


在籍がCクラスであるため、主要人物との出会いがないまま、リアの最初の1日が終わる。


と言っても、最初の1日のタスクで終わったのはソフィアに会う事と、入学式典と、クラスでのオリエンテーションだけで、これから放課後のイベントを起こすため、薔薇の温室へ向かう。


どうしても会わねばならない人がいるのだ。


その人自身は温室に居るわけでは無いのだが、どこに居るかは概ね分かる。

"その場所"から死角になる位置に当たりをつけて自然に歩き、体が死角に入りきったところで、自身最強の魔法の詠唱を始める。


「反射・撹乱・インビジブル」


何を隠そう、これこそがリアの編み出した最強の光魔法、


透明化である!!!


光の反射やすり抜けを利用し、完全に透明になることができるのだ!!


尚、コソドロから暗殺までオールマイティな犯罪に使える魔法なので、誰にも内緒である。

バレたら危険人物として殺されかねない。


これは、薔薇の温室へ向かう【リリア】を、ソフィアのメイドが監視する漫画のワンシーンを途中まで再現した格好だ。


リアが会わねばとする人物とは彼女、ソフィアの忠実なメイド、こと【マリー】である。


透明なリアは、足音を立てぬよう、はやる気持ちを抑えて慎重に彼女を探す。


"入学初日"という、今日を逃せば、この後起こること何月何日の出来事か、など分からなくなってしまう。

ソフィアと話したくても、クラスが離れているし、寮の部屋番号も不明であるため、自然には会えない。

そして説明できないまま、歴史の矯正力でなんやかんやあって、


ーーソフィア様と敵対とかしちゃうんでしょ!わかってるんだからね!


おそらく次は無い。


【マリー】が身を隠していた木には赤い実が作画されていた。春に赤い実が成る木は珍しい。

という事で。

推理力すげぇ!みたいな感じを出してみたものの、実は簡単にわかってしまうのだ。

温室への経路を見張れる場所に絞って木を探せば………


ーーいっっっいるぅーーー!!!!温室の方みてるぅぅーー!!!!


明らかに質の良い生地で仕立てられた、膝下丈の黒い長袖ワンピースに、白いエプロン。


リアの夢に出てくる彼女の姿にはいつも黒い靄がかかって、頭の方に近づくほど不鮮明だ。

多分、眼中に無かったパターンだろう。

男キャラも、ずっと居た王子の顔すらボンヤリだし。髪が黄色いので、思い出そうとするとヒヨコになるし。


ソフィア様のメイドさんは黒っぽい髪、と思っていたが、実際は青みがかった暗い銀髪だった。とても艶やかだ。

それを編んで、纏めて、リボンで止めている。


後ろから見ると思ったより、リボンが大きくて可愛い。


ーーていうか、あれ、背、高いな?この人。


マリーは、ゲームの設定で、ソフィアの命を受け、リリアを監視するキャラクターだった。


ソフィアの目としてリリアを監視するという設定に整合性を持たせるため、漫画内ではスニーキングを得意とする凄腕の武人という設定が加算された謎チートキャラだった筈。

と、リアは記憶している。


たたかうメイドさん。


存在は珍しく無いが、悪役令嬢転生のジャンル内ではかなり珍しい。


達人の殴る蹴るが飛んでこないであろう距離を取ってそこで止まり、リアはインビジブルを解除する。


「確か、【マリー】さん、でしたよね、お名前。」


ぴくりともしない。

こちらが近づいている事に気付いていたのだろう。正体を探っているのか、探っているのは敵意の有無か。


ーー私は無害ですよ。


「貴女の主人に伝えて欲しい。私は男には興味がないので安心されたし、と。」


メイドさんが振り返る。


「伝えましょう。【リア・リトルスター】さん。」


ーーうそ


とんでもねえ眼鏡美女!!!!!


「しかし、私はソフィア様に仕える身とは言え、近侍として取り立てて頂き、貴女より身分を上に置く者。不遜な態度が許されると思わぬよう。」


マリーは胸の下で両拳をぶつけた。


ーー今のゴン!はナメてたらぶっころすって意味かな?でも可愛い


マリーさん、美女…可愛い。


「…リアさん?聞いてらっしゃいますか?」


こんな可愛い綺麗な人見た事ない。

可愛すぎて涙出そう…


かわ……



チュイン!!!

リアの片目から涙が流れるとともに、縦に閃光が走り、リアの上半身が、ボガァ!と爆発する。

下着のタンクトップの胸部分を残して制服が消し飛んだ。

バキバキに鍛えられた上半身がこんにちは。


2人の間に重い空気が落ちる。


リアはくるりとマリーに背を向け、「では!」と言って女子寮の方へ逃げていった。


この様子をマリーはソフィアにこう語る。



「爆発した後、カラフルに点滅しながら一目散に逃げて行きました。」

「今のところ髪の毛がピンクしか合っていませんわね、あの子。」


ソフィアが紅茶を一口飲み、マリーもそれに倣う。


「その髪も猿のように刈り上げていますがね。」

「あれは何でああしたのかしら?」


2人からは評判の芳しくない、刈り上げマッシュ上パーマだが、本人は似合っていると思っている。




・乙女ゲーのヒロイン

・悪役令嬢転生のヒロイン

・本作のヒロイン←new!


という事で、短いお話になるかと思いますがどうぞ宜しくお願いします。

活動報告経由、ツイッターでキャラデザも書いているのでそちらもよろしくお願いします!

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